表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

161/649

第百六〇話 零世界での現状



 なんとかゼインの剣術習得の道も切り開けたブラット。その間に零世界の次のターゲット『プレデター』の情報も、はるるんからまとまったものを貰うことができ、準備も少しずつだが進めてきていた。


 そして今日はカエル対策の、あれば多少は役に立つかもしれないといったレベルの、すぐに集められるアイテムを持って零世界への扉をくぐった。



(なんかめっちゃ久しぶりな気がするけど、この子たちにとっては昨日の今日なんだよね。意識を切り替えていかないと)



 少しずつ慣れてきたが、時間の感覚のずれがあるブラットはそんなことを考えながらベッドから体を起こした。



「これからのことなんだが、しばらくはグリードがとどめをさすことを優先していってほしい」

「え? 俺を優先するの? タンクなのに?」

「ああ、プレデターに戦いを仕掛ける前に、グリードには進化してもらいたいんだ。

 そのための素材はもう確保できてる。後はグリードの方の調整さえできれば、いつでもいけるような状態になったんだよ」



 シルヴァンの町に行くまでの道中で倒したエリア解放ボスの中に、ちょうどグリードの進化素材として使えそうなモンスターがいたこともあって、彼の二次進化も目前まで見えていた。



「俺もう進化できるの!?」

「ちゃんと体を仕上げてからだけどな。こっちの準備はできてるってだけ。

 あのポーションは簡単に使える物でも使っていい物でもないから、こっからは自力でやってもらわないといけないんだから」



 また経験値ポーションで無理やり体を仕上げることもできないわけではない。しかしそれは使うたびに本来ありえたかもしれない可能性を消していってしまう。

 幼年期を過ぎてからは自力で稼いでいった方が、リスクも少なく強くなれる可能性も高いのだ。



「なあ兄ちゃん! 俺は俺は!?」

「イグニスはまだ全然だ。悪いとは思うけど、たぶんファフよりも後になる可能性が高い」

「えーーーっ!? なんで俺だけ!!」

「こらこらワガママ言わないの。お兄ちゃんだって、好きでそんなこと言うわけないんだから」

「うー……」



 まだまだ子供なのでモドキだの劣等種などという区分もよく理解していないイグニスに分かってもらうのは難しいと思っていたのだが、スフィアにたしなめられて一応は納得してくれる。

 視線だけでお礼を言うと、スフィアはお姉ちゃんだからねと言うかのようにニッコリ笑い返してきた。



「そんなわけで今は準備が調ってるグリードの進化を目下、隊としての目標としたい。

 赤いのはオレがメインで戦うにしても、その補助や邪魔者の排除を安心して任せられるようになってほしいからな。今だと青いのでも少し不安だし」

「ブラット兄ちゃんは、それで大丈夫なの? あの赤いの、すっごく強そうだったよ……?」

「いろいろと手は尽くして、やるからには必勝の形を調えていくから大丈夫だよ。心配してくれてありがとな、ファフ」



 ファフニールは実際に赤のプレデターが戦ったところは見ていないのだが、それでもモンスターという存在であるにもかかわらず、状況だけ観察し帰っていくというクレバーな一面を見せた後ろ姿は不気味で、彼の印象に強く残っていたようだ。

 そんな心配を吹き飛ばすようにブラットは笑い、彼の頭を撫で朝食を済ませていった。



「じゃあ行ってくる。グリード、警鐘がなったらその方向に皆を誘導してくれ。オレも門に向かうから」

「うん、分かってるよ。兄ちゃん」



 ブラットは持ち込んだアイテムを各所、必要になりそうな場所に届け、その使用法など説明するという地味な作業をして回る予定だ。

 さすがに子供たちにはつまらないだろうと各自自由行動を提案してみれば、グリードたちは訓練場でトレーニングをしたいと言うのでブラットだけ別行動をとることになった。


 グリードはイグニスに強さという面では後れを取ってしまっているからか、最近は暇さえあれば筋トレをしたり訓練場で戦闘訓練、家にいてもイメージトレーニングと、とにかく必死に置いて行かれないように頑張っている様子。

 なのであまり無茶をして襲撃のとき動けなくなっては元も子もないので、スフィアにオーバーワークにならないよう監督をこっそり任せている。


 訓練をやりすぎないように気を付けさえすれば、隊のサブリーダーとして任せてもいいほどにはしっかりしているので、それ以外はグリードに任せておけば安心だ。

 イグニスはそもそも覚える気がなさそうだが、鐘の音だけで勢力の情報を素早く正確に把握できるのも大きい。


 ブラットはどこかしらの襲撃が来る前に終わらせてしまおうと、必要な持ってきたアイテムだけを持って窓から外へ飛び立った。




 ブラットが各地で用事を済ませていると、北東方面からワーム陣営の襲撃を知らせる鐘が鳴る。

 急いで門へと向かい既に待っていたグリードたちと合流し、戦いへとのぞんでいく。


 訓練をしていたようだが、ちゃんと動ける程度にセーブしていたのでむしろ体があったまって皆の動きのキレが増しているようにすらブラットには感じられた。



「お兄ちゃん、あいつがいる」

「ああ、分かってるよ、スフィア。だけど気付いていることに気づかれないように、これから見つけても、あからさまに見ないようにしてくれ」

「うん、分かった」



 ワーム陣営とぶつかり争っている途中でブラットは視線を感じ、ワームに視線を向けるフリをしながらそちらを見れば、遠い場所から木に登りブラットたちを熱心に観察している赤い甲殻のプレデターがいることに気が付いた。

 青い甲殻の配下たちも、別の木の陰に潜んでいることにも。



「前みたいに青いのだけ、けしかけてくる気かな?」

「けどさ、グリにぃ。あいつらから戦いの気配がまるでしねぇぞ」

「グリ兄? また呼び方が変わってるな」

「そーなんだよ。イグニスったら、どんどん訓練場にいる大人たちの影響受けちゃって、どんどん可愛げがなくなってきちゃってるんだよー。ファフはそのままでいてね」

「え? えーと……うん、分かったよ。スフィア姉ちゃん」



 なんてワームの雑魚を蹴散らしながら馬鹿な会話をする余裕を持てる程度に、完全にあちらは観戦モードな様子が遠くからでも、うかがい知れた。



「しかしカエル陣営がある方向とは反対の北門方面にまで観戦に来てるとなると、あいつら割と近場に居座ってる可能性すらあるな」

「他のカエルの気配はなさそうだしね。ああやって、俺たちのことを観察して戦いに備えてるってところか」

「けっ、モンスターの癖に気味の悪いやつらだな。モンスターならモンスターらしく、敵がいるなら突っ込んで来いってんだ」

「もう少し熟してから狩りたいから、それだと困るんだけどな」



 イグニスの言うことももっともなのだが、今来られても準備が不十分な上にブラットの進化のことを考えればまだ早い。



「んー……けどあの赤いの、なんだかお兄ちゃんのことを一番見てるのが少し気になるかも。

 そりゃあ、ここにいる戦士たちの中じゃ一番強いってのはあるんだろうけど……」

「あっちもオレを糧として認識してるのかもしれない。思えばナイトメアのときも、やたらとオレにご執心しゅうしんだったみたいだし。

 なんか強いモンスターには、美味おいしそうに見えるのかもな」

「ブラット兄ちゃん、他の人と違ってたくさん根源があるみたいだし、それが原因かもしれないね」



 それも進化の際に使っているのは、全ての根源本体そのものの素材たち。

 もしかしたらそれが余計に、ナイトメアやプレデターと言ったモンスターたちを惹きつけているのかもしれないと、ブラットはファフニールの言葉から推察する。



「けどまあどちらにせよ、観察されてるならできるだけこっちの手札は見せたくないな。

 そういう意味でも、本来攻撃に回らないタンクのグリードにとどめをさしてもらうってのは悪くないのかもしれない。

 ──おっと、そろそろH級のリーダーが来るみたいだぞ。グリード準備はいいか?」

「任せて。進化はまだでも、俺もちゃんと成長してるんだから」



 そう言うだけあって、H級の雑魚のリーダークラスのワームに対しても危なげなく立ち回り、仲間たちの支援は受けながらもキッチリと巨大なイモムシのようなモンスターを始末してみせた。

 進化したての初陣ではこのクラスの相手にも四苦八苦していた印象だったが、この短期間でかなり現在の種族での性能を充分に引き出せるようになってきているのがよく分かる。


 スフィアにイグニスもそれぞれチームとしての動きが最適化され、ファフニールも空気を読むのが上手く、それらにしっかりと馴染んできていた。



(まだまだガンツたちの連携に比べたら全然だけど、それでもちゃんといっぱしの隊として機能しはじめてる。

 この隊ならまだまだ強くなれるぞ、絶対に)



 欲を言えば次は遠距離からの攻撃ができる子が来てほしいところ。まだまだモンスターの支配域に乗り込むには実力も数も足りていないが、このまま成長していけばこの隊で各勢力を打倒していくのも夢ではないとブラットは確信を持つ。



「アイツらやっぱ今日は来ねーみたいだな」

「青いのだけなら、グリードの糧にちょうどいいから来てもらってもいいんだけ──」

「お兄ちゃんっ!」

「──ふっ! 分かってるって。さすがにそこまで気を抜いてたわけじゃないから。でも知らせてくれてありがとう、スフィア」



 赤プレデターからブラットが視線を外した瞬間、そちらの方角から野球ボールほどの玉が飛んできた。

 スフィアの予感がいち早く察知するのとほぼ同時に、ブラットもしっかり気が付き、それを雷刃の回転だけで器用に切り裂いてみせる。



「これは木の塊……かな」

「「「「きのかたまり?」」」」



 切り裂き雷刃の電撃で焼かれた物体を確認してみれば、それはプレデターの握力でえぐり取り強引に圧縮するように丸めた木の幹の一部。

 グリードたちにワーム戦は完全に任せ、ブラットが全く動かないので参考にならなかったのだろう。少しでも情報を得ようと、軽めのちょっかいをかけてきたようだ。

 これで殺す気がないのは明らかで、この程度なら今のブラットであれば直撃でも死にはしないのだから。


 だがブラットがなんなく攻撃を退けたのは面白くなかったのか、八つ当たりするかのように自分が登っていた木を蹴飛ばして奥へと去っていった。お付きの四体の青プレデターたちも慌ててその後に続く。

 実はそれはフェイントで──なんてこともなく、その日の襲撃はワームを退けただけで波乱なく終わった。




 その日の夜食のときにやってきたアデルとヌイに、プレデターたちの行動について問いかけてみた。



「なあ二人とも。プレデターたちってカエル陣営の領地に帰らず、この国の辺りをうろうろしてるって可能性はないか?」

「あーやっぱり現場もそう思っちゃう? 情報課の子らの網に、何度かそれらしき影が捕捉されてるんだよねぇ」

「それにおそらくカエル側とは関係のない野良のフリをして、各勢力のモンスターたちを捕食しているのではないかとも今日上がってきた情報の中にあったわね」



 どうやって強くなっているのかと気になっていたのだが、その情報が確かならそれらを糧にして自己強化を行っている可能性が高いとブラットは考える。



(これはあんまり引っ張りすぎると、プレデターの方が進化して私じゃ手に負えなくなる可能性すらあるかも。

 タイミングを見誤らないようにしないと)



 モンスターも当然ながら、強い敵を倒し糧にすることで進化できる。だがBMOの設定の通りであれば、人よりも進化はしづらくもある。

 なので簡単にポンポンあちこちでモンスターたちが進化してしまうなんてことは、そうそう起きないのだが、楽観視していいわけでもない。

 下手に欲張ってプレデターを強くして、さらに進化までされてしまった日には、いくらBMOのアイテムで下駄をはかせても届かない可能性だってあるのだから。


 とくにあのモンスターは不気味で、進化すればどれだけ強くなるか想像もつかない。

 今はC級相当でアデル一人でなんとかなる程度だという認識ではあるが、もしもB級まで上がってしまえば人類全体の存亡が関わるレベルの大戦になってしまう。

 そうなったときの被害は確実に後のブラットの活動にも響いていき、ベグ・カウ討伐など夢で終わってしまう可能性すらでてきてしまうだろう。



「それが本当だとして、各勢力のボスたちはなにかアクションを起こしてる様子とかはないのか?」

「今のところ、目立ってどこも荒れてないね。派手に動かず狩りをしてるなら、被害が出ても表面上何も起きていないフリをしてるってことかもね」

「え? なんでそんなことするんだ?」

「他の勢力に隙を見せたくないからだろ」



 イグニスが理解できないと話に入ってくると、大人の会話の邪魔をするんじゃないとグリードが簡潔に説明してひっこめさせる。



「まあそういうことね。私たち人類が生き残っているのは、モンスター同士でも争っていてくれるからでもあるわ。

 その争っている他勢力に弱みを見せれば、簡単に縄張りを削られるでしょうからね」

「じゃあ今回は前のナイトメア騒動のときみたいに、無駄な潰し合いはしてくれないと思ったほうがいいか」



 全体的に少しずつ戦力を削り、その上でいい塩梅の糧に成長してくれればブラットにとって嬉しいこと尽くしだったのだが、そこまで都合よくはいかないようだ。

 それからもいろいろとアデルたちと話をし、こちらでの情報も集めてからBMOへと帰還した。




 BMOに帰還し微妙な残り時間を課金拠点の【Mジェネレーター】で、炎獅子を召喚して二体同時に戦闘するという鬼畜の荒行を失敗で終えたところで、HIMAからメッセージが入ってきていたことに気が付いた。



「おー、マジか!」



 内容は明日には次の進化ができそうというもの。

 そろそろだと聞いていたのでそこまで驚きはしなかったが、ブラットは我がことのように喜び『じゃあ明日、進化した姿を見せてね!』と返事をしておいた。



(私も進んではいるつもりだけど、こうしている間にも上位層のプレイヤーたちはまた距離を引き離してくるんだからなぁ。こっから天辺を取ろうってのも楽じゃないや。

 けどそうじゃなきゃ、逆につまんないけどね!)



 友人がまた強くなることに喜びを覚えながらも、それと同じくらいの対抗心が湧き上がってくる。

 半年間の幼年期時代で開いた差は大きい。だが自分だって進化の可能性が見えてきているのだから、またそれで近づき返せばいいだけ。強さの上り幅なら、劣等種ですらモドキのブラットには敵わないのだから。

 そう自分を鼓舞し更にやる気を注入したところで、ブラットの今日のゲーム時間が終わりを告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベルイーター 【完結済み】
食の革命児
他作品へのリンクです。ご興味がある方はぜひ

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ