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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第六章

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第百五〇話 しゃちたんのお披露目

 これまで零世界で活躍してきた前任者たちは、どこの勢力にも属さない野良のらが、人類の国を自分の縄張りにしようと襲撃してきたモンスターを狩っていくことで進化を重ねるというケースが多かった。

 そういった経緯もあって危険な野良モンスターは、これまでの前任者たちが粗方あらかた討伐しきってくれたので、人類最後の国は最低限の安定を手に入れていた。


 しかし逆を言えばブラットにとっては前任者たちのように、ちょうどいい進化の相手を探すことができない状況ともいえる。

 現状こちらから打って出られるほどの力も勢力もないブラットが、三次進化をするためには、ちょうどいい強さで尚且なおかつ、こちらが勝てる相手が零世界で現れるのをひたすら待つしかない状況。言ってしまえば完全に運任せな状態だった。


 それがいつになるのか──仲間を増やしながらも、どれだけかかるのか不安ではあったのだが、カエル陣営が投じた一石により光明が見えてくる。



(けどなーんか、都合がいい気もしなくもないんだけどねぇ。

 ナイトメアっていう最上級の糧の次に強くなってくプレデターなんて、立て続けに私に都合のいい相手が来てるわけだし。

 鈴木小太郎が裏で仕組んでるんじゃないかって、ちょっとだけ勘ぐりたくなっちゃいそうだよ)



 もちろん信頼はしているし、彼も嘘はつかないとは言っていたが、それでも小太郎を家族や葵たちほどに心から信用できる相手かと言われれば、そこまでではない。

 とはいえそんな器用なことができるなら、そもそも危機的状況におちいる前に、もっと上手く立ち回っていたであろうことも確か。

 実際に彼が生きるか死ぬかの瀬戸際に立っているのだって、接してきた様子からしても間違いないのだろうから。



「まあいいや、まだたった二回続いただけだし普通にあり得ない話じゃないでしょ。ってことで今日は──おや?」



 今いるのはBMOの課金拠点の要塞内。そこで英傑たちと十一連戦し、全員にボコボコにされて少し休憩していたときのこと。

 ブラットへ、しゃちたんからのメッセージが届いた。



「おー! ついに二次進化したんだ!!」



 内容はニア=エレにも無事に会え、ちゃんと狙っていた以上の進化をすることができたことで、鬼ごっこを手伝ってくれたこと、情報を教えてくれたことへの感謝が元気いっぱいの文章から沢山伝わってくるものだった。


 思わずブラットもニコニコしながら読み終えると、しゃちたんの新たな姿を見学しに彼女の元へと行ってみることにした。

 なにより彼女も今どこにいるのか記した上で、姿の画像を送ってくることもなく見に来てほしそうだったから。



(ここまで時間をかけたんだし、どんな進化になってるか楽しみだなぁ)



 モドキではあるまいし本来、劣等種であっても二次進化でここまで時間をかけて進化先を厳選し続けるのはまれである。

 だが大人になるまでの一次進化と二次進化は、その先の根幹をなす種であり、ここで妥協すればずっとその妥協を抱えていくことになるともプレイヤーたちの間でささやかれているほど。

 しゃちたんの言っていた『最強夢かわスライム計画』の遂行を目指すなら、まずここは粘るところだと、はるるんも考えたのだろう。



(そういう意味では零世界の子たちも本当ならそうやって進化させた方が、もっと強い種に成れたのかもしれないんだけど……あっちはそんなこと言ってられないし、しょうがないよね)



 経験値ポーションで無理やり底上げして、人から貰った素材で進化。これがBMOであれば、最低クラスの進化はまぬがれない。

 ただ救いなのは零世界の場合は、そこまでゲームの仕様に引っ張られることなく、強制的に最低クラスの進化にさせられるなんてこともなく、必ずしも最高クラスの進化を引けないというわけではないところだろう。



「よし、じゃあ行ってみよっと!」



 ブラットはすぐ後に、はるるんから送られてきた招待コードを使い、彼の拠点であるクラン──『百家ひゃっか争鳴そうめい』のホームへと飛んだ。




 百家争鳴拠点の庭に着くとサクラとHIMAがおり、こっちこっちと手招きされる。

 手招きされた場所では間仕切りカーテンが設置され、その奥には一回りサイズが大きくなった、しゃちたんらしきスライムのシルエットが映し出されていた。



「よし、これで全員揃ったな」

「ごめんねー! 急に呼び出すみたいなことしちゃって!」



 間仕切りの横に立つはるるんがブラットとHIMAの姿を確認し、カーテンを開く紐を握ると、その奥にいるしゃちたんがプルプルと揺れながらそう声をあげた。



「別にいいよ。オレも、しゃちたんの進化は気になってたし。おめでとう」

「私もだよ、進化おめでとう。しゃちたん」

「ありがとー! じゃあ、さっそく見せちゃおう。おねがい! はるるんさん!」

「はいよ! これぞ我々、百家争鳴プロデュース──新しゃちたんの姿だ!」



 はるるんがノリノリで口上をあげ握る紐をグッと引っ張れば、シャッ──と音を立てて遮っていたカーテンが開かれる。



「じゃーん! どお? 可愛い?」

「こ、これはっ!?」

「ま、眩しいっ!?」

「おっと、ちょっと光を出しすぎちゃったか。張り切りすぎちゃった、ごめんごめん」



 カーテンの先から現れたのは、少しサイズが増したキラキラと虹色の粒子を纏う、ピンク色のオーロラのような表面色をしたスライム。

 大きくて丸い瞳も健在で、相変わらずキラキラと虹色に輝いて宝石のよう。

 周囲の光る粒子の輝きは調整できるようで、最初は直視できないほど眩しかったが、光を落としてくれればちゃんと見られるようになった。



「うーん、なんか周りに舞ってる粒子はもっと派手になったけど、しゃちたん自身の見た目はそんなに変わってない感じか」

「まーねー、このピンクベースのスライムちゃんボディは重要なポイントだから。けど中身は結構変わったんだよ」

「へぇ~そうなんだ。それで、その種族の名前はなんていうの? ブラットと違って進化するとき表示されてたんでしょ?」

「うん、されてたよ。この体は『セーラスライム』の上位亜種──『プリズマセーラスライム』っていう種族名みたい」

「ってことは、やっぱり新種か。セーラスライム自体が新種で、その上位亜種なわけだし」

「その通りだ! その件については、今日中に動画にしてアップする予定だから二人も絶対に見てくれよな!」



 アドバイス兼プロデュースする報酬が、百家争鳴のデータベース更新のため、はるるんの動画のためでもあるので、しゃちたんも積極的にこの後にもある撮影に応じるつもりだ。



「それで中身が結構変わったって言ってたけど、どう変わったんだ?」

「まず何と言っても光るのさ! ぴかー!」

「「まぶしっ」」



 まるで派手な照明器具のように、赤、緑、青──といった具合にボディと周りに漂う粒子が色を変えながらまばゆい輝きを放つ。

 だがその姿は夢かわスライムというよりも、むしろ──。



((ゲーミングスライムだ!!))



 大きな箱のPCは既に彼女たちの世代には存在しないが、それでも言葉としてこの時代でもゲーミング○○の輝きへの表現は根強く残っていた。

 ブラットとHIMAの頭の中では無駄に色を変えて輝くその姿は、それにしか見えないのだが……その色が変わる効果はちゃんとしていた。



「これ凄いのはね、色を変えると変えてる間、その属性のスライムになれるんだよ」

「え? なにそれ凄いね」



 赤に光ればファイヤースライム系、オレンジに光ればアーススライム系、緑ならばプラントスライム系、黄緑ならウインドスライム系、黄色ならサンダースライム系などなど──変色中はSTをほんの少しずつ消費するものの、その間はその属性に対して強い耐性を有したり、その属性に変化した種族スキルによる攻撃なんかもできるのだという。


 また周囲に舞っている虹色の光の粒子は余剰回復分で溢れたエネルギーであり、それらを体に吸い込むことでHP、MP、ST、HUNの各消耗を任意のタイミングで任意のものを回復できる。



「そんで必殺技もあるんだよ! キラッ♪」



 元の色に戻ったしゃちたんの虹色の瞳に、光の粒子が吸い込まれ「キラ♪」の言葉とともに虹色のレーザービームが両目から射出された。



「今のって猫の首領戦の宝箱で手に入れた、義眼の魔道具の効果……なのか? でも今はオッドアイじゃないけど……」

「違うけど……半分は正解かな? その義眼──【粘体熱光線眼】もだし、【スライムクリスタル】に【スライムチ】、【スライムタコアシ】、【スライム吸盤】、【スライムクチバシ】とかの体に取り込んで使うタイプのアイテムは全部、進化したら私の体に取り込まれちゃったみたいなんだよね。

 だから両目からビームが出せるし、触手もアイテム無しで八本まで出せるし、ムチのおかげで長くもなってるんだよ。

 他にもタコのクチバシみたいなのを出して噛みついたり、吸盤を作って張り付いたりなんてことも種族特性で最初からできるみたい。

 ちなみに性能は全部、元のアイテムの上位互換だったよ」



 スライム用などによくある体内に取り込むタイプの装備品は、進化の際に進化素材として消費してしまうこともあるが、その全てが取り込まれ形として残るのはBMOでは非常に珍しいことでもある。

 それだけでも、かなり特殊な進化だということがうかがえた。



「そりゃまた豪勢な進化だね~。ここまで頑張った甲斐はあったんじゃない?」

「もちろん! それに二人だから言っちゃうけど、こんなアイテムをニア=エレ様に貰ったんだ!」



 きゅぽんっと音を出しながら、しゃちたんの体の中から彼女と同じピンクのオーロラ色をしたサッカーボールほどの玉が出てきて、それを触手で持った。



「それはいったい……なんなんだ?」

「これは『精霊スライム糸玉』で、【アリアドネ】っていう名前をニア=エレ様に付けてもらった物だよ。

 鬼ごっこでサクラさんが糸を使ってるの見てカッコいーなーって思って、装備として使ってみることにしたんだよ」

「なんだか恥ずかしいなぁ。でも悪い気はしないかな」



 サクラがまんざらでもなさそうに、頬を掻いていた。

 ちなみにこの『精霊スライム糸玉』などという珍妙なアイテムは、完全にしゃちたんのために最適化された初出装備品。

 しゃちたんがあれこれとニア=エレに、こんな感じでこうなって、こんなこともできたらいいかも!などと、いろいろと注文を付けまくった結果そうなった。

 あの場ではこんなに注文してもいいものなのかと、後ではるるんやサクラが感心していたほどだ。



「糸かぁ。けっこう難しいイメージがあるけど、しゃちたん大丈夫? 扱えそう?」

「うーん、正直まだ練習中ってとこ。それに今の私の種としての格じゃ、ぜんぜん性能を引き出せないしね」



 そのオーロラ色の玉を体内に再び取り入むと、しゃちたんの体から同じ色の糸がシュルシュルと飛び出し、彼女の意思のままに触手のように動き、いつの間にかはるるんが持っていたダイコンに巻き付いていき──。



「えいっ」

「おお、ダイコンが切れた。けっこう切れ味いいな」

「でも戦闘目線で言っちゃうと、ちょっと時間がかかり過ぎかな」

「だよねー! ちょっとずつ慣らしてるとこなんだよ」



 糸の動きは緩やかで、モンスターやプレイヤー相手では巻き付ける前に簡単に避けられてしまうだろう。

 細い糸は触手以上に繊細で、扱うには相応の高い技術力を要求されるからだ。


 だがもっと扱いが上手くなっていけば即興で操作し編んで鞭にしたり、捕縛ネットにしたりと応用力も高い。

 また切ったり切れたりしても、しゃちたんの体と同期しているのでHPを使っていくらでも修復可能と糸玉自体が壊れることもない。さすが大精霊お手製の装備といえよう。



「よいしょ。これで、お披露目はお終いかな。

 最後に装備を付けてっと。どお? ちゃんと可愛いスライムになれてる?」

「うん、可愛いよ、しゃちたん」

「七色に点滅してないなら、ちゃんと夢かわスライムって感じだし私も良いと思う」



 サイズ感が増したことで、【リビティナの薄布】のベールが付いたティアラが少し小さく見えるが、それがまた逆に可愛らしさを演出してもいた。

 この夢かわスライムボディを維持したまま、もっと強くなりたい。ブラットやHIMAたちに、これ以上置いていかれたくないという彼女の願いは、確実に叶えられていると言っても過言ではないだろう。



「えへへ、ありがと二人とも! これからもっと強くなって、驚かせちゃうからね! 覚悟しててよ!」

「俺の予想通りにいけば、おそらく三次進化は二次進化より短い期間でできると思うしな。

 ニア=エレのイベントをクリアできるようにするための下準備とかで、余計に時間がかかったのが今回これほど時間がかかった要因でもあるわけだし」



 最低限のサポートははるるんやサクラ、他の百家争鳴のクラメンがやってくれたが、それでも大部分はしゃちたんが自分でやることにしていた。

 なのであの隠れた悪魔を倒せるようになるまでに、かなり時間を取られていたのだ。



「ふっふっふ、でも私だってそろそろ次の進化が見えてきたところだよ。そのときは二人にもお披露目するから見に来てね♪」

「マジで!?」「そーなの!?」



 ブラットにもこのタイミングまで内緒にしていたので、しゃちたんと一緒に目を丸くする。

 けれどブラットとて、負けてはいない。



「それなら、こっちも望むところだ。オレも次の進化の光明が見えてきたところだから。そしたらオレが強くなる番だぞ」

「なに!? そうなのかっ? その光明ってのは、例のプレデターと呼ぶことにした個体だったりするのか?」

「うん、それだよ。なんか勝手に強くなっていってるみたいでさ、次の進化のために必要な糧になってくれそうなんだよ」

「勝手に強く……? その性質を持っているということは、あのモンスターの……後で詳しい情報を俺のとこに送りつけておいてくれ。有益な情報として、そいつのデータをまとめておく」

「ありがと、助かるよ」



 プレデターへの対策は、はるるんの持つ情報網がかなりカギとなっているので、ここは期待したいところである。



「けどモドキでも案外一回進化しちゃえば、とんとん拍子に進化できるのね」

「いやでもサクラさん、今回はたまたまいい感じの奴が来てくれたってだけで、下手したら雑魚狩りだけで長期間過ごす羽目になってたかもしれないんだからな。

 ほらあっちは死ねないから、ほいほいと探索に出られないし」

「あーそっかぁ。というか死ねない縛りがあるのが、やっぱ一番きついね」



 などとサクラと話していると、彼女はふとブラットの手に包帯が巻かれていないことに気が付いた。



「あれ? いつものダメージ包帯どこやったの? ブラットくん。お気に入りだったんじゃないの?」

「ダメージジーンズみたいに言うなよ……サクラさん。確かにボロい包帯だったけどさぁ。それにお気に入りとは一言も言った覚えはないし……。

 けどあれなら、ちょっと前に壊れて使えなくなったよ」

「壊しちゃったの?」



 HIMAも会話に加わってきたが、包帯についてはランランとの約束もあるので壊れて使えなくなったの一点張りで押し通す。

 そこに何かあるようにも思ったようだが、皆空気を読んで言いたくないことがあるのだろうと、それ以上しつこく聞かれることもなく、この後撮影もあるということなのでブラットとHIMAは、そのままお開きにして百家争鳴クランをあとにした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲーミングスライムはさすがに草
[気になる点] >>「そんで必殺技もあるんだよ! キラッ♪」 しゃちたん「みんな抱きしめて!銀河の!はちぇまれぇ!」 [一言] ヤック・デカルチャー!
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