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2日目 デジャビューからの水にぴょーん

 引きずられている感覚で目を覚ます。見ると狼に襟を咥えられ引きずられていた。


 おやデジャビュー?


 確か昨日も同じように引きずられて横穴に連れていかれたんだよな。それで、横穴で一日を過ごしたわけだ。

 何故また引きずり回されているんだ? というか狼の身長は10歳まで若返った俺よりデカいのだから引きずらないようにできると思うのだが? 

 

 流れる景色を見ながら成すがままに。景色の移り変わりを見ていると何か反射してチカチカするものが見えてきた。


 なるほど。


 確かに昨日から食べ物を口にしていたけど水は飲んでなかった。と思いながら目の前に広がる湖を見た。


 のどが渇いてると考えてここに連れてきてくれたのか。

 だけど俺が起きてから連れてきてもよくね? っと口に出さずにそう思った。


 ポイッと昨日と同じように捨てられ、狼は森に消える。

 また食料探しか。


 湖のこの水が飲めるものなのか確認する。

 掬った感じ濁ってはいないし湖自体透き通っている。無臭であるから汚染もされていないと思う。

 舌をつけてみた感じ、刺激はないので安全だろう。

 本当なら熱したいが、火起こし出来る狼が出払っている為、諦めて真水のまま飲む。


「う、うま!」


 思わず叫んでしまった。

 だが、声が出るほどこの水がうまい。何というかミネラルがミネラルしてる!

 もう一杯掬って、もう一杯…もう一杯……もう一杯。


「うお!?」


 さらにもう一杯行こうとしたら襟を何かに掴まれ体が浮く。

 犯人は勿論狼だ。


 いつの間に帰ってきたのか、よく見ると呆れたような顔で見ていた。

 どうやら水を飲みすぎだと言いたいらしい。


 ゆっくり降ろされ狼の横を見ると、2メートルある巨大な兎が横たわっている。


 この世界の生き物全体的にデカすぎない? 


 昨日と同じように咀嚼音を立てながら兎肉を食らう狼。

 途中まで食った後、肉を引きちぎり俺の前に兎肉を置いてくれた。


 また、涎が……。


 引いている俺を見た狼は、しょうがないな見たいな顔をしてから火を吐いて兎肉を焼く? というより燃やす。


 違う、そうだけどそうじゃない。


 こんがり焼けた肉を拾い上げて齧り付く。うん、血生臭い。

 

 湖の畔は草が生い茂る草原のようで食休みで寝転ぶとなかなか気持ちが良い。

 特に枕代わりの狼の腹。

 狼の寝息でお腹が上下に揺れ、体を預けている俺の体もまるで揺り籠の中の様にゆったりと揺れ、うとうとしてくる。

 心地が良い風が吹き、水面が揺れる。反射する光が眠りを妨げてくる。

 

 起き上がり湖を眺め、このまま余生を過ごすのも悪くないかと頭を過るが、自分が若返っていることを思い出し考えを捨てた。

 異世界に迷い込んで2日目となる、昨日はあまりの出来事ですぐに寝てしまったが、今日は陽はまだ真上にある。これからの予定を立てるのもいいかもしれない。


 目標としてはまず人里を探すことだな。

 この世界がどういう世界なのかわからないが人はいるだろう。


 いるよね?


 居る方向で文明レベルがどの程度かも知りたい。

 もし地球と同じ文明レベルだと10歳の俺では職を探すのは難しいだろうし、異世界でお馴染み中世だと職というか見習いかスラムだろうな。

 最悪奴隷か。


 狼のような生物が居るなら冒険者とかハンターみたいなのがいる可能性があるから、そういうのもいいかも。


 ……火を吐く狼と戦う? やはり無しだな。


 この世界に無いものを作って売り込む? オセロとか将棋とかチェスとか、知識チートでお馴染みの遊具を売る。

 

 オセロしかルールしらない。


 料理とか? ある程度は作れるけど、パスタとかうどん、そば? 乾燥したものを茹でるしか知らねぇ。

 マヨネーズ? スーパー行ってください。

 料理チートも無理そう。

 技術も無理。

 内政? 何それおいしいの?

 やはりここで余生を過ごそうかな。


「あ~もう! よくわからん!」


 元々只のスーパー店員の俺が異世界に来るのがおかしいんだ。正義感もなければ、知識や技術もない。殺人鬼と言う訳でもない、しがないスーパーの店員だ。

 こういうのって凡人でも何かしらの何かを持つ奴が異世界に来るだろ? 


 なんで俺なんだ。グスン。


 年齢が戻ったせいか感情の制御が甘いせいで涙が出てきた。


「なんだよ~、慰めてくれるのか? ……!?」


 狼が襟を咥え、俺がプラプラ。

 そして勢いよく湖に向かって投げられた。


 ザブーンっと水しぶきを上げ水中に飛び込まされた。


「ぶはぁ! 何する……うおぉ!?」


 文句を言おうとしたら、直ぐそばに狼が飛び込んできた。


 その衝撃でまた水に飲まれた。

 衝撃で少し流され足が付かない場所まで来たが、水面から水中を覗くと湖中に巨大なクリスタルが地面に生えているのが見えた。


 あれ売ればいくらぐらいになるんだろうか? もしかして狼はこれを俺に売れと言いたかったのか? 


 優雅に犬かきをする狼を見てそれは無いなっと思った。遊びたかっただけか。

 そもそも泳げるけどだ潜水はできない。それに採取できるものもないし。


「なんか、考えるのも馬鹿らしくなってきたな」


 湖中にあるクリスタルを見てそう思ってしまった。

 狼の方を見て、ニヤリと微笑む。


「くらえ!」


 水面の水を大きく腕を広げ引き寄せるようにして狼にぶっかけた。

 いきなりの行動に狼は驚いたようだが、こちらの意図に気づいたのか仕返しと言わんばかりに、前足を振り下ろす。


 どんだけ力が強んだよ。


 軽い波が俺を襲いかかる。

 それを潜ってやり過ごして、もう一度水をかける。

 

 陽が落ちてくるまで続いた水遊びは狼の勝ちで終わった。

 体格差で負けたんだよっと思ったが、狼のドヤ顔が面白かったので良しとした。


 びしょ濡れのまま狼の背に乗せてもらい住処の横穴に帰り、枯れ木を集め火を起こしてもらい服を乾かして狼を背に目を瞑る。


 もう自由にその場のノリで生きよう。


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