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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第六章

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第百五七話 ヨルムンの本性

 ゼインが世界で最も嫌いと言ってもいい存在──シルヴァン家。

 けれど当時は信用してたヨルムンが、早々に父をなかば追い出すように当主の座から退しりぞかせ、他の兄弟たち継承者候補も実力で黙らせ当主へと君臨していたことも風の噂程度には知っていた。

 ヨルムンとてゼインという怪物がいたせいで影に隠れてしまってはいたが、一般的にみれば優秀過ぎるほど優秀な人物だったのだ。


 精神的に参っていたというのもあるが、そのせいでシルヴァン家への忌避感も薄れてしまっていた。

 そんなこともあって、ゼインは数十年ぶりにシルヴァン家の門を叩くこととなる。



「ゼイン! その腕はどうしたっ!?」

「ちょっと厄介なやつに呪いをかけられちまってな」



 逃げ出すようにして家を出たゼインを、すぐに受け入れたヨルムンが開口一番発したのは心配の声。

 そこに嘘の色はなく、ゼインはコイツはあの時のままでいてくれたと表面には出さなかったが心の中で喜んだ。


 そこでゼインは事の経緯を詳しくヨルムンに話し、彼の──ひいてはシルヴァン家の力を使って何とか、この腕を治療する方法をみつけてくれないかと頼みこんだ。



「もしそれで治ったんなら、俺がその後に打ち立てるであろう全ての偉業をシルヴァン家の威光のために利用して構わないし、俺からもこの家の名を上げるよう周囲にシルヴァン家の名前を出したって構わない」



 なにもタダでやろうと言っているわけではない。

 ゼインの名が世に売れはじめた途端、ゼインの父は彼を勝手に養子にしシルヴァン家の威光を高めるために利用していたことを知っていた。

 だがゼイン自身は、それを否定しシルヴァン家とは関係ないというていをずっと取っており、それは少なからず抵抗にもなっていた。


 しかし腕の治療に協力してくれるなら、今度はゼイン公認の元で彼の力による威光を利用できるというわけだ。



「相変わらず凄い自信だな。だが確かにその状態でも、まがりなりにもやっていけてしまうのだから、腕さえ元に戻ればすぐに全盛期の実力にすら追いつけるかもしれないな。

 よし、分かった。それならば私個人だけではなく、家の者を動かす大義名分にもなるだろう。

 あの親父殿も、まだしぶとく生きているからな。今でも困ったことに隙あらば口を出してこようとする始末だ」

「それ大丈夫なのか?」

「問題ない。私も昔とは違うんだ。あの時と違って、今は反対に父を黙らせることだってできるのだからな。

 だから待ってろ、必ずお前の腕を治す方法を見つけてやる。ただその前に……もう一つ、個人的なお願いも聞いてくれないか?」

「……まあ、俺にできることならいいが」



 いったい何を要求されるのかと身構えるゼインに、ヨルムンはニッと若かりし頃のように笑ってこう答えた。



「もしも腕が治ったのなら、俺と勝負をしてくれ。そのためなら全力で探してやる」

「はっ────くくっ、はははっ、お前は本当に変わってねーんだな! 本当に……ありがとう………………兄貴」

「ゼイン……。ああ、可愛い弟のために、そして間違いなくこの世界きっての傑物になれる男のために、このヨルムン・フォン・シルヴァン。全身全霊でもって、なんとかしてみせようぞ!」



 ゼインは彼となら、例えあの憎きシルヴァンの血族であっても仲良く付き合っていけると、この時は思ったのだという。




 そしてさらに十年近い時が流れた。いくらシルヴァン家といえど、ゼインにかけられた強力な呪いを解く方法を探しだし、用意するのは簡単なことではなかったのだ。

 時間は残酷で、既にゼインは腕のないまま年齢が五〇に届きそうになっていた。


 どれだけ才能があろうと、老いには勝てない。これではもう天下無双の夢も無理なのでは──そう心が折れかけていた。

 だがようやくヨルムンが吉報をもって彼の元へとやってきた。



「ゼイン! やっとだ! やっと見つけぞ!」

「ほ、本当かっ!?」

「ああ、本当だ。存在自体は早くに知っていたのだが、それを探しここまで運ぶのに手間取っていたが、今日ようやくソレが私の元に届いたのだ。はやく来てくれっ。急いでお前の腕を元に戻すぞ!」



 ゼインが喜び勇んでヨルムンの後を付いていくと、そこは昔地下牢として敵の捕虜を収監していた、今では不気味だとあまり人も近寄らない場所まで連れてこられた。

 ゼインが入ったのを確認すると、ヨルムンは入り口の重い扉に厳重にロックをかけていく。



「な、なんか物々しいな……。こんなコソコソしたうえに、そんなことまでする必要があんのか?」

「今回手に入れた品は本来であれば、王家に黙って手に入れていいようなものではないのだ。

 気付かれれば、強引に取ろうとはしてこないだろうが、なにかしらの交渉を持ち掛けてくる可能性はある。そうなれば、こちらも断りづらいのだよ。そのせいもあって、輸送にも時間がかかってしまった。

 だから念には念を入れて、使ったことすらバレないように密かに使う必要があるのだ。

 貴族と言えば聞こえはいいが、いろいろとしがらみも多いのだよ」

「はぁ……なんかよく分かんねーが大変だったんだな……。本当に、ほんっとーーに、ありがとよ」

「なあに、気にするな。これは私のためでもあるのだからな。これでようやく、五体満足なお前と戦える」

「そうだな。これで……ようやく」



 ヨルムンは誰も入ってこれないようにしてから、地下牢の奥でゼインと向かい合い、水晶でできた蓮の花のようなアイテム──【天浄てんじょう蓮花れんか】を取り出した。

 それだけで、そのアイテムの周りからは清浄な空気が流れているようにゼインには思えた。



「これも飲んでくれ」

「これは?」

「こちらは体の内側から、この【天浄蓮花】をサポートし、より確実に治療をするためのものだ」



 さらに黒い種のようなものを渡され、それを薬でも飲むかのようにゼインは飲み込んだ。

 ここまで来て、その清浄な空気を纏うアイテムを見て、それを疑うという考えすら彼には思い浮かばなかった。



「では、はじめよう。その前に説明しておくと、このアイテムを使用するためには発動する者と、効果を受ける者の二人がいて成立し、さらに使用時には相手の同意が必要なのだ。

 私がこれを発動しながら『それを良しとするか』と言ったら、『ああ』でも『うん』でもなんでもいい。心からの了承の意を私に向かって唱えてくれ。分かったか?」

「おう、それくらいなら俺にもできるぜ」



 だからこんな不可思議な仕様にも、彼は疑問を呈することなく素直に受けいれてしまう。

 ヨルムンが【天浄蓮花】を掲げると、その水晶の蓮の花が虹色に輝いていく。



「我、欲する者なり。汝、それを良しとするか?」

「ああ、かまわねぇ! だからこの腕を治してくれ!!」

「ここに契約は結ばれた──」

「うおっ」



 【天浄蓮花】の輝きが段々と増していき、なんだか体の奥底が熱くなってきた。

 これは効果が出てるのだろうと期待していると、【天浄蓮花】が砕け散り光の粒子となってゼインの肩に纏わりつていき──最後に一際強く輝くとそれは消え去った。



「よし、成功だ。腕の呪いは解け、このポーションが利くようになったはずだ」

「ああ──────ああっ! 戻った! ついに戻ったぞ! ヨルムン!!」

「そうだな。本当に良かった。これで私も一安心だ」



 ヨルムンから受け取ったポーションを腕に振り掛ければ、そこから昔ほどの肌ツヤはなく、筋肉も落ちている状態ではあるが、それでもちゃんと動く両腕が生えてきた。

 戦士として見ればかなり歳もいってしまったが、腕以外の個所の鍛錬は怠ってこなかった。感覚は鈍っているだろうし、リハビリも多少必要だがまだやれる。そう思えるほどに、ゼインからは活力がみなぎっていた。



「やはり、ゼイン。お前は素晴らしいな。剣を何年も触れられなかったその腕ですら、私では敵わないと思わされてしまう」

「ははっ、もう誰だって負ける気はねーぞ。こっからまた、はじまるんだ! すぐに感覚を取り戻して、若い頃の自分を追い越してやる!

 ヨルムン! 剣を持ってきてくれ! 今すぐ約束の戦いを──」

「──それだけに残念だ。このまま、また強くなっていくお前を見てみたいと思ってしまうほどに」

「ああ? ヨルムン、いったい何を言って──ぐっ」



 ようやく腕が生え調子を取り戻してきたというのに、全身に激痛が走った。

 ヨルムンの方にも激痛が走っているようで、彼も片足を突いて何かに耐えているようだ。

 やがてゼインの胸から黒いバラのような花が、ヨルムンの胸から白いバラのような花が肉を裂いて花開く。そこで痛みは完全に収まった。



「さあ──契約執行だ」

「テメェ……なにを──ぁ?」



 不意に立ちくらみしたときのように力がフッと抜け、ゼインは思わず床に座り込んでしまう。

 胸から生えた花から黒い靄が立ち上り、ヨルムンの白い花に吸い寄せられ、そちらを黒く染めていく。



「ふむ、ここまでか。まだ動けるか? ゼイン」

「何しやがった……力が全然入らねぇぞ…………」

「ほう、やはりお前は凄いな。これを使われてなお、動けるのか。やはり惜しい才能だった」



 ゼインの花が白くなり、ヨルムンの花が黒くなると、やがてそれは枯れて散る。

 だがそのときにはヨルムンからは先ほど以上の力を感じ、ゼインは自分自身の力がまるで入らないことに気が付いた。

 呪いから解放され、あれほど漲っていた気力もまるで湧いてこない。



「本当にありがとう、ゼイン。お前の力と才能は、私の若さに変換し有効的に活用させてもらうからな」

「何を言っている──何を言っているヨルムンっ!! 俺に何をしたっ!!」

「何をしたか……か。よかろう、これも全てお前のおかげなのだし、それくらい知る権利もあるだろう」



 【天浄蓮花】というアイテムは、まさに腕に掛けられた呪いを完全に浄化するゼインが望んだとおりの約束の代物だった。

 だがしかし、あのとき飲まされた種は、その目的とはまったくの別物だった。

 あれは白い種を飲んだ者は、黒い種を飲んだ者からそのときの力と才能を花が枯れるまでエネルギーとして譲渡するという代物。


 たいていの者は譲渡の際に絞り尽くされて死んでしまい、完全に黒く染まることなく受け取り側の花が枯れ落ちるというのが定番なのだが、五〇代を目前にしてもまだ力強さを残し、その中に眠っていた才能は英傑級というゼインは中途半端に力を残した出涸でがらしのような存在に落とされはしたが生き残っていた。

 それが天下無双を夢見ていたゼインにとって、幸か不幸かは定かではないが。


 そして受け取り手は老いに抗える力を手に入れ、さらに貰ったエネルギーを余分に消費することで膂力も上げられるという。

 ただしそうして消費してしまうと、若さを保てる時間も少なくなってしまう。


 だがそれだけ強力で特別な効果を何の誓約せいやくもなく使えはせず、発動条件には対象者からの心からの同意の言葉が必要だった。


 そこでヨルムンは【天浄蓮花】への使用許可と思わせ、絶対に許諾するはずのない本命の種の使用の受諾を宣言させる方法を思いついたのだ。

 ヨルムン自身もそれでいけるかどうか少し不安もあったのだが、そんな曖昧な許諾であってもちゃんと効果を発揮し今の状態となる。



「返せっ──俺の力をっ!!」

「ゼイン、これでも本当に済まないと思っている。だがそれはできない相談だ。私は老いていく父を見て、恐ろしくなってしまったのだよ。老いというものが。

 必死に頑張っているが、それでも私は近い将来、あのままでは息子にすら敵わなくなってしまっていただろう。日増しに弱っていくようで、嫌で嫌でたまらなかったのだ。

 だが探せばあるものでな。これをお前に使える日を心待ちにしていたのだよ」

「何をっ──ぐあっ」

「もうここから出してやることはできないが、それでもそれなりに快適な暮らしはさせてやると誓おう。

 そしていくつか候補の女を連れてくるから、私の次の贄となる才能豊かな子を作ってくれ。

 まだ種は残っているからな、頼んだぞゼイン。

 ああしかし……お前ほどの才能を見せる子供なら、手塩にかけて育てるというのもいいかもしれない。あぁ……実に楽しみだ」



 ゼインは腹を殴られもだえている間に檻に入れられ、閉じ込められる。

 これからここに監禁し、無理やり子供を作らせ、そしてその子供すら使い潰そうとする外道っぷり。



「ああ、そうだ。礼ついでにもう一つ真実を話そうか。お前の母親だがな、殺したのは私だ」

「──は? な、なんでお前が? お前は母さんを助けたりもしてくれたじゃないか」

「あれが危害を被れば、お前はそちらに気がいって、ちゃんと修行できないだろう? それはいけない。

 お前は俺の前を走って、常に目標でいて貰わなければいけなかったのだから。なら助けもするさ。

 けれど私は、ある日気づいてしまったのだよ。あれがお前の足かせでしかないということに。

 こんな家に、あんな父親の元にいては、お前の素晴らしい才能は錆びつく未来しか見えなかった!

 だがあれが生きている限り、お前は籠の鳥。それはあまりにも勿体ない!!

 私がこの世で一番愛したお前の才能は、閉じこめるよりも世界に羽ばたいて自然に生きたほうが、より美しく磨かれていくというのに──とね。

 だから殺したんだ。あのときの私は、お前がどれほど天高く羽ばたけるのか楽しみでしょうがなかったのだ。

 だから許せ。あれはお前のためでもあったのだから。まあ……巡り巡って結果的に、私のためにもなったようだがね」

「……狂ってやがる」



 怒りもあったが、そのときのゼインは嫌悪感が全身から湧き上がり平然と笑うヨルムンが不気味で牢屋の中でなお、無意識的に彼から距離を取っていた。



「そうかもしれないな。お前という最高の戦士に魅せられ、私は狂ってしまったのだろう。

 だがその憧れもこれで終いだ。お前への憧れは今でもあったが、現実という──老いという存在を克服するためには使うしかなかった。

 これもお前が悪いのだぞ? あんな姿で私の前に現れなければ、ただひたすらにずっと手の届かない最強の存在でいてくれたのなら、私はお前を遠くで見て、その英雄譚に耳を傾けるだけで満足だったのだから」



 ゼインからすれば知るかという話だが、帰ってきたゼインが腕を無くすことなく正当に成長していたのなら、彼はゼインという存在を地に落とそうとは考えもしなかっただろう。

 それだけ彼にとって、ゼインという存在は特別だったのだ。



「ではな──ゼイン」



 最後にそう言い残して、ヨルムンは地下牢の扉の施錠までしっかりとして去って行った──。




 ここまで話を聞いたブラットは、そんなヤバイ奴と一緒に話していたのかと全身に鳥肌が立っていた。



「いやもうサイコパスかよ!? ヨルムンって!! ヤバー……こわー……」

「だろう。だから余計な詮索すれば、お前は絶対にアイツに目を付けられるって思ったわけだよ。だからつい──怒鳴っちまった」

「いや、うん、あれってオレのためでもあったのか……。ありがとう、ゼイン。でももう少し早く、その情報知りたかったよ……」

「勝手に会いに行ったくせによく言うぜ」

「…………あれ? でも何でここにゼインがいるんだ? 牢屋に入れられてたんだろ?」

「そのへんは、あの場所を知り尽くしていた俺の方が一枚上手だったってことよ」



 地下牢は今では誰にも使われていない場所で、人気も少ない。

 ちょっかいを出してくる兄たちにも邪魔されず、修行するにはもってこいの場所だった。

 そういうこともあって、ゼインは昔の脱走犯が上手く隠して作った脱出のための抜け穴があることも知っていたのだ。



「あとは闇に乗じて逃げようとしたが、追っ手に見つかって捕らえられそうになったんだが……最後に滝に飛び込んで何とか逃げ切れたってわけだ」

「弱ってたのに、よくそれで生き残れたな……」

「そこはまあ、運もよかったんだろうな。おかげで追っ手も勝手に死んだと思ってくれたようだし」



 実際にそれでほぼ死にかけていたのだが、そのときたまたま川で体を洗っていたホームレスたちに拾われ、彼らの献身的な介護のおかげで命を繋ぎ止め──そしてゼインは身を潜めながら物乞いとして生活するようになった。



「早雲さんを頼ろうとか思わなかったのか?」

「あいつは巻き込みたくなかったんだよ。あんなに強くなってるとは知らなかったが、それでもヨルムンは有名なお貴族様だ。

 ただ真正面から殺す以外にも、人を殺す方法なんていくらでもあるだろうさ」

「あの早雲さんでも? ぶっちゃけ若かりし頃のゼインくらい強いんじゃない?」

「……なんでお前が俺の若い頃のことを知ってんだよ。それも、さも見てきたかのように」

「ぎくっ」

「……さて、これで俺の知ってること全部話したんだ。今度はブラット、お前のことも話してくれるよな?」



 ニッコリ笑いながら肩を組まれ、逃げられそうにない。

 とはいえこちらに後ろ暗いところはないのだから、ここは【英傑召喚】のことも含めてぶっちゃけてしまおうと、ブラットは覚悟を決めた。

次は土曜日更新です!

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