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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第五章

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第百二五話 お誘い再び

 スフィアの初陣も無事に済ませた夜のこと。

 いつものようにやってきたアデルと一緒に、ブラットたちは五人で食事を取りながら談笑していた。

 話題は主に、今日判明したスフィアの能力について。



「ほんとに人の魔法が使える上に、魔法をエンチャントすることもできてしまうのね」

「面白いでしょ、お姉ちゃん」



 アデルが自前の血で生み出した魔刃のような刃にブラットの雷撃を乗せてみれば、彼女からしても珍しそうに目を丸くする。



「お姉ちゃんの魔法だって使えると思うよ」

「ええそうね。たぶん使えるんでしょうけど、私のはやめておいた方がいいと思うわ」

「え? どうして?」

「アデルの魔法は血を使うからな。アデルの場合は種族的に血液を急速的に作りだしたり、よそから取ってくることもできるだろうが、スフィアはできないだろ?

 なのに血魔法を使おうとすれば、すぐに貧血で倒れるぞ」

「まあ、そういうことね。モンスターから流れた血をすぐに使えるようにするには、種族として持って生まれた能力が必要でしょうし」

「そっかぁ」



 血魔法というのは特殊な系統の魔法で、種族としてそれを使うための体質と特性を有していなければ、自滅しかねないので注意が必要なのだ。

 なのでいくら使えるからといって、何でもかんでも考えなしに他者の魔法を使うというのも考え物……ということなのだろう。



「オレの魔法は今のところ、そういうのはないから好きに使ってもいいんだけど」

「いいな。俺もそういう力が欲しかった」

「あら、グリードだって充分凄いと思うわよ。

 大の大人でも立てなくなるような、ビッグフィアースライムの【恐怖】に打ち勝てたんでしょう? 誇ってもいいと思うわ」

「そうだぞ。まだまだスキルを制御できるようにする必要はあるが、最初からいきなり精神攻撃に打ち勝てる手段を得られたのは、グリードが持って生まれた才能があってこそだろうしな」

「そ、そうかな」



 グリードはブラットやアデルに褒められ、満更でもなさそうに頭を掻いた。

 ただ彼の精神攻撃対策である【ヘイトリッド】は、憎しみで心を満たしてしまうので、暴走状態に陥りやすいというデメリットもある。

 BMOでは【狂戦士化】というスキルで理性を無くし、強引に精神攻撃を打ち払って相手に攻撃するという方法もあるが、【ヘイトリッド】もそれに近い。


 だが理性を失ってしまうと、大前提としてタンクという難しい役割をこなすことはできなくなる上に、モンスターのように暴れ狂いながら敵に突っ込んでいってしまう。

 【ヘイトリッド】の場合は味方まで攻撃するほど理性は吹き飛びはしないが、無謀な特攻を仕掛けてしまうことは【狂戦士化】同様ありえる話なので、命が一つしかない零世界でやるにはリスクが大きすぎる。

 だからこそ憎しみすらも支配して、上手じょうずにその状態を乗りこなせるよう、グリードは精神の鍛錬を積んでいく必要があった。



「二人とも本当に優秀な戦士ね。この子の将来も楽しみだわ」

「おえも、つおくなう」

「ああ、強くなってくれよ。イグニス」



 イグニスも順調に経験値ポーションで成長し続け、今では舌足らずながらも言葉を話すところまできていた。

 この調子でポーションが集まるなら、ブラットが炎獅子を討伐する頃には完全に幼年期の体は仕上げることができるだろう。



「ということでイグニスが参入する前に、今日から二人にも魔導学の勉強をしてもらおうと思う」

「うん」「はーい」



 アデルにはブラットが、たまにヌイにもだが魔導学を教えているので、その延長線上として、いよいよ自前の魔法を使えるようになったグリードやスフィアにも教えていくことにした。



「けど自分に合わないなと思ったら、別に止めてもいいからな?」

「私はできる気がするなー」

「お、俺だって!」



 スフィアは勘がそう告げ、グリードもスフィアには負けない後れは取らない、強くなるためならなんだってやるという心のままに、やる気を見せてくれた。



「──ってことで今、言ったような感じで魔法陣が見られるように意識してみてくれ」

「わかった」

「…………」



 魔法陣の見方についてレクチャーし終え、グリードはすぐに返事をしたというのにスフィアは何かを考えるように黙ったまま。

 ブラットは教え方が悪かったかもしれないと、彼女に向けて口を開く。



「どうした? スフィア。なにかわからないとことか、質問とかあるのか?」

「ねぇ、お兄ちゃんはもちろん魔法陣が見られるんだよね?」

「そりゃあ人に教えてるんだから、オレができなきゃダメだろう」

「だよね。──えい」

「ん?」



 スフィアは不意に【マジカルコネクト】を発動させ、自分とブラットの間にラインを引くと、彼女はブラットが有している【魔法陣閲覧】を使用して明かりを灯すだけの魔法【ライト】の魔法を行使した。



「見えたー! こんな感じなんだぁ」

「…………もしかして、オレのスキルを使って見たのか?」

「うん、そう。なんとなく、それでできる気がしたから」

「……魔導学系のスキルも魔法系統のスキル扱いだったのか。

 でもオレとラインが繋がってないとできないんじゃダメ──」



 ダメじゃないか?とブラットが言葉を続けようとする前に、スフィアは自分から【マジカルコネクト】のラインを切って、もう一度同じようにやってみれば──。



「自分だけでもできたよー」

「……凄いわね。こういうのは人のだろうと、感覚さえ理解できてしまえばいいのだから、当然と言えば当然なのかもしれないけれど」

「えー……」



 ということは当然ブラットが持っている魔導学系の、零世界でも使えるスキル【魔法再編】【魔法結合】【魔式摘出】【魔式挿入】【魔式記憶】【魔式参照】などが全てすぐに使えるということ。

 思考系のスキルは魔法スキルではないので無理だが、例えるなら魔導学をするためのツールを、どんなに天才であろうと全て自分で一から用意しなければいけないところを、スフィアの場合は既に出来合いの物が最初から用意されている──くらいのアドバンテージを有していると言っていい。


 現に同じタイミングで教わったはずのグリードは、その最初の魔法陣閲覧(ツール)を用意する段階で、まだ四苦八苦しているのだから。



「わーい、魔法の書き換えもできるようになったよー」

「…………やっぱり、俺もそういう力が欲しかった」

「「あはは……」」



 こればかりはブラットもアデルもグリードの言葉を否定できず、ただただ曖昧な笑みを浮かべてお茶を濁すことくらいしかできなかった。

 そこでアデルは少し強引だとは思いつつも、別の話題を切り出すことにした。



「そういえばあなたたち、わざわざ一人ずつ交代で戦場に出ているのよね?

 それはやっぱり、イグニスのお世話があるからということでいいのかしら?」

「そうだな。引き取った頃に比べれば大きくなってはくれたけど、まだ一人で留守番させるのは恐いし」

「おえはひといでも、だいじょーうだお」

「そんなわけにはいかないの。イグニスはまだ小さいし、ただでさえ虚弱なんだから」

「むぅ……」



 イグニスは最近では言葉がわかり話せるようになったおかげで、自分が完全にお荷物となっていることに不満を抱くようになっていた。

 口をツンと尖らせ、拗ねたようにソファの上で丸くなる。



「拗ねるなよ。お前だって絶対、兄ちゃんが進化させてくれるんだから。それまでの辛抱だ」

「そうだよー。お兄ちゃんに任せておけば、イグニスもビックリするくらい強くなれちゃう気がするな~」

「ほんと?」

「ああ」

「うんうん」



 グリードとスフィアが、そこはしっかりとフォローしてくれたので、ブラットも「もちろんだ」と肯定しておいた。



「で、なんでアデルは突然そんなことを?」

「実は今日、グリードやスフィアたちが戦場に行くときは、育児施設にイグニスを預けておけるように話をつけてきたの。

 そのまま隊としてやっていくのなら、早めに二人も互いがいる環境でやっていったほうが、イグニスが入ったときもスムーズにいくと思うのよ」

「そりゃあそうだけど、自分たちで引き取ると言った手前、託児所……子供の預かり施設みたいに使うのもなぁって」

「向こうは、そんなこと気にしてないわよ。

 それにグリードとスフィアの初陣での活躍の噂も届いているみたいだから、もはやイグニスが進化できないと思っている人もいないはず。

 だから育児部門は、それも今後の人類への投資として考えてくれているようよ」

「そうなのか」



 グリードやスフィアは、間違いなく優秀な戦士になると思わせる初陣を飾っていた。

 それだけ一次進化の身で【フィアーボイス】にあらがえたグリードや、雑魚ウルフやハイフォレストウルフ相手に力を示したスフィアが、国民たちにとって衝撃的だったということ。

 ならばこの二人が切り開いてくれた選択肢だと思い、ブラットはアデルの申し入れを受け入れることに決めた。



「イグニス、育児施設でお留守番してもらうことになるけどいいか? 嫌ならもちろん、断ってもいいぞ」

「だいじょーう! おるすばん、できう!」

「そうか。なら今後は三人の連携も試していこう」

「うん」「はーい」



 こうして次回からは、三人で戦場に出ることが決まったのだった。




 そんな一幕があり、零世界でも順調にベグ・カウ討伐の道を歩みはじめたブラットだったが、もちろんBMOでも着実に炎獅子討伐へ向けて進んでいた。


 その一つとしてブラットは今現在、エルヴィスの元で大事な試験を受け、その採点結果が出るのをドキドキしながら椅子に座って待っていた。そして──。



「ブラット」

「………………はい」

「──素晴らしい! 文句なしだよ。これにて君の学徒過程の修了を認めよう。

 それに加えて、私の名において君の学士への飛び級の推薦状も渡そうじゃないか。

 おめでとう、これでブラットは魔導学の最初の山を登り終えた」

「ありがとうございます!」



 ──ブラットはエルヴィスの厳しい授業で常に最優良を取り続け、最短時間で学徒での全てを学び終えた。

 さらに通常は三次進化以上の成人でしかなれない学士への飛び級の資格も、ちゃんとここで掴み取っていた。

 これでより強力な思考系スキルも、取得できるようになったということでもある。



「……それでその、学士過程もエルヴィス先生が見てくれるんですよね?」

「…………何を言っているんだい? ブラット。私は今更、降りる気はないよ。

 君が博士として魔導学者と堂々と名乗れるようになるまで、徹底的に魔導の粋を教え込んでみせようじゃないか! 共に魔導学の深淵を覗き込もう!」

「…………──はい!」

「いい返事だ! それでこそ、我が教え子だよ」



 最後まで面倒を見てくれると有難いお言葉をもらえたこと自体は嬉しくもあるが、それと同時に今まで以上に高度な授業についていけるかと不安もあった。

 けれどこれが強くなるための最短ルートなのだと、ブラットは覚悟を決めてエルヴィスに頷いてみせた。

 その顔にエルヴィスは大層ご機嫌な表情を見せ、隅の方で見ていたリーズは「暑苦しい二人ねぇ」と少し呆れた顔をしていた。




 ──と、こうしてブラットは学士への職業選択ができるようになり、炎獅子戦で使いたいと思っている【並列思考】もここで取得できるので、あともう少しでそれまでに取得したい思考系のピースは揃う。


 だが思考系スキルのネックとなるのは、HUN(空腹値)の減り具合。無計画に使い続ければ、あっという間に空腹で倒れてしまう。

 思考スキルの中でも【並列思考】系統は、初級でもそれが更に加速するようなので、炎獅子戦で使いたいなら、そこもなんとかしていく必要があった。



(炎獅子の前で何度も呑気に食べてる暇なんてないからね)



 そこでブラットはその対策も打つべく、エルヴィスがいるアルヒウム王国の王都の片隅にある、小さなボロの和菓子屋にやってきた。



「こんにちはー」

「おやおや、ブラットちゃんじゃないの。いらっしゃい」



 その店には老婆が一人、カウンターの向こう側に腰かけていた。



「昨日買ったカステラも、めっちゃ美味しかったよ!

 やっぱグレダばあちゃんの和菓子はどれも絶品だね!」

「ほおかい、ほおかい。そりゃ良かったわい。

 ほれ、そんなとこ立っとらんで、こっちきんしゃい」



 その老婆はブラットを見るなり、孫を見たときのような笑顔を浮かべ店内へ招き入れてくれる。



「じゃあ今日はこの小形羊羹(ようかん)を三つと──スペシャル腹持ち大福を一つちょうだい」

「ほっほっほ、ブラットちゃんはほんとに、スペシャル腹持ち大福が好きだねぇ」



 老婆が注文の品を包んでいる間も、ブラットはにこやかに他愛もない会話を楽しみながら、小さな羊羹三つと大福一つで『11,500b』支払い朗らか店を後にした。



(大福一個で一万とか、日本で売られてたらぼったくりだって絶対騒がれるよねぇ……。

 でもこれには、それだけの価値があるんだ)



 その大福の名は【スペシャル腹持ち大福】と読んで字の如し、満腹状態をもの凄く長い間、保ち続けてくれるスペシャルな大福だ。

 この大福は今のところNPCの老婆──グレダにしか作れず、しかも裏メニューで一人一日一個限りの限定品。

 注文できるようになるための条件は、店に頻繁に通い続け、合計一〇万b以上消費し、前に購入した和菓子の感想を毎回来るたびに伝えるという時間はかかる上に面倒ながらも、資金と時間さえあれば誰でも達成できるもの。


 ブラットはこの情報を知ってからずっとここに通い続け、つい最近ようやく仲のいい常連として認められ、裏メニューを購入できるようになったのだ。



(予行練習にも使いたいし、もっと買い貯めておかないと)



 最近ではよくお腹を空かせては回復させてと繰り返していたからか、ブラットのHUN評価は〝B〟に上がり腹持ちは少し良くなったのだが、それでも全力戦闘で思考系スキルを使い続けるとなると心もとない。

 炎獅子との決戦の日までに時間がある限り買い続けようと決めながら、次の予定をどうしようかと考えていると、不意にフレンドからメッセージが届く。



(ん? しゃちたんからだ。なになに~)



 内容を要約すると、次の進化のためにやっておきたいイベントがあり、それには四人まで助っ人を呼べるから一緒にやってくれないかというお願い。

 今決まっているそのイベント攻略メンバーは、『しゃちたん』をメインとして、助っ人枠に『はるるん』と『サクラ』と三人。

 こちらは、はるるんたちのクランがしゃちたんの進化の手助けをしているので順当なメンバーといえよう。

 そこで残りの二枠に、三人全員と仲のいい『ブラット』と『HIMA』に白羽の矢が立ったというわけである。


 なので当然、HIMAにも同じ内容のメッセージが飛んでいた。



(最近しゃちたんも忙しそうで、私も炎獅子の討伐計画で忙しかったから、HIMAとも遊べてなかったし…………ちょうどいいかな)



 あまり根を詰め過ぎても良くない。たまには息抜きがてら、普段とは違うことをするのも一興だと、ブラットはすぐに『OK』の文字をしゃちたんに送り返す。

 HIMAもほぼ同時に『いいよ!』と送り、ここに急遽五人でのイベント攻略が決まったのだった。

次は土曜更新予定です!

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