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08:作戦



Japan VCSO Japan branch office



 最上階にある部長室に集まる面々。ダグザ達と日本支部が合流してかなりの大所帯となっている。しかし、VCSOを敵に回すのであれば、これだけでは少ないはずだ。

 ダグザは金色孔雀のデスクでパソコンを開きながら、頭は素早く今回の作戦を考えている。パソコンにはダグザなりに纏めた様々なデータがある。もちろんここにいるホーリナーのデータも。


「とりあえず、今回の阿修羅奪還にあたって4つの班に別れてもらう」


 ダグザはパソコンから目を離さずに声を出した。


「一つは正面突破、もう一つは挟み撃ちによる後方からの隠密。そして、実際に阿修羅を奪いに行く班。最後の一つは日本支部の護衛にまわってもらう。

 今回の作戦は向こうも想定の範囲内だ。だからこの隙に日本支部を潰すのもあり得る。

 当然、こちらが戦力の増強を果たしたように、向こうも戦力の増強をしている。気を抜いたら殺られると思え。

 正面突破の班は戦力重視。後方からの隠密には機動力重視。阿修羅奪還には連携重視。日本支部の護衛には防御力重視でいく」


 ダグザは一息吐いて、椅子の背に身を預けた。


「班は、正面突破にはタナトス、緊那羅、アルテミス、ククルカン、ズルワーン、摩和羅女、摩侯羅迦(まごらか)に頼む」


摩醯首羅(まけいしゅら)、俺は楽しめるのか?」


「あぁ、気張れ」


 摩侯羅迦は犬のように4つ足で座り、犬歯を剥き出しにして笑うまさに犬。摩醯首羅はフードにサングラスに襟の高いジャージ、顔はおろか表情が全く見えない男性だ。


「ちょっと待って」


 緊那羅はダグザに顔を向ける。


「摩侯羅迦と連携取れるのなんていないわよ?」


「摩侯羅迦の能力は把握している。コイツにはいの一番に戦場を掻き乱してもらう。大丈夫だ、今回の任務はほぼ二人一組、纏まって戦う必要はない」


「なら問題ないわね」


 緊那羅はその言葉を聞いて視線をズラした。摩侯羅迦の戦い方は一番不規則かつ野性的。故に摩侯羅迦と連携が取れるのは摩醯首羅のみ。


「次は後方からの隠密だ。コレは機動力を重視して、帝釈天、沙羯羅、モリガン、メルクリウス、ニヨルド、ユスティティアだ」


 ニヨルドはユスティティアを見ると笑顔を見せた。ユスティティアは軽くお辞儀する。


「よろしくね!ユスティティアには怪我一つさせないから。なんならコレから息を合わせるために練習しようか?」


「練習、だけだよ?変な事は嫌なの」


 ニヨルドは本心を読まれて少し凹む。


「日本支部の護衛は金色孔雀、迦楼羅(かるら)毘楼博叉(びるばくしゃ)毘楼勒叉(びるろくしゃ)だ。全員防御力には優れている。そして、日本支部の地の利をを生かしてもらう」


 金色孔雀と迦楼羅だけでかなりの戦力だ。そして毘楼博叉と毘楼勒叉は双子。ムスッとしている方が毘楼勒叉、笑顔の方が毘楼博叉。この双子の連携は、仮にヘリオスとタナトスが組んだとしても五分の戦いが出来る程。


「最後に阿修羅奪還の班。連携重視に加え突破力から、ヘリオス、祝融、俺だ。

 恐らく今のヘリオスの力を知っているのは俺らだけ。そして、ヘリオスの馬鹿から願いだ」


「今度こそは俺が阿修羅を守りたいんスよ。みんな阿修羅の事が大事なのは知ってるッスよ。ただ、どうしてもこの力を阿修羅に守る事に使いたいんスよ。

 どうかお願いッス!俺のわがままに付き合ってくれないッスか!?」


 ヘリオスは頭の上で手を合わせ、思いっきり頭を下げた。全員が全員薄く笑う。それは全員がヘリオスの阿修羅に対する想いも、阿修羅がそれを望んでいるのも理解しているからだ。

 タナトスは、笑いながらヘリオスの頭を思いっきり押した。


「そんなのテメェが言わなくてもそうさせてる」


 ヘリオスは体を起こすと笑顔だった。全員明日には戦場に立っているであろう。しかし、そこにいるほぼ全員が笑っている。

 ほぼとはユスティティアだけは暗い表情を浮かべ、俯いている。それに気付いたのはニヨルドのみ。




 解散した後、重い足取りのユスティティアの背中を叩くニヨルド。


「ひっ!?」


 ユスティティアはビックリしながらニヨルドを確認し、ため息を吐いた。

 ニヨルドはそのままユスティティアの手を引くと、エレベーターに乗り込んで一階のボタンを押す。


「ほら、もっと笑顔!」


 ニヨルドはユスティティアの前で笑顔作る。しかし、ユスティティアの表情は暗く、決してニヨルドが望むような表情は作り出せなかった。

 一階に着くと再び手を掴んで歩き出すニヨルド。ユスティティアにはその行動が理解出来ず、ただ必死に着いていくしか出来なかった。

 日本支部の敷地を出ても歩き続けている。困惑しながらも、どうしてか手が離せない雰囲気を醸し出している。


「何で元気ないの?」


 ニヨルドは唐突に言葉を発した。少ない言葉だが、ユスティティアにはそれだけで充分だった。

 そして気付く、みんなが笑顔の中で暗い雰囲気をしている、ユスティティアに気付いたニヨルドなりの優しさ、それがこうやって外に連れ出す行為なのだと。


「明日になったらアタシは神選10階の敵になっちゃうの。今まで仲間だったのに、明日から敵だと思うと………」


 その先の言葉を呑み込んだ。


「でも前までは敵だったのが今は仲間なんだよ?僕だって悪魔やってたけど今はみんなと一緒にいる。

 大切なのは誰とどこにいるかじゃない。自分がどうしたいかだよ?」


 ニヨルドの満面の笑みに応えようと口角を上げるが、ぎこちない笑みになってしまう。それにより、ニヨルドは整った顔を歪める。


「ダメ?」


「ニヨルド君は悪くないの。ただ、アタシが神選10階に会ったら戦えるかどうか」


「それなら大丈夫!」


 ニヨルドの顔は再び明るくなった。


「僕が神選10階なんかやっつけちゃうから!」


「でも―――」


「神選10階なんかに負けないよ。強くなったのはヘリオスだけじゃない、僕だってみんなに負けないくらい強いから。

 僕の力は牙でもあり鱗でもある。だから、僕はユスティティアを守る鱗になるよ」


 ユスティティアは呆気に取られる。それもそのはず、さんざんズルワーンに注意しろと言われた。ニヨルドの女性遍歴は空白の3年間で異常だったらしい。

 しかし、ユスティティアにはそうは見えなかった。仮にコレでズルワーンが正しかったのなら、ユスティティアは自分の見る目が無かった。そう思わざる負えない程だった。


「ニヨルド君を信じる」


 ニヨルドは笑顔を作り、それに応えるユスティティア。後悔は消えないものの、前に進む勇気は付いた。

 9話目にしてやっと主人公が出て来そうな気配がある、なんとも進行が遅い作品ですみません。

 そもそも誰が主人公なの?というダメ出しが出そうで怖いです。作者も書いててニヨルドが主人公なんじゃないか、と思ってしまう程の出演率です。

 個人的には2作目の時から虎視眈々とニヨルドを変態キャラにしようと企てていたので、やっと本性を出したニヨルドがお気に入りだったりします。


 今までに読者の方から頂いた感想で、タナトスや帝釈天のファンの方がいました。

 読者の皆様は誰が好き何でしょうか?

 反響があればキャラクターの人気投票なんぞを作ってしまうくらい浮かれます。


 どうか陽の目の当たらなくなったキャラクターに、皆様からの一言で出番を与えてやって下さい。

 どうも長々とすみませんでしたm(_ _)m

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