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4日目 雨が降ってきた一回休み

誤字修正の報告助かります。ありがとうございます。

 湿った空気を感じて目が覚めた。

 雨が降ってる、しかも雷雨だ。


 狼は横穴の入り口から空を眺めていた。

 俺が起きたのに気が付いた狼は空を見ろと言わんばかりに首を空に向けた。


「雨だね」


 ゴロゴロ鳴る空を見ながら呟く。

 俺の呟きに狼は鼻息で返事が返ってくる。そういえば、狼が吠える所を聞いた事がない気がする。

 

 空を見上げる狼を見て、狼が言いたいことが分かった気がする。恐らくだが雨で探索行けないね? みたいな感じなんだ。多分。

 まあ、次の行動で違う事は分かったけどさ。


 突然、鼻をひくつかせ起き上がり森に消えていく狼。そのタイミングで空から稲妻が地上に走り、遅れて轟音が森に響き渡った。

 程なくして狼が、黒焦げになったダチョウのような生き物を咥えてきた。

 満足げな顔を見ると雷に撃たれて瀕死だったダチョウを狩猟してきたんだな。

 しかし、雷が落ちる前に動いていたところを見ると、狼には雷が落ちる場所を予測できるのかもしれない。


 毎度おなじみ、涎でギトギトの生肉を狼にこんがり焼いてもらった。

 血生臭いのはもう慣れてしまった。


 食事を終え、空を見上げる。

 今日一日止みそうにないな。探索は止んでからになりそうだ。

 

 そういえば、この世界に来てから不思議に思っていたけど身長と共に衣服も縮んでいたんだ。普通なら体が縮むと衣服はブカブカになる筈。それなのに衣服も縮むというのはあり得ない。

 俺が着ている服は、ソロキャン時でいつでも行動できるようにジャージだ。この世界に来る前と同じ服なので縮んだというよりも、体形に合わせて調()()()()()。という事になる。

 そう考えると、10歳まで体を戻し衣服を調整し、俺をこの森に捨てた犯人がどこかに存在するという事になる。

 

 異世界転移・転生の物語の常識で行くと、神や悪魔などの空想上の者に移動させられている。たまに超常現象で。

 神や悪魔などの場合、若返りや性転換などで移動したりするが、俺はこの何方にも出会っていない。

 超常現象の場合、年齢が戻るという事は絶対とは言えないが無いはずだ。

 もしかしたら子供に憑依した、という可能性も考えたが湖で顔を確認した時に子供の頃の自分だと確信している。

 

 まあ、考えたところで何かが変わるという事はないのだが。娯楽の無い横穴に何もせず居るのは初めてなので、ついつい考え事をしてしまう。


 狼はダチョウを食べて満足したのか寝ようとしては体勢が気に食わないのか何度も起きて位置を変えていた。


 こいつはお気楽でいいな。


 こちらに視線に気づいたのか、なんだ? みたいな顔をする狼。

 なんでもないと笑うと、体勢が決まったのか眠り始めた。


 どれだけ空を眺めていたのか分からないが、雨が弱くなっている気がした。雷も収まっている。近いうちに止むかもしれない。

 少し気分転換に雨の森の中を軽く探検することにした。狼が寝ているので横穴が見える範囲内を探索する。


 どこから現れたのか、1メートルはあるカタツムリが木に張り付き移動している。その木の先には鳥の巣らしき物があり、巣にたどり着いたカタツムリは中を確認すると体から触手のようなものを伸ばして、俺が良く知る大きさの卵を3つ掴み殻に近づける。


 バクン。


「へ?」


 螺旋状の殻が中心から口の様に開き卵を丸のみにした。その際、眼が開いた。殻の口上についた眼が。


 そっちが本体かよ!?

 あまりの驚きに声が出かけたが、どうにか抑えた。

 見つからないように次の対象物を探しに移動する。


 次に見つけたのは蛙だ。10センチ程の普通のサイズの蛙を見つけた。

 この世界でやっとまともな生物を見つけたとそう思いました。ええ、思いましたよ。その小さな蛙を見ていると、先ほどにカタツムリが表れて触手をのばした。


 カタツムリは食われた。


 今見たことをありのままに話すと、蛙にカタツムリの触手が伸びる。反応を示さない蛙。触手が蛙を捕獲、次の瞬間景色と同化していた蛙の本体がカタツムリを丸のみにした。

 つまりだ、小さな蛙は2メートルを超える蛙の頭に生えた提灯鮟鱇と同じ誘因突起だったんだ。

 まんまと餌に誘われたカタツムリは蛙の思うつぼだった。

 危うく俺が引っかかる所だった。捕まえようとしていたからな。


 少々危険を感じて来たので横穴に引き返す。

 朝の森や夜の森は経験していたけど雨の森は異常だ、弱肉強食というのが強調されてる。

 雨の日は大人しくしよう。


 急いで横穴に帰ると狼が居なくなっていた。

 俺がいないことに気が付いて探しに行ったのか? それなら悪いことをした。戻ってきたら謝らなとな。


 そう考えていた事もありましたが、やはり無しで。


 帰ってきた狼。その足元には先ほどの蛙が死体となって横たわっていた。

 やはり狼はこの森で一番強いのかも。

 ドヤ顔を決めた後に咀嚼音を立て食べ始める。


 新たな食事を探しに行っただけかよ。

 

 蛙を食べながら解体している狼は良さげな場所を俺の前に置いた。

 そういえば蛙肉って淡白で美味しいと聞いた事がある。それに涎臭いが血生臭い感じはない。コレは期待できるか?

 狼に焼いてもらい齧り付く。


「う、うまい」


 狼は火の火力調整が苦手なようで毎回のごとく黒焦げだが、焦げた身の下からプルンとした白身が咀嚼するごとに旨味を引き出している。

 蛙肉は鶏肉と聞くが、この蛙肉は鳥ガラスープのような旨味を持っている。

 

「……は!? いつの間に」


 余りのおいしさに気が付けば食べ終えていた。

 

 ボトッ。


「狼……」


 ニヤリと牙を出し笑う狼。

 既に焼かれた蛙肉が目の前に置かれている。

 

 なぜだろう。初めて狼が頼もしく見えた気がする。

 

 新たな蛙肉に齧り付き、満足した俺は探索の疲れかウトウトしていた。

 俺の様子に気が付いた狼は仕方がないな、と言わんばかりに体を差し出してくる。


「ありがとな」


 狼を枕に目を閉じた。



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