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03:黒幕



Unknown



 そこは森。森の中を歩く漆黒の邪神。辺りには折れた木々が横たわり、目の前には小屋がある。

 肩にはユスティティアを担ぎ、空いている右手で小屋の扉を開いた。

 中に入ると薄暗く、モニターによる光源しかない。モニターには様々な国の文字や映像が映っている。

 そして、モニターの目の前には男性が一人。眼鏡をかけていて知的な印象が際立つ。


「そいつは誰だ?」


 男性は漆黒の邪神に問い掛ける。漆黒の邪神は何も言わず、室内の電気をつけてユスティティアをベッドに寝かせた。

 男性はユスティティアを覗き込み、薄く笑みを浮かべた。


「貴様にしては面白い事をしたな」


 男性はユスティティアの頬を軽く叩き、ユスティティアを起こす。

 ユスティティアはゆっくりと目を開き、最初に確認したのは漆黒の邪神だった。


「漆黒の邪神!」


 ユスティティアは得物を顕現するが、漆黒の邪神の隣にいる男性を見て驚愕する。まるで幽霊を見るような目で、漆黒の邪神の隣にいる男性を指差す。


「だ、ダグザ!」


 そう、漆黒の邪神の隣にいたのは姿を眩ましていたダグザ。それどころか漆黒の邪神の黒幕はダグザという仮説も証明された。

 しかし、ユスティティアにとって問題はそこではなかった。今や神選10階にとって一番の敵である漆黒の邪神とダグザ。その二人の前から自分は生きて帰れるのか、という不安があった。


「今までは“ダグザ様”だったのに、今や呼び捨てか。世間じゃあ大悪党らしいな」


 ダグザと共に漆黒の邪神も肩を揺らす。


「あなた達の目的は何なの?」


「その前に聞こう。日本支部の反乱、貴様らはどう教わった?」


 牽制状態、構えながら会話するユスティティアと違い、二人は全くの無防備。


「お姉―――天竜の頭首である阿修羅さんを、天竜から奪おうとした」


 ダグザは鼻で笑う。そう事実と史実は異なるもの。当事者がここにいる、それが生き証人だからだ。


「事実はこうだ―――」










 ダグザが日本支部の反乱を説明すると、ユスティティアは顔をしかめた。そう、ソルジャーの育成所時代に慕っていた阿修羅。阿修羅を奪ったのは敵ではなく味方。


「う、嘘だよ」


「コレを見てもそれが言えるか?」


 ダグザはパソコンに向かい、モニターを見ながらキーボードを叩く。


「コレが真実だ。信じれないなら仕方ないがな」


 そこには首に得物を当てる阿修羅。周りには得物を持ったホーリナー達。

 そして阿修羅の一言一言は確実に日本支部側を庇うもの。そして、天竜側の物騒な言葉。色眼鏡でも着けない限り、天竜が奪っているようにしか見えない。

 短い映像が終わると、ユスティティアは驚きと共にベッドにへたり込んだ。それは、姉のように慕っていた阿修羅が助けた仲間に刃を向けた事。そして、阿修羅を奪った方に荷担していた自分。


「どちらが悪でどちらが善かは貴様の判断に任せる。だが、俺達はこれから阿修羅を助けに行く。邪魔をするなら誰であれ殺す、それまでだ」


 ユスティティアには何故かダグザが嘘を吐いているようには思えなかった。確かに今のユスティティアは神選10階であり、ダグザは殺さねばならぬ相手。しかし、悪に荷担してでもユスティティアは阿修羅に会いたかった。


「あなたに従えば、阿修羅さんに、………お姉様に会えるの?」


「会える」


「アタシ、悪魔になるの?」


「どちらが悪かは主観にしかすぎない。俺達はただそこに目的があり、それを阻む敵を潰す。それが悪というなら悪だ。しかし、俺達は間違ってはいない」


 ダグザの隣にいる漆黒の邪神は何も言わずにただ佇むだけ。


「じゃあ、漆黒の邪神は?」


 ダグザは鼻で笑って漆黒の邪神を見る。漆黒の邪神は全くの無反応で立っているだけ。


「こいつは恐怖により支部とVCSOの繋がりを切り、いざという時のために日本支部に取り込む」


 ユスティティアはやはり不安にかられた。それだけならどれだけ美化しようが悪にしかならない。恐怖を植え付けた時点でそれは力による脅迫。


「―――というのは神選10階の久延毘古の見解だ」


「え?」


 ダグザは妖しい笑みを浮かべる。そして、ユスティティアの疑問符はダグザの冗談に対してと、久延毘古のプロファイリングを把握している事。


「まんまと騙されてくれて助かってる」


「じゃあ本当の目的は?」


「神選10階の機動力、そして神選10階と支部の関係の調査だ」


 ユスティティアは首を傾げる。


「まずは機動力。それは支部を破壊し続け、久延毘古が恐怖による神選10階の孤立と考え、そこから恩を売るまでの時間だ。それにより漆黒の邪神への注目度、そして自分達の力に対する度合いを計る。

 次に、現在の神選10階と支部との関係。それにより今の神選10階が何を必要とするモノを見定め、そこを崩す準備にあてる。

 その二つがコイツの存在意義だ。」


「す、凄い」


 ユスティティアは圧倒される。今の神選10階のブレインは久延毘古だが、それを遥かに上回る頭脳。本当の策士の姿をそこに見た。


「貴様はどうする?俺を信じるか、元帥を信じるか。

 仮に元帥を信じるなら、阿修羅を助けるまでは監視させてもらう。俺を信じるなら、コイツが誰か誰よりも早く教えてやる」


 ユスティティアは漆黒の邪神を見る。先程から何も言わずに立っているだけ。その威圧感は神選10階であるユスティティアが感じた事のない、怪物のような迫力だった。

 そして、ダグザの口振りから誰も漆黒の邪神の正体を知らない。ユスティティアでも分かる、近い内に阿修羅を取り戻しに行くという事が。


「あ、アタシ、お姉様を取り戻したい。誰が正しいかは分からない。でも、やっぱりアタシはお姉様に会いたいの」


 ダグザは分かっていた、と言わんばかりに笑みを浮かべる。

 ダグザがゆっくりと漆黒の邪神を見ると、ユスティティアも漆黒の邪神を見た。


「もう良いぞ」


 漆黒の邪神は投げ出すように椅子に座った。ユスティティアの知っている漆黒の邪神とは違い、凄くラフな雰囲気を醸し出す。

 そして、ゆっくりとフードに手をかけ、そのままユスティティアに素顔をさらす。


「あ、あなたは!」










 GWも終わっちゃいました。皆さんはどこかに出掛けましたか?インフルエンザなど色々あって今年は明るい話題が少なかったですね。

 作者は良い歳してコナンの映画を見てきました(笑)

 コレから休み明けで五月病に負けずに頑張りましょう。作者もバシバシ書いていきます。

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