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崩れ落ちるなにかは、黒い霧の渦を巻き起こす。その渦に血が巻き上げられ、どこかへと消えていく。
赤と黒の世界に金眼の二人と真っ白な犬が残された。
「やったね、ユウリ。意外と大したことなかったね」
「いや、ジンがいいタイミングで飛び込んでくれたおかげだ。少しでもずれてたら、僕が噛みつかれていたかもしれない」
いいこいいこ、とイノはジンを撫でる。ジンは気持ち良さそうに喉をならした。
そんなのどかな光景をユウリはいつまでも眺めていたかった。けれどもいつまでもこの世界にいるわけにはいかない。ジンともお別れだ。
「戻ろう、イノ。長い時間いると僕らが侵される」
「うん、そうだね」
イノはじゃあねとジンをもう一撫でし、ユウリと眼をあわせた。
金色と金色が輝く。
二人は眼を閉じ、再び目を開けると世界は色づいていた。
猫は動きだし、刀とジンはどこかへと消えていた。
もちろん血のあともなにもない。