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ストーキングは愛の証!  作者: M・A・J・O
第三章 これが真実だ!

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第34話 クリスマスへのカウントダウン?

 ○月○日


 さっちゃん先輩から遊び……いや、デートに誘われちゃった!

 どうしようどうしよう! めっちゃ嬉しい!

 何を着て行こう。どこに行こう。プレゼントとか用意した方がいいのかな?

 今からこんなにドキドキしてる……

 多分きっと、一生忘れられないクリスマスになりそう!


 ――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。


 ☆ ☆ ☆


「稲津華緒ちゃん、話があるのです」

「え、あ、はい……? なんでしょう?」


 沙友理は改まった様子で、華緒に話しかける。

 実は緊張しているだけなのだが、華緒にはそれが伝わっていないようだ。

 だがそれに構わず、沙友理は続ける。


「二人でどこか遊びに行きたいと思うのです!」

「は、はぁ……いいですよ? いつですか?」


 華緒はそんなに大げさに誘う必要があるのかという様子で不思議がりながらも、快く承諾した。

 すると、沙友理はパァーっと顔を輝かせて笑う。


「今月の25日、なのです!」

「25日……はい、わかりまし――え!? 25日!?」

「や、やっぱだめなのですか……?」

「いや、だめとかではなく……!」


 日付を指定された華緒は、ひどく戸惑っているように見える。

 やはりその日は予定があるとか、自分と過ごしたくないとかで断られるのかもしれないと身構えた。

 というより、断られるのが怖いというのが本音だろう。


「え、えっと、その……さっちゃん先輩から誘ってもらえるなんて思っていなかったので、すごく嬉しいです!」

「そ、そうなのですか……? それならよかったのです……」


 華緒は偽りのない笑顔を向けてくれて、沙友理はほっと安堵する。

 沙友理はまだ本当の意味で“好き”を理解できていないのだろう。

 華緒が沙友理のことをいかに好きで、どれほど想っているのか知ろうとしていないのだ。

 だからこうして勝手に一人で不安になっているということである。


 沙友理は、華緒がストーカーであることをまだ知らない。

 どれだけ華緒の愛が重いのか、沙友理はその狂気を知らない。


「あ、で、どこに行きますか? 私、イルミネーションとか見てみたいです!」

「おー、いいのですね。映画とかもいいかなと思ったのですけど……」

「映画も行きたいのです!」


 ワイワイキャッキャと、微笑ましい笑い声が響く。

 沙友理はこういう雰囲気を望んでいた。

 華緒とこうして笑いあって、一番近くにいて、一緒に楽しいことを共有したい。

 沙友理はそれだけで充分幸せを感じている。


「さっちゃん先輩……? どうしたんですか?」

「はっ! な、なんでもないのです。ただ、すごく幸せだなと思って……」

「な、なるほど。私もすごく幸せだなって思ってますよ……!」

「ほんとなのですか!? 嬉しいのです!」


 華緒と同じ気持ちだとわかった沙友理は、気持ちを抑えられなくなって。

 ――無意識に、華緒に抱きついていた。


「さ、さっちゃん先輩……!?」

「えへへ……いっちゃんのこと、大好きなのですよ」


 恋人らしいことをしてみたかった。

 そういう気分なのである。

 今ならできるタイミングだと踏んで行動に出ることにしたのだ。

 沙友理はいつどこでやる気スイッチがオンになるかわからない。

 だから勇気が出た時にすばやく行動するようにしている。


「わ、私だって、さっちゃん先輩のこと大好きですよ……!」


 華緒は狼狽している様子を見せる。

 でも嬉しそうな声色だったので、沙友理は充足感を覚えた。

 もうこのまま死んでもいいと思えるほど、幸せで満ち溢れている。


 今はクリスマスではないが、もう気分はクリスマスだった。

 このままデートしてもいいくらいだ。


「……このままサボっちゃうのもよさそうなのですね……」

「えっ……!?」

「あ」


 つい心の声がもれてしまった。

 変に思われないだろうか。

 なんだか沙友理は最近、そのことばかり気にしているようだ。


「……いいですね」

「ふぇ?」


 沙友理の声が裏返った。

 華緒は頬を紅潮させて沙友理を見つめている。

 華緒は、沙友理に何を期待しているのか。

 その答えはすぐにわかった。


「私、さっちゃん先輩とならなんだってできる気がします。いえ、なんでもします。だから、どこへでも連れて行ってください!」

「いっちゃん……」


 華緒が“それ”を望むのなら、先輩として――恋人として、応えるしかないだろう。

 沙友理はそう考え、華緒を学校から連れ出した。

 それには沙友理の願望も含まれているが。


 青空の下、二人は息を切らして走る。

 まさに青春の一ページという絵面だが、やっていることはただのサボりだ。

 それでも、二人は楽しそうに顔を見合わせる。


「楽しいのですね、いっちゃん!」

「はいっ! すっごく楽しいです……!」


 沙友理と華緒は、どこに行くか全く決めていない。

 それでも、今こうして二人で手を繋いで走っているという事実が重要なのだと思う。


「こんなの誰かに見られたら、ただじゃすまないのですよね……」


 沙友理はそう呟くも、足を止めない。

 今隣に、愛おしい人がいるから。


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