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07:仲間



Over the unkown



 ヘリオスの新しい得物の説明を受けた後、全員は日本支部に向かった。3年前のケリをつけるための拠点、それが日本支部だ。

 ユスティティアはどこから調達して来たか分からないダグザの飛行機に乗り、小さな窓から外を見る。ここ数日で劇的に変化した環境。そして、敵だった自分を受け入れてくれたダグザ達。

考えたらきりがないくらい、色んな事が頭を駆け巡る。

 そう、物思いにふけっていると、隣から痛いくらいの視線を感じる。それは他でもないニヨルド。


「ど、どうしたの?」


「どうやったらユスティティアは僕の事を好きになってくれるかなぁ?って思っただけ」


「ユスティティアさん、ニヨルドさんの女癖の悪さは病気なんで、相手にしないで下さい」


 ユスティティアはそれぞれのポジションというのを理解した。確実にニヨルドは女ったらし担当。しかも、3年前とは全く違うらしい。ズルワーンはほぼ全員のストッパー。彼がいなくては暴走が止まらない時もある。そして、ズルワーンの隣にいるモリガンは………


「ニヨルド、君は体ばっかり大きくなって、頭は退化したんじゃないのかい?」


「モリガンなんて何も変わってないじゃん。昔のまんまミジンコだし」


「黙れでくの坊。今この場で氷漬けにしてやっても良いんだよ」


 モリガンは嫌み兼、ニヨルドの喧嘩相手担当。この構図を見ていると兄弟喧嘩で、モリガンは生意気な弟にしか見えないが、実際はモリガンの方が年上である。


「でもニヨルドさんは大きくなって可愛くなくなっちゃいましたよ」


 ズルワーンとモリガンの後ろにいるメルクリウスはちょっと痛い人担当。それを聞き、ユスティティアの前にいたククルカンが後ろを向く。隣に座っているのはアルテミスだ。


「それにしてもそれにしても、みんな大人っぽくなったよね?」


「アンタがガキなだけだろ?」


「まぁねまぁね、アルテミスみたいなおばさんにはガキなんだろうね」


「歳が殆ど変わらないのにアタイがおばさんなら、アンタはガキなおばさんで最悪じゃないか」


 ククルカンはうるさい担当。アルテミスはハードボイルド担当。そして二人は喧嘩友達でもある。他の人達から言わせたら、かなり落ち着いた方らしい。


「テメェらギャーギャーうるせぇよ」


「あんたもいちいちイライラしないの、ハゲるわよ?」


「うるせぇ」


 タナトスはユスティティアでも分かるくらい落ち着いたが、それでも狂犬担当は変わらない。緊那羅はタナトスの手綱担当。ユスティティアは自分の中でまとめる、タナトスが落ち着いたのは緊那羅のお陰だと。


「ってかダグザはこれどうしたの?」


 ユスティティアの後ろから操縦しているダグザに話し掛ける沙羯羅。沙羯羅は誰も突っ込まない事のツッコミ担当。この化け物の集団の中で唯一まともな存在と言っても過言ではない。


「知らなくても良い事もあると思うヨ?」


 前に座っている祝融。本人はダグザの駒と言っているが、ユスティティアから見たら何よりも強い信頼関係に思える。故に祝融はダグザの右腕を担当している。


「確かに祝融の言うことも一理ある。奴に一々質問をしていたら一生かかっても質問が終わらない」


 帝釈天の冷静な見解は確かに納得出来る。むしろユスティティアからしたらここにいる人間全員が謎の塊だ。

 帝釈天は唯一の鎮静剤担当。しかし、ユスティティアは腕輪を見て、体を震わせる。悪魔だった帝釈天により、ユスティティアの親友であるアストライアは殺された。確かに今の帝釈天は頼れる存在だが、どうしても殺したという事実が先行してしまう。


「ダグザは怖いだけッスよ」


 いつも的外れな事を平然と言うヘリオス。明らかにこの中で一番の天然担当だ。

 ヘリオスの事を知れば知るほど、ユスティティアが知っている漆黒の邪神とは似ても似つかない。他の者達も同じだ。育成所時代の印象とは違う。


「ユスティティアは阿修羅と仲が良かったんだよね?」


 物思いにふけっているユスティティアの思考を中断するニヨルド。3年前に一度だけ見たことがあったが、全く違っていたので最初は気付かなかった。


「うん。育成所の時に遊んでもらったの。

 ニヨルド君は何でお姉様を助けに行くの?」


「何でって言われても、仲間なんだから当たり前でしょ?今ユスティティアが同じように奪われても、僕達は助けに行くよ!」


「アタシなんてまだみんなの仲間って言われるような事してないし………」


 ユスティティアはニヨルドの優しさにしか聞こえなかった。しかし、二人の会話を聞いていたズルワーンが二人の方を向く。


「そんな事ないですよ。ユスティティアさんのためなら、少なくとも僕は命をかけますよ」


 うるさいと言わんばかりにモリガンが見る。ユスティティアでも疑問に思うくらい、モリガンは成長していない。3年前のまんま、ここにいるような錯覚すらあった。


「君に死なれたら気分が悪いからね」


「モリガンさん素直じゃないですね。でも私にも守るなんて言わないから、素直なのかな?

 ただ私ならユスティティアさんの事を守りますよ!だから私の事も守って下さいね?」


 無邪気なメルクリウス。ユスティティアは嬉しさを噛み締めながら、首を縦に振る。


「貴様ら、もう着くから大人しくしてろ」


 ダグザの声でユスティティアは下を見る。今は日本にいる、それを実感させられた。













Japan VCSO Japan branch office


 ダグザ達は日本支部に着いた。この中に日本支部に来た事にあるのは、当然に日本支部だった面々。それにヘリオスとタナトスだけだが、どこの支部も変わり映えしないため、大した新鮮味はない。

 外には金色孔雀が立っていて、ダグザ達に笑顔で手を振っている。ユスティティアが先程聞いた話によると、金色孔雀は段違いに強いらしい。しかし、目の前にいるのはただの笑顔の男性。歳よりは若く見えるが、強そうだとは思えない。


「何か増えてるね?」


 果てしなく元帥と同じ雰囲気を感じる金色孔雀。金色孔雀はユスティティアに笑顔で手を振り、ユスティティアは苦笑いで会釈した。


「ユスティティアです」


「可愛いね」


「ダメだよ!ユスティティアは僕のだから!」


 ニヨルドはユスティティアの前に出ると、金色孔雀は頭に疑問符を浮かべる。そして、じっと見ていると、3年前のニヨルドとリンクした。


「も、もしかして、ニヨルド?」


「忘れるなよぉ」


 頬を膨らまして金色孔雀を睨むニヨルド。その表情は確かに幼いニヨルドの面影がある。

 金色孔雀の後ろにある後ろの扉から、スタイルの良い女性が出てきた。短い髪の毛に大きな瞳、大きな口の口角を上げて緊那羅に飛び付いた。


「緊那羅ぁ!会いたかったぞ!」


「あんたもしかして摩和羅女!?」


「そうだ!沙羯羅も久しぶりだな」


 様変わりした人間がここにもう一人。たった3年、その3年間でニヨルドと摩和羅女は大人になっていたらしい。


「それにしても、何をたべればこんな無駄に大きな胸になるのよ?」


「勝手に大きくなった!」


 ユスティティアは本当に大きな摩和羅女の胸の後に、自分の胸を見てため息を吐いた。それを横目で見ていたニヨルドは、体を屈めてユスティティアに笑顔を見せる。


「女の子は胸じゃないから大丈夫だよ」


「よ、余計なお世話なの」


「でもニヨルドさんっていつも大きな胸の女性しか口説かないじゃないですか」


「ず、ズルワーン!無駄な事言うなよ!」


 ユスティティアは白い目でニヨルドを見る。ズルワーンは日頃の行いが悪いと言わんばかりに、ため息を吐いた。

 その3人の会話が耳に入った摩和羅女が、ズルワーンに近寄った。


「バンダナがないぞ?」


「摩和羅女さん、お久しぶりです」


 ズルワーンは摩和羅女にお辞儀した。


「バンダナはどうした?」


「ニヨルドさんが外せってうるさいんで………」


 摩和羅女はユスティティアとユスティティアの隣で、がっくりと肩をを落としているニヨルドを見た。


「お前ら誰だ?」


「初めましてなの、ユスティティアです」


「僕だよ!ニヨルドだよ!」


「ユスティティアって言うのか!初めましてだな、うん!

 だけどお前はニヨルドじゃないだろ。ニヨルドはこんくらい小さかったぞ!」


 摩和羅女はモリガンを引っ張って来て、頭の上に手を置いた。モリガンは顔を真っ赤にして殺気を放つ。


「君、殺されたいのかい?」


「お前は確かモリガンだな!変わらない事は良いことだ、うん!」


「ぶっ潰す!絶対にぶっ潰す!」


 モリガンは得物を取り出して、笑いながら逃げ回る摩和羅女に本気で攻撃を仕掛ける。それをズルワーンが必死に止め。ユスティティアは摩和羅女に気付いてもらえず、落ち込んでいるニヨルドをなんだかんだで慰める。

 それを見ている外野は、微笑ましく彼らを見ている。


「奴らに緊張感はないのか?」


 ダグザはため息を吐いた。一応彼らの同年代である祝融は、被害を受けないようにダグザの後ろに隠れている。


「若さ故だ」


「やらせとけば良いじゃねぇか」


 帝釈天とタナトスは自分に被害が及ばないのを良いことに、傍観者を決め込んでいる。


「世代交代ってやつじゃないッスか?」


 ヘリオスは呑気に発した一言。それにより3年前に最強と言われていた、遠距離型のアルテミス、対大量戦術のククルカンは他人事ではないような気がしてきた。


「まぁ、アイツらじゃあ俺様には勝てねぇよ」


「俺も負ける気はないッスけど。ククルカンとかアルテミスはヤバいんじゃないんスか?摩和羅女もモリガンも強くなってるんじゃないんスか?」


 傍観者だったヘリオス。しかし、自分に向けられていないながらも、こちらに近寄る殺気。


「退けぇ!」


 摩和羅女の叫び声により、全員が摩和羅女の方を見ると、凍り付いた森と笑顔で走る摩和羅女、そして殺気を放つモリガンと2人を追うズルワーン。


「貴様ら!大人しくしろ!」


 ダグザがキレているのを横目に、全員が散り散りに逃げて行く。





 ズルワーンはオーストラリア支部で、砂漠地帯に支部があったために3年前まではバンダナを着けてました。恐らくニヨルドが女の子にモテないとか言って、無理矢理外させてんでしょうね。

 ちなみにアルテミスのバンダナは健在です。長い髪の毛を纏めるために使ってるようです。

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