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re:you  作者: 傾考
3/7

2

「最近の調子はどうなの?」

 嫌らしい笑みをさらっと消して、イノはユウリに尋ねた。その言葉が何を意味しているのかは、ユウリには分かっている。

「別に僕は自分からやつらを探してはいないから。普通に暮らしていれば、案外見つけずに済むものだからね」

「ふうん。そんなもんですかねぇ」

 イノの言葉はどこかそっけない。

「そっちはたくさん消してるってわけか」

「まあねぇ。わたしにとっては趣味みたいなものだから」

 あっけらかんと応えるイノの姿に、ユウリはため息をつきたくなった。

「自分の存在が消されるかもしれない危険なことだぞ。そんな簡単に考えるのはどうかと思う」

「なにぃ、心配してくれてんの?」

 ニヤニヤ言う彼女の頭を叩いた。パチンと小気味良い音が雨音に混ざる。

 いつしか小雨は本降りとなり、傘に当たる雨粒の音も大きなものとなっていた。傘の端から滴る雨水が、袖や肩を濡らす。スニーカーの中にも既に大分染みてきていた。

 人通りが少ない住宅街。二人の歩く姿だけが、煙りに沸き立つ亡霊のように浮かぶ。

 こういう日はよくない。

 二人はもちろん直感的に感じていた。

 そしてそれを目撃した。


 十字路の曲がり角の電柱。

 そこに残された二人だけにしか見えない痕跡。

 漆黒の霧が電柱の周りをフヨフヨと取り囲んでいる。

 負の霧。

「あーあ。見つけちゃったね、ユウリ」

「なんだよ、お前は嬉しいんしゃないの?」

「うーん、まあね。でも一人で見つけたかったなぁ。独り占めって最高の響きじゃない?」

 やれやれと頭をふり、二人はその電柱へと近づいていった。

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