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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第六章

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第百四九話 実験?

 ファフニールが進化したことを喜んだのも束の間、今日は朝早くから襲撃を知らせる警鐘が鳴り響く。



「今日はカマキリか」

「あいつら全然来ないけど、どうしたんだろ」



 ブラットの呟きにグリードが反応し、そう口に出す。

 プレデターが顔を見せてから、すぐにでもまた再来するかと思いきや、あれから何のアクションも起こしてはこない。

 こちらから探しに行けるわけもなく、ひたすら待つしかないのが歯がゆいところである。



「準備できたよー。ファフも大丈夫そう?」

「うん、大丈夫だよ、スフィア姉ちゃん」



 早くも実戦となったわけだが、ファフニールはブラットたちがいるということもあって気負った様子もなさそうだ。

 ついに国において隊の最少人数である五人に到達したブラット隊は、急いで戦場へとおもむいた。



「うらぁっ!!」

「飛ばしすぎるなよ! イグニス!」

「分かってるって!」



 ブラットが何も言わなくても、グリードが戦いに呑まれて消耗しすぎないようイグニスの状態に気を配ってくれている。

 視野が広く理性的に動くタイプのグリードと、戦いにのめり込むほど視野が狭くなり本能で動くタイプのイグニスは、互いに真逆であるからこそ良いコンビとして成立しはじめていた。

 グリードがカマキリたちの攻撃を弾き、怯んだ隙にイグニスが敵を殴るというパターンが完全に嵌まり、次々に敵のむくろが積み上げられていく。

 イグニスも手加減を少しずつ覚えてきているので、素材を完全にダメにしてしまうことも今のところない。



「えーいっ。そこのをお願いね、ファフ!」

「任せて──キュルゥッ!」



 スフィアはその二人の後ろで、ブラットから譲り受けた魔刃のヨーヨー【八爪手車・改】を使って器用に振り回し、中距離から敵を切り刻んでいく。

 生き残ってもそれをファフニールが噛みついたり、足で踏み潰したりとキッチリ止めを刺してくれているので問題ない。



「もう雑魚相手なら、オレ抜きでも充分戦えそうだ」



 かなり危なげなく戦えている上に、ファフニールもスフィアの指示で補助に徹し、いざというときすぐにでも回復できるよう魔力も体力も温存できている。

 これほど盤石なら例え雑魚たちのリーダー──H級のモンスターが現れても、しっかりと討伐を果たしてくれることだろう。


 それもこれもグリードが前衛で、スフィアが中後衛で指揮できるようになったのが大きい。

 ブラットはこのまま、今日は危なくならない限り手を出すのは最後まで控えてみようと見守った。



「来たっ!」

「油断するんじゃないぞ!」



 四本の鎌を持つ大型のカマキリモンスターが、Z級の雑魚モンスターたちの後方から颯爽と現れた。

 大丈夫だろうと思いつつ、つい心配になって口を出してしまうブラットは自分自身に苦笑してしまいそうになったとき──突如として戦場の空気がガラリと変わる。



「あれはっ──」

「「「「ゲロゲロゲロッ」」」」



 カマキリ陣営の襲撃は終わっておらず、カマキリたちのH級との戦いははじまってすらいなかった。

 そんな中さらにカマキリ陣営の後方より、四体の甲殻を身に纏った配下の──青プレデターたちが突如襲来したのだ。



「赤がいないってことはないはずだ。四人とも、カマキリたちに注意しつつ警戒を!」

「「うん!」」「ああ!」「わかった!」



 配下の方とはいえ、今いるカマキリたちの最大戦力でも一体で圧倒できる戦力。

 それが四体後ろから襲い掛かってきたことで、結果的に人類とカエルに挟撃される形でカマキリ陣営は殲滅されていく。


 やがてカエルたちはカマキリたちを捕食しながら腹を満たし、気力十分な状態で人類側のいる場所にまで到達した。



「ゲロゲッ!」

「ふっ!!」



 だが人類も呑気に眺めていたわけではない。カマキリたちの相手をしてくれている間に、後方で待機していた四級以上の戦士たちが既に前に出てきていた。

 ブラットたちも準備を整え、まずはグリードが相手の腕の甲殻から生えた爪を盾で滑らせるように受け流してみせる。



「うらっ!!」

「ゲロ──ゲッ!?」



 初撃をグリードが受けてくれた隙をついて、イグニスが盾の後ろから飛び出し炎を纏う拳で殴りかかる。

 相手はすぐに反応しバックステップで避けようとするも、その方向にはスフィアによる【雷壁】がタイミングよく張られ回避を阻む。



「おらぁああ!!」

「──ゲッ」



 足が止まったことで、イグニスの一撃が腹部にクリーンヒット。青プレデターは嗚咽おえつを上げるように腹を押さえ前のめりになり、顔が地面の方を向く。



「ぺっ!!」

「ゲゥッ──」



 すると地を這うように静かに四本の足で下に回り込んでいたファフニールが、口に溜めていた毒液を目に向かって吐き出した。

 甲殻のない剥き出しの粘膜にファフニールの【強毒】がベットリと付着し、さぞや苦しむことになるだろうと、ブラットですら考えていたというのに反応は微妙だ。



「ゲロッ」

「──あっ」

「だめっ!!」



 多少の苦しみはあるようだが、それでも目を左手で乱暴にぬぐい、足元にいるファフニールに向かって右手の爪を振り下ろす。

 グリードもイグニスも、そして弟が殺されそうになり叫んだスフィアも間に合わない。

 ファフニールも初めて感じる命の危機に身がすくみ、なにより足で踏みつけるように押さえられてしまっているので逃げることも叶わない。


 そのままファフニールの命は、青プレデターによって狩り取られ──。



「ゲゴッ──」

「うちの期待のルーキーになにすんだ」



 ──ることはなかった。

 一瞬で割って入ったブラットが、その尻尾に持っていた『ユニコーン』と名付けた一本角の魔剣を、硬い甲殻も豆腐のように突き破り首を刺し貫いたのだ。

 間に合わせで使っていた安売り魔剣とは雲泥の性能といっていい。



「ゴォェ──ゴッ──ゴォ──」

「しぶといな……はっ──はっ──はぁっ!」



 首にユニコーンを刺したまま、ブラットの尻尾の力だけで空中に持ち上げられている状態だというのに、まだ藻掻き生きていた。

 そこでブラットは両手から極限まで薄くした【雷刃】を発生させ、肩口の甲殻の隙間に差し込むように振り抜き青プレデターの両肩を切り落とし、さらに首からユニコーンを引き抜き、今度は脳天に穴を穿つ。



「ゲロォ…………」



 それでもまだ虫の息ながら生きていた。ブラットもドン引きの、驚異の生命力である。



「イグニス、グリード、スフィア、ファフニール。俺が見てるから、総攻撃でコイツを糧にするんだ!」

「「うん!」」「おお!」「う、うん!」



 だがここまで弱らせれば、この子たちでも余裕で狩れる。せっかくなので、四人の次の進化に向けた糧になってもらうことにした。

 その間、念のため死にかけの青プレデターを気にしながらも、赤プレデターを必死で探していく。



「いた──けど、ん……? これはっ……」

「よし! 殺したよ、兄ちゃん!!」

「いいぞ、四人とも。だけど警戒を怠るなよ、あそこに赤がいたぞ」

「あんなとこに……でも嫌な感じはまだしないよ、お兄ちゃん」

「あいつ何してんだ? ぼーっと突っ立てるだけじゃん」

「うぅ……でもなんか、僕は観察されてるような気がして気味が悪いよ……」

「──それだ」



 ブラットが見つけた青たちのボスであるプレデターは、配下にだけ前に行かせたまま、自身はかなり離れたところで立ったままジーとこちらを見つめたまま動く気配すらない。

 それはまるで、ファフニールが言ったように観察しているかのように。


 他の三体の配下も、人類側の戦士たちによって負傷者を出しながらも死者はないまま順次狩られていった。

 プレデターへの警戒はずっと行っていたので、速やかに対応できる戦士が投入されていたからだ。


 そして部下が全員殺されると最後にチラリとブラットの方を見つめ、プレデターは「ゲッゲッ」と鳴きながら、そのまま何をすることもなく立ち去っていった。



「終わった……ってことでいいのかな? 兄ちゃん」

「そうだな。今日は終わったんだと思う。とりあえずお疲れ様、オレたちの家に帰ろうか」



 そう──〝今日は〟これで終わった。だがブラットには、これが始まりのように感じられてならなかった。




 その夜。アデルとヌイが夕食時にやって来て、さっそく今日の話を現場にいた生の声が聞きたいと話を振られた。

 なのでブラットは、そのときに感じたことをまとめたメモ用紙を取り出し、全員で共有していくことにする。



「まず初めに感じたことは、配下たちの耐久力だ。

 腕力や攻撃速度なんかは上がっているようには思えなかったけど、確実に前よりしぶとくなっていた」

「兄ちゃんに頭を刺されても、まだ生きてたんだぜ! すげー気持ち悪かったぞ」



 最近は他の戦士たちと交流を持ったことで、だんだんと言葉使いに野性味を帯びてきたイグニスが、大げさなほどジェスチャーをしてアデルとヌイに伝えてくれる。



「さすがに前の奴なら、そこまでやれば即死だったはずだ。

 だけど今回の配下は虫の息ではあったけど、ちゃんと生きてはいた。それに──」

「うん? なあに? 兄ちゃん」



 ブラットが無邪気にご飯を頬張っていたファフニールへと視線を向けると、彼は頬を膨らませたままコテリと首を傾げた。

 トカゲに忌避感を持たないブラットは、その動作とつぶらな瞳に可愛いと頭を撫でたくなるが、兄の威厳を保つためにもとグッとこらえ思考を元に戻す。



「この子の毒が、大して効かなかったってのも気になってる。

 以前プレデターを追い払ったときにも、赤の親玉のほうに毒を使ったってのは報告していると思うんだけど」

「ええ、ちゃんと報告が上がっていたわ」

「私も覚えてるよ。だから毒が有効だろうって、薬師や錬金術師たちに作ってもらってたりするんだし。

 あの【絶脈の雫】だっけ? あれが凄い革命的な素材らしくて、かなり研究がはかどってるらしいよ?」



 難しい素材とランランから聞いてはいたが、やはりこちらの人間でも使いこなせそうではあるようで、ブラットは少しホッとする。



「それは良かった。良かったけど、前の毒で効果があったならファフの毒でももう少し効果が出ているはずだ。

 前に使ったのも汎用毒。何かの種に特化したわけではないけど、幅広い魔物に有効な毒ってのは同じなんだから」

「ということはつまり……、前にプレデターに使った毒に耐性ができたと考えるべきかしら」

「え? でもお兄ちゃんが前に使ったのは、赤いのだけだったよ?」

「ん~ブラットくんの話が本当なら、ボスの耐性を部下を産み出すときにも受け継がせられるのかもしれないねぇ。厄介だわ、こりゃ」



 そもそも前殺した配下たちも、きっちりと補充されていた。部下たちも一新されたと考えていいのかもしれない。

 そして今回ボスが何もせずに帰ったということは、奴にとっては部下たちは消耗品でしかない可能性まで出てきた。



「そしてさらに厄介なことに、あいつはその消耗品を使って実験をしていたのかもしれないってことだ」

「実験? モンスターがそんなことをするというの?」

「いやいやアデル。モンスターの中にも妙に賢いやつはいるのは知ってるでしょ?

 そいつは飛び切り、モンスターの中でも頭が働く奴ってことなんだと思うよ」

「オレもそう思った。まるでどうなるのか、どんな結果になるのかだけに興味があっただけって感じだったんだよ」



 赤のプレデターが最後、何もせずに帰っていったのがその証拠だろう。

 それも部下を殺されたことへの怒りすら、一切(にじ)ませることなく……。



「あとは……」

「まだあるの!?」

「ああ……うん、これはまあオレの主観というか、そう感じたってだけだから気のせいだって可能性もあるんだけど」

「それでもいいわ。聞かせてちょうだい」



 もう勘弁してくれと頭を抱えるヌイに対して、アデルが真っすぐこちらを見つめて問いかけてきた。



「たぶんアイツ、前にオレと戦ったときより強くなってる。感じたんだ──オレの奥底で」

「感じた? 一体を何を感じたというの?」

「前はアイツを見ても、そんな感じは起きなかった。精々オレの次の進化への通過点──大きな糧にしかならない存在だろうとしか思えなかった。

 でも今日見たあいつは違ったんだ。もしかしたら、あれを殺せば進化できる……とまではまだいかないけど、それにかなり近い感覚が本能に訴えかけてきたんだよ」

「なるほど……。それが気のせいでないのなら、確実にプレデターは力を上げていると考えたほうがよさそうね」

「うーん……、上限があってくれると嬉しいなぁ」



 放っておけば強くなる。けれど、こちらから仕掛けることはできない。となると下手をすると、本当に手が付けられなくなってから襲撃してくる可能性すらある。



「でも──もう少し強くなってくれれば、逆に今度はオレの次の進化の道が開けるかもしれない」

「それまで黙って手をこまねいて、人類の危険度を上げろって言いたいのかな? ブラットくんは」



 さすがにそれは看過できないと、珍しくヌイの雰囲気がひり付いたものに変化する。



「そうは言わないよ、ヌイ。けどどうせアイツに、こっちから戦いを仕掛けることはできないんだ。

 だったらいい塩梅になるまで放っておいて、狩り時になったら狩ればいい」

「……いやいや、こっちのタイミングでいけないんだから、そんな都合のいいときに来てくれるわけないでしょ」

「実は今のアイツには効果は弱いけど、オレが進化できるくらい強くなってくれれば使える神様製のアイテムに心当たりがある。

 それを使えば、確実に決戦に持ち込めると思う」

「それは自分が進化したいからそう言っているだけ──なんてことはないのよね?」

「ない。それは本当だ。それは格上であるほど効果を発揮してくれる物なんだから」



 今のブラットでは取得難易度は高いが、最悪兄や友人を頼ることもできるので、絶対に手に入れられないわけでもないアイテムだ。

 そしてそれは言った通り、モンスターから見て格下だと思えるほど効果が増大していく。


 それをブラットの言ったタイミングで使えば、相手は戦いたくて仕方がなくなるが、強力ゆえに使用者かモンスターのどちらかが死ぬまで戦うことになり、決戦を強引に起こすことができるのだ。


 あのモンスターが危険になれば逃げると知ったからこそ、ブラットもその対策として何かないかとBMOで調べていたおかげで知った物。

 そこに嘘は一片たりとて存在しない。ブラットの曇りない瞳をじっと見つめ、アデルはやがて納得してくれた。



「分かったわ。信じましょう。けどやるからには、絶対に時期を見誤ってはだめよ?」

「分かってる。そこはしっかりと気を付けておく。オレだって、死にたくないしな」

「そうだよー。ちゃんとブラットくんには子供を残して──」

「やかましいっ」



 とにもかくにも、悪い状況ではあるが希望も見えてきた。

 BMOで英傑たち相手に修行を積み、さらに大量の対策アイテムも用意して下駄をこれでもかと履きまくり、くだんのアイテムも手に入れて、必勝の形で決戦に臨めるようにすればブラットたちの大勝利だ。



(まさか次の進化の可能性が巡ってくるとは思ってもみなかったけど、このチャンスは絶対に掴まないと。

 奴の周到さから、絶対にこれからも定期的に実験を仕掛けてくるだろうし、そのときに観察して状況を確認していけばいいはず。

 あとはプレデターが手の付けられないところに行く前に、全部の準備を調えないとだね。さあ忙しくなるぞ! 頑張らなきゃ!!)

次は土曜日更新です!

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