3日目 異世界の動物は口から何か出る
枕にしていたモフモフが無くなって居ることに気が付き、目が覚めた。
あれ? 狼がいない。食事でも探しに行ったのか?
一人取り残され、横穴から森を眺め少し探索してみようかと立ち上がり、穴から出る。
差し込む日差しを浴び凝り固まった筋肉をほぐす様に伸びをする。
幼い体だけど敷物もない地面で寝るとやはり体が痛くなる。
ソロキャンの時でもマットを敷いて寝ていたから流石に無しはキツイ。
とりあえずの目標は寝具をどうにかする、だな。
森の中をちゃんと見るのは何だかんだ初めてかも。
大体は咥えらえてるか、枝を拾うときに地面ばかり見てたからしっかり見る事はなかったな。
よく見るとあまり地球の植物と大差ないな。……すまん前言撤回だ、赤い花と青い花がお互いの花弁を擦り合っていた。花同士の交尾? 受粉してるの? あ、こっち観た、ズボッと根っ子を引き抜き逃げていく2匹? 2体? の花たち。
ズンズンと揺れと音が聞こえそちらを見ると5メートル越えの巨大な亀が歩いていた。
陸亀にしてはデカすぎ。
甲羅に木が生えてる、重くないのか?
この世界はアメリカみたいにビッグだな。何もかもスケールがデカい。
そして何より狼が強い。
森を危機感ガン無視で彷徨っていたら狼を発見。
狩りの最中で相手は狼と同じかそれ以上の大きさの熊だった。
腕が4本ある。
熊の4本の腕が狼を抱きしめるように襲い掛かるが、狼は熊を飛び越え回避。
そのまま空中で反転して熊の腕の一本を爪で切り落とした。
悲鳴を上げる熊は出血が収まらぬ元腕の場所を白い息を吐いて止血した。
「おまえも口から何か出るのかよ……」
凍らせて止血した熊は残りの3本の腕を地面に叩きつける。
砕け散り、地面が揺れる。俺転ぶ。
狼は熊の行動を何してんだ? みたいな顔をして残像を残す程の速さで、熊の首に噛みつき、捻り折った。
倒れた熊に前足を乗っけて勝どきの遠吠え。
俺、あんなのに保護されてるの? 頼もしいけど怖い。
狼は討伐した熊を咥え、持ち上げようとしたが持ち上がらず、引きずり出した。
まあ、狼と同じかそれ以上にデカいしな。
ピクッと耳が動き、鼻をヒクヒクさせこちらを見て、見られた! 見たいな驚きの顔をする狼。
バレたので大人しく狼の元に向かい、よくやったみたいな感じで頭を撫でる。
あれ届かない、ちょっと頭下げろ。よしよし。
熊肉は堅かったと言っておこう。
運ぶのが大変だろうからその場で食事、狼が熊肉を食い進みよさげな場所を俺に渡す。
勿論涎付きだ。
それを火で燃やしいつも通り血生臭い肉を頬張った。
狼の背に乗り昨日の湖に向かい水分補給。
ミネラルたっぷりな水を飲み満足したので今日は狼の背に乗ったまま森を探検することにした。
地球と異世界の違いというのが分かりやすく、地球の木は水がある場所に向かい根を伸ばすのに比べ、異世界の木は水に向かって動き出す。
少し乾燥している場所を見つけた時に周りの木がいきなり動き出して、驚いた。
地球だと小さい虫などが森とかですぐ見つかるが、異世界の森に虫がいない。
いや、いることは居る。
ただ、小さいと言えないだけだ。ダンゴムシのような虫が居たんだが60センチはある。
黒曜石みたいなテカリがあるダンゴムシが岩場にびっしり付いてて岩だと最初は思った。
花は虫の力を借りず自分で受粉しに行くしな。
狼に乗って冒険しまくって分かったことが一つ。
ここはどうやらクレーターのような場所で崖が森を囲っていることが分かった。
中心があの湖で、住居が崖にできた横穴。
この森はそこまで広くはないようで住居から反対側の崖まで狼が50キロぐらいの速度で走って30分程度でたどり着いた。
あれ? 時間でいうと結構広いな。
まあ、数時間あればこの森を一周できるわけだ。
崖自体は直角ではないから登れなくはない。
というか狼に乗ったまま登った。
山の火口のような場所かと思ったが、森が陥没してできたような場所であることが分かった。
隕石か何かが落ちたのかもな。
あのクリスタルが隕石だった可能性があるな。ちょうど中央だし。
そんな訳で今日の探索は終わり、明日崖上の森を探索することにした。
目標は人里を探す。
この森にはなかったけど果物などの肉以外の食材のゲットを目的に明日は頑張る。
狼も探索の手伝いをしてくれるので、いい結果が得られるだろう。
今日も狼を枕に眠りについた。