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Unkown



 ダグザが住んでいる小屋の外、そこにはユスティティアと祝融。祝融はダグザに呼び出され、ユスティティアの修行に付き合っている。

 祝融はダグザの駒。長い髪の毛を三つ編みにして、鋭い目つきでユスティティアとの乱打戦を繰り返す。

 祝融とユスティティアの基礎的な力の差は無くなってきた。しかし、最後の一歩は経験の差。そこが埋まらない以上、ユスティティアはダグザ達の荷物にしか過ぎない。

 しかし、この短い期間で3年間修行を詰んだ祝融に迫る力。それは純粋に彼女の才能だった。


 暫く二人が休憩していると、人の気配がこちらに来るのを感じた。ユスティティアは構えるが、祝融は全く変わらずに水を飲み続ける。


「大丈夫ヨ。この気配、仲間の誰かネ」


 ユスティティアは驚く。ダグザや漆黒の邪神、そして祝融のみだけでも神選10階以上の力なのに、まだまだそんな力を持った者がいる。そして思う、日本支部関係の人間は皆コレほどの力なのか?と。

 そしてその気配の根源が姿を現した。眩いばかりの笑顔を放つ、見るからに明るい女性と、サムライのような威圧感を放つ男性。


「祝融久しぶり!」


「あれは沙羯羅(しゃがら)と帝釈天ね」


「あ、あれが、沙羯羅さんと帝釈天さん?」


 沙羯羅と帝釈天はユスティティアを見て首を傾げる。そう、その顔は初めて見る顔だからだ。


「あ!ユスティティアです」


「祝融、何故無関係な奴がいる?」


 その目は鋭くユスティティアを射抜くように見た。


「無関係でもないネ、ユスティティアは―――」


「ちょっ、………ストップストップ!」


「馬鹿!飛ばし過ぎだサラマンダー!」


 全員が唖然と倒れる木々を見ている中、ユスティティアがとっさに前に出て、盾のフレッグを構えた。


「リフレクト!」


 フレッグが薄く光り、森の中から現れたトカゲ、サラマンダーがそこに突っ込むと、一気に吹き飛ばされて行った。

 ユスティティアは焦りながらその場でうろうろする。


「とっさに弾いちゃったけど大丈夫かな?仲間の人だったら悪い事しちゃったの」


「貴様、今何をした?」


 帝釈天は焦るユスティティアの肩を掴み、真剣な眼差しでユスティティアを見た。ユスティティアは驚き硬直するが、すぐにゆっくり帝釈天の目を見る。


「リフレクトは全てを反射する神技なの」


「凄いじゃん!もしかしたら帝釈天のプロテクティブよりも強いんじゃない?」


 帝釈天のプロテクティブは全てを防ぐ神技。しかし、鎧と同じように関節部分の強度は薄い。


「ダグザ様が中で待ってるネ。とりあえず中に入るネ」


 帝釈天と沙羯羅が小屋に入ると、祝融とユスティティアは再び座る。

 先程弾き飛ばしたサラマンダーが気になっていたその時、森からまた人が現れた。

 帝釈天はサムライの雰囲気を醸し出していたが、前から歩いて来る女性は女侍。隣で二人の女性を担いで来るのは青く長い髪の毛の男性。


「コイツらが飛んできたぞ?」


 男性が担いでいた二人をその場に落とす。そこには目を回して倒れているククルカンとアルテミス。


「た、タナトス」


 ユスティティアは怯えて一歩退く。そう、そこにいたのは死神と呼ばれていたタナトス。時代は移ろい、今は“蒼き死神”と呼ばれている。

 タナトスはゆっくりと睨むように見ると、ユスティティアが育成所時代には見たことのない柔らかい表情を浮かべる。


「阿修羅の妹分だったな?」


「は、はい」


「心強い味方だぜ。なぁ、緊那羅(きんなら)?」


「何でそんなのが解るのよ?」


 緊那羅は素っ気なく返事を返す。ユスティティアは驚いていた、あの恐怖の化身のようだったタナトスが、柔らかい表情で話している事が。


「ダグザがここに置いてるって事は、それなりに力があるんじゃねぇの?」


「元々神選10階だから力はそれなりヨ。あとは経験だけネ」


 恐らくユスティティアは祝融の弟子と言えよう。故にユスティティアの力は何よりも自信を持っていた。


「ダグザはこの奥か?」


「そうヨ。後はモリガン、ニヨルド、ズルワーン、メルクリウス、ヘリオスだけネ。ケツァルコアトルとコアトリクエは子供作って隠居らしいネ」


「まさかマジで落ち着いちまうとはな。

とりあえず中にいるわ。こんな悪趣味な手紙紙よこしやがって」


 タナトスは黒い封筒を投げ捨て、ククルカンとアルテミスを担いで小屋の中に入って行った。

 ユスティティアはタナトスが捨てた黒い封筒を見る。中から紙を取り出すとこれも真っ黒、白い文字には“集まれ”、とだけ書いてある。


「これだけでみんここに来てるの?」


「3年前の約束ネ」


 そう、3年前に約束だけで全員が集まっている。ユスティティアは羨ましがった、神選10階と言えどお互いの関係は薄い。故にだった一人のためにこれだけの人数のホーリナーが、長い間待っていると言うのは本当に羨ましかった。

 ユスティティアにとって友達はリルくらい。他はただ一緒の団体に所属しているだけ。リルですら今まで裏切っている。命を預ける仲間だったはずなのに、ここまで軽薄な関係とは笑える話である。


「………羨ましい」


 ユスティティアの呟くような小さな声に、祝融は横目でユスティティアを見る。


「ダグザ様のお陰ネ」


「ダグザさんの?」


「ダグザ様は全員が確実に生き残れる事だけを考えてるネ。だから、命のやりとりではみんなダグザ様を信頼してるヨ。

 ダグザ様が神選10階になってから死者が減った。それで、みんなが長い間一緒にいたからこういう繋がりなったんだと思うヨ」


 ユスティティアは祝融を女の目で見る。


「祝融ちゃんって、ダグザさんの事好きなの?」


「な、何を変な事言ってるネ!?ダグザ様はワタシのご主人様ヨ!」


 ユスティティアは顔を真っ赤にしている祝融を見てクスリと笑う。リルと祝融は同じ歳、つまりユスティティアの1つ年上になる。あまり歳が変わらない割には大人びているが、たまにこういう歳相応の表情を見せる。

 ユスティティアが顔が真っ赤な祝融を眺めていると、いつの間にか目の前にユスティティアと同じ年くらいの青年が二人いた。一人は眉毛がしり下がりの柔らかい雰囲気の青年。もう一人は長身のモデルのような青年。


「お久しぶりです、祝融さん」


「久しぶり祝融!凄い綺麗になったね」


「ズルワーンに、………ニヨルド?」


 ズルワーンの事ははすぐに気付いたが、ニヨルドの変わり様に疑問符が追加される。それもそのはず、ニヨルドと言えば祝融よりも小さかった。しかし、今や誰よりも大きい。


「忘れないでよ。お隣の可愛い子は誰?」


「ユスティティアです」


 ユスティティアは立ち上がりニヨルドにお辞儀した。上から眩しい笑顔で見下ろすニヨルド。ユスティティアはその整った顔立ちに顔を赤らめる。


「ユスティティアって言うんだ、凄い可愛い名前だね。この気持ちが初恋って言うのかな?」


「ズルワーン、ニヨルドはどうしたネ?」


「2年前に道を誤ってからこんな感じです」


 二人が呆れてため息を吐いているその横で、ユスティティアは赤い顔でニヨルドを見る。ズルワーンはまたか、と言った具合に襟元を掴んで引き摺って行く。


「ダグザさんはこの奥ですよね?」


「そうヨ」


「ユスティティア!今度デートしようね!」


 ズルワーンはそのままニヨルドと共に小屋の中に消えて行った。後に残ったのは顔を赤くして立ち尽くしたユスティティアと、過去のニヨルドと今のニヨルドを比べる祝融。


「やっと着いたぁ!」


 その声で我に帰る二人。そこには長身の明るさが全面に押し出された女性と、冷たい目つきの氷を思わせるような少年。


「あっ、祝融さぁん!お久しぶりです」


「モリガンとメルクリウス、遅いネ」


「時間が指定されてないんだ、遅いも何もないじゃないか」


「もしかして私達が最後ですか!?」


「いや、最後じゃないヨ」


 祝融はモリガン達の後ろに目をやったその瞬間、僅かな布が擦れる音のみで後ろに漆黒の邪神が現れた。

 モリガンは漆黒の邪神を見ると、凄まじい殺気を放つ。その殺気に小屋の中にいた者達が気付き、ダグザを含めた全員が出て来た。


「ダグザ、テメェの知り合いだろ?俺様に攻撃して来たアイツ誰だ?」


「俺の所にも来た」


 タナトスと帝釈天、それ以外にも全て漆黒の邪神が全て攻撃を仕掛けている。

 漆黒の邪神は黒いローブを纏い、ただそこに佇むだけ。そこに確かにいるのに、気配を消しているためにいないような不思議な雰囲気を醸し出している。


「もう終わりで良いぞ」


 ダグザの一声で漆黒の邪神はその場にあぐらをかき、体勢を思いっ切り崩す。それだけで全員が漆黒の邪神の正体に気付き、警戒を解いて柔らかい表情を浮かべる。


「やっとコレで終わりッスね!?もう疲れちゃったッスよ」


 漆黒の邪神は勢い良くフードを外した。そこからは柔らかい金色の髪の毛、浅黒い肌、そして漆黒の邪神とは似つかわしくない輝くような笑顔。それを見て帝釈天が鼻で笑う。


「やはり貴様か、ヘリオス」


 そう、漆黒の邪神は太陽神のヘリオス。その強さには納得がいくが、あの威圧感は目の前にいるヘリオスが放つものとは思えない。


「何でヘリオスに俺様達を襲わせたんだよ?」


 タナトスは若干の不機嫌を撒き散らしながらダグザを見る。


「貴様らの力試しだ。3年間でどれだけ力を付けたのか、もしくは弱くなっているのも考えたが、それは無かったらしいな」


「そっかそっか、ヘリオスだったからサラちゃんの炎が効かなかったんだ」


 ククルカンは腕を組みながら頷く。


「そうッスよ!何スかあのトカゲ!?」


「あれはアタイのペットだよ」


「ヘリオス、コイツらは強くなったのか?」


 ダグザは面倒臭そうに話を無理矢理路線変更する。全員の力は大体把握しているため、そこまで大きな驚きはない。


「みんな強いッスよ。俺よりは弱いッスけどね」


「俺様から必死に逃げてたくせに良く言うぜ」


「俺は一歩も動かなかったな」


「だって神技使えないんスもん。それに、構えるな、焦るな、怪我するなじゃ調子狂っちゃうじゃないッスか」


 ヘリオスは口を尖らせてタナトスと帝釈天のみならず、ダグザにも抗議する。


「それよりもみんな大事な事忘れてない?」


 沙羯羅の一言に全員が考える。しかし、急に来た漆黒の邪神の事などこれっぽっちも気にしていなかったために、沙羯羅が言っている事が分からなかった。


「ヘリオス、あの剣どうしたの?レーヴァテインは?」


 そう、ヘリオスの得物はレーヴァテイン。しかし、漆黒の邪神の得物は純白の剣。漆黒の邪神がレーヴァテインを使っていれば、全ての人間はヘリオスだと気付いていた。それが出来なかったのは、ヘリオスであるはずの漆黒の邪神がヘリオスとは違う得物を使っていたから。


「へへぇん、これッスよ」


 ヘリオスは腕輪を全員に見せる。本来は宝石の様な石が一つ付いているだけだが、ヘリオスの腕輪には黒みがかった金色の石と、白みがかった金色の石がある。


「何か気付いたらあったんスよね」


「テメェ、いつの間にか付いてたじゃねぇよ」


「ダグザ、説明頼む」











 はい!これで今作で要となるキャラクターがほぼ全員が出揃いました。

 ほぼというのは、既に6話なのに主人公がこれっぽっちも出ていないという事です。

 今作はキャラクター数が尋常ではないので、出来る限りキャラクターの個性を強く出来るように頑張ります。

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