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ストーキングは愛の証!  作者: M・A・J・O
第三章 これが真実だ!

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第37話 あのカメラはやっぱり?

 ○月○日


 さっちゃん先輩、やっぱり変だよ。

 朝起きた直後にこの日記書いているけど、一晩考えてたけど、なんかおかしい。

 写真がいっぱいの部屋を見てもなんとも言わなかった……いや、むしろ嬉しそうだったのに。

 やっぱり、さっちゃん先輩はカメラの中を見ていて、引いちゃったのかも……

 さっちゃん先輩に嫌われたら……私は……さっちゃん先輩を○○してしまうかもしれない……


 ――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。


 ☆ ☆ ☆


「ぶつかった後に落ちてたのであわてて声かけたんですけど、間に合わなかったみたいで……それでゆっくり後をつけたといいますか……」

「なるほどなのです……」


 沙友理は少し申し訳なく思った。

 少女が声をかけたことに気づかなかったのではなく、華緒を優先して無視してしまったから。

 今更になって、なぜあんなことをしてしまったのかと後悔する。


 でも、あの時は華緒を優先したかった。

 華緒のことがなによりも大事だから。


「うーん、見覚えはあるけど誰のかわからないのですよね。本当にぶつかった時に落ちてたのですか?」

「え? はい。間違いないです……! ボトッという音が聞こえて、ちょうどその音がしたところにあったので……」

「な、なるほどなのです……」


 それならば間違えるはずがない。

 おそらく華緒のものだろう。

 となると、沙友理を盗撮していたのは華緒ということになる。


 いや、それは問題ない。

 ……ない、のか?

 それはひとまず置いておいて、目の前の少女にお礼を言わなくてはならない。


「ありがとうなのです。ここまでわざわざ来てくれて……」

「あ、いえ、いいんですよ。むしろ余計なお世話かなとも思っていたので……」

「ふふっ、そんなことないのですよ。あ、名前訊いてもいいのですか?」

「あ、えっと、私は……美久里っていいます!」


 その少女――美久里は恥ずかしそうに笑った。

 また会えるかはわからないけれど、会えたらいいなとは思っている。


「わたしは沙友理というのです。またどこかで会えたらいいのですね」

「はい! またどこかで!」


 美久里と挨拶を交わして、カメラを受け取る。

 沙友理は美久里の姿が見えなくなるまで見送った。とても温かい気持ちになったが、問題は山積みだ。

 まずは、このカメラをどう華緒に渡すか。


「……本当に、この中にわたしの写真があるのですかね……」


 好奇心がうずき、だめだとわかっていながらも電源をつけてしまった。

 おそるおそる画面を確認する。


 するとそこには、当然というか案の定というか、沙友理が写っていた。

 近所の人に挨拶をしている姿、理沙と仲良く本屋に入っていく姿、電車の中で居眠りしている姿……

 実にバリエーション豊富な沙友理の姿が写されている。

 やはりどれも輝いて見えて、自分が自分じゃないみたいに見える。


「すごいのですね……これも愛の力、ってやつだったりするのですかね……?」


 沙友理は自分で言って恥ずかしくなったのか、顔をいちごのように紅くしていく。

 ほどよく熟した沙友理は、その真っ赤な顔のまま家の中に入った。

 その間、ずっとカメラの画面を見続けながら。


「……やっぱり、いっちゃんはすごいのですね……」


 その画面を見続けていると、なんだか恥ずかしいような嬉しいような、不思議な気分になってくる。

 そしてその不思議な気持ちというのが、どんどん変な気持ちへと変わっていく。

 沙友理の思考回路は変なところへと行き着いた。


「わたしもやってみたら……なにか変わるのですかね……」


 そう口にした途端、沙友理の中で新たな感情が芽生えた。

 ――華緒の写真を撮りたい!

 沙友理は気づいたら走り出していた。

 スマホを取り出し、華緒のいる部屋へいそぐ。

 磁石が惹かれ合うように、そこが自分の居場所とでもいうように。

 華緒のそばへ一直線に向かう。


「いっちゃん……!」

「ふぁえっ!? な、なんですか……?」

「あ、ごめんなさいなのです……起こしちゃったみたいで……」


 沙友理がガラッと激しい音を立てながら華緒の部屋を開けると、華緒が飛び起きてしまった。

 後悔と反省の念が襲うも、起きてしまったことは仕方ない。

 なかったことにはできないのだから。


「それで、なにかあったんですか……?」

「あ、そうなので――」


 そこで沙友理は言葉を止める。

 写真を撮るということを、本人に話してもいいのだろうか。

 本人に言うのは盗撮ではなく、ただの写真撮影的なことになるのではないだろうか。


 それは、沙友理が求めているものではない。

 だから沙友理は、華緒に伝えるべきことだけを伝えようと思った。


「あ、えっと……さっきぶつかった子がこれを届けてくれたみたいなのですよ」

「え、え、ありがとうございます……え、あの、中にある写真見てないですよね?」

「み、見てないのです」


 とっさに嘘をついてしまった。

 なぜか嘘をつかないといけないような気がしたのだ。

 なぜかはわからないが。


「そうですか……それならよかったです……」


 沙友理の様子を特に怪しむことなく流す華緒。

 ひとまず安心だ。


「じゃ、わたしはこれで……」

「え、もう帰っちゃうんですか? もう少しいてくれても……」


 華緒は沙友理の制服の裾を引っ張って、「帰らないで」というアピールをする。

 だが、今の沙友理は自分のことでいっぱいいっぱいで、これ以上華緒といるとどうにかなりそうだった。


 だから沙友理は、葛藤しつつも華緒の手を引き剥がす。

 そして、動揺している華緒をおいて、逃げるように家へ帰っていく。

 心の中で何度も謝りながら走り続ける。


「お、ねーちゃんおかえ――って、え!? ねーちゃん!?」


 全力疾走をしたせいか、家に着いた時に沙友理は倒れてしまった。

 その後、理沙が手厚く看病していたとか……

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