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建ち並ぶ一般的な住宅を両側に挟み、車がどうにかすれ違える狭い道に、『理由』の痕跡が続く。
二人はびしょ濡れになりながらそれを追跡する。
肌に触れるシャツの感触を不快に感じながら、それ以上に黒い霧の濃さに嫌になる。
こんな『理由』を、人はいつまで持ち続けるのだろう。いくら彼らが消してしまおうと、次から次へとそれらは生まれ、育ち、世界は黒霧に満ちていく。ユウリはだからこそ、『理由』を消すことに積極的になれなかった。イノは一体なぜ、こんなにも生き生きと『理由』を追えるのだろうか。
いくつめかの角を曲がったときに、それは突如として現れた。黒霧の大きな塊。その周りには稲妻が走るようにパリパリと光が走っている。
「みーっけ」
イノは楽しそうに言った。おもちゃを見つけた子供のようだ。
「これはなかなかだね、ユウリ」
「ああ。気をつけろよ。あと僕の指示に従え」
一瞬不服そうな顔を見せるものの、はいはいとイノは同意を見せた。
「じゃあ、行こう」
二人は同時に目を閉じる。そしてもう一つの目を開ける。赤と黒の世界に輝く金色の二対の目は、狩人のそれのように、鋭く凍てつく輝きを放っていた。