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1日目 狼に引きずられた事はあるか? 俺はあるぜ

よろしくお願いします

 体が引きずられている感覚に襲われて目が覚めると、そこは森の中でした。


 意味が分からない。


 さらに意味が分からないのは狼が服の襟を咥えて、俺を引きずっているという現実だ。狼は日本にはいない筈。

 ここで変に動いたり騒いだりすると食い殺される可能性があるので、落ち着いて今の現状を考察する。


 まず、俺は趣味のソロキャンを自宅の裏山でしていた。

 子供のころから駆け回っていた裏山だ、遭難する事は100%とは言えないが自然災害に巻き込まれなければ遭難することはない場所だ。

 テントを張り、木々の隙間から見える星々を眺め眠りについた。

 これが最後の記憶。

 つまり寝ている間に何故か日本にいる筈のない狼に捕獲された訳だ。


 もしかしたら生き残っていた狼がいたのかもしれないと、考えもしたがそもそも狼は3メートルも無いだろ。

 デカすぎだ、なんだ3メートルって。


 あともう一つ、現状の事を優先しようと思っていたが一つだけ言いたい。


 なぜ俺は縮んでいるんだ? 黒の組織の取引現場を知らず知らずの内に観てしまっていたのかも知れない。……そんなわけあるか!? どう考えても子供の体になっている。手足の長さからすると10歳ぐらいか? 25歳の体からいきなり10歳の体って違和感が凄いな。流石は名探偵だ。


 ん? いつの間にか止まっている。住処についたのだろうか? 周りを見渡すと洞窟というか横穴? に連れてこられたようだ。

 ポイッと投げられると、狼は何故か満足そうな顔をして森の中に駆けていく。


「ええぇ。どういう事?」


 あまりの事に声が出てしまってが、狼は先ほど駆けて行ったので聞こえて居ない筈。

 今の内に逃げるか? だが何が起きているのか理解できない以上、迂闊に森に逃げれば彷徨うことになる。

 あんな大きな狼がいる場所だ、もっと危険な生物が居ても可笑しくないだろう。

 何故そんなことが言えるのか? 大分前から思ってたがここ日本どころか地球じゃねぇ。異世界ってやつだ。


 ここが異世界だとすると地球の常識は通用しないだろう。

 いくらソロキャンが趣味でサバイバルの知識を少し持っていたとしても、それが通用するのは地球の環境だけだ。地球には地球の、異世界には異世界のサバイバル方法がある。

 それに大人の体ならいいが何故か今は子供の体だ、森を彷徨うだけの体力はない。

 

 しばらく考えたが結局この横穴に残るしかないという事だ。

 土地勘のない場所でこの横穴はそれだけ安全という事だな。

 まあ、狼の巣穴だけど。


 ガサガサと音が聞こえ、反射的に森を見ると狼が戻ってきたようだ。鹿を咥えて。

 狼は咥えた鹿を俺の横に投げ捨てると、そのまま咀嚼音を立て食べ始めた。

 何を考えているんだこの狼は? 俺を食べる気でここに連れて来た訳ではない? そういえばどこの国だか忘れたが狼に育てられた少女というのを聞いた事がある。そんな感じで連れて来られたのか?


 ボトッ。


 目の前に鹿肉が落とされていた。

 横を見ると狼が食え見たいな瞳でこちらを見ている。


「くれるのか?」


 何となく聞いてみた。

 普通なら通じないが何故か通じる気がしたからだ。

 やはりと言うか、俺の問いに狼は頷いた。

 話が通じるなら早いな。


「なあ? なんで俺を連れて来たんだ?」


 ボトッ。


 鹿肉が目の前に増えた。

 コレは理解していないな。俺の視線や身振り手振りで何となく理解している感じだ。


 鹿肉を見る。歯型と涎が付いた生肉だ。

 鹿肉って生で行けたっけ? 怖いから火で炙りたいが……チラッと狼を見ると食わないのか? という感じで見てくる。


 出来るかわからないが火を起こしてみるか。 

 立ち上がり横穴から出て枯れ枝を2本持ってくる。木同士を擦り摩擦で火を起こす方法。

 

 結論から言って無理だった。

 火起こしの方法が今一理解できていないからだ。

 ソロキャン時はライターなどの火種を作れる物を使っていたから、自然の物だけで火を起こす方法はやったことがない。サバイバルの方法を調べた時に軽く目を通した程度だ。それに力が足りていない。

 仕方がない生で食うかと決意したら、肉の焦げる匂いが漂ってきた。


「は? いや異世界だからってまさかの……」


 狼が火を吹くのはないと思うんだ。

 異世界は異世界でもファンタジーの方か。


 狼を見るとこれでいいか? みたいな感じで見てくる。

 唖然としたが頷いて返事をした。


 肉は血なまぐさかった。


 食べ終わり狼を観察することにした。


 全長3メートルほどで、真黒な毛皮が特徴だ。瞳は真っ赤で、厳つい顔だが不思議と恐怖はない。食事を貰ったからというと俺がチョロく感じるが、動物が食事を与える場合は大体心を許している相手だ。 


 さらに観察を続ける。


 漆黒といえる毛皮は触れた感じ、刃を通さない程の耐久力はありそうだ。だからと言ってカチカチと言う訳ではなく程よいモフモフ感がある。ケモナーではないがモフモフは個人的に好きなので満足。


 足元に見え隠れする爪も同じく漆黒で、恐らく夜に紛れ狩りをするハンターなのだろう。

 さらに口から火を吹くと……友好的じゃなければ近寄りたくねぇ。


 もう分かると思うがこの狼と触れ合えるだけの絆? 心を開いて貰っている。

 外も暗くなり追加で集めた枝に火を吹いてもらい、焚火をする。


 何が起きてこうなったのかは知らないけど、俺はこの世界で生きていけるのか? それが一番の悩みだ。

 今は狼に世話されているが、ずっと森に居たいかと言われれば折角の異世界なので冒険したいという願望はある。


 取り敢えずの目標は明日も生き延びることだな。


 

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