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24:狼煙

 投稿が遅れてしまい大変もうしわけありません。

 待っている方がいると信じ、出来る限りのペースで進めさせてもらいます。



Japan Tokyo



 ダグザと祝融は街に出ていた。他の者達は思い思いの時間を過ごしているが、ダグザだけは少しでもこの戦争を有利に進めるための諜報活動がメインだった。必然的に祝融も外に出ていなかった事になる。

 今回はダグザ自身も限界を感じ、前々から祝融と約束していた外出をしている。


 ニヨルドの様々な女性の連絡先が入った携帯電話のおかげで、久延毘古が言っていた新たな力が判明した。

 神徳の力を神技とは別の形で、武器に付加するという事を久延毘古はやっていた。これが正しければ、神選10階の力は自分達にも匹敵する。

 ダグザはそこまで考え自分に呆れた。これでは休めないと。思考ばかりを続けていては妙案が浮かばないのは理解しているが、癖でつい頭を使ってしまう。


「ダグザ様、大丈夫ですカ?やっぱりお疲れなんじゃ?」


「大丈夫だ」


「ワタシの事はお気になさらずに」


 祝融が本気で気遣ってくれてる事に感謝し、近くにあったベンチに腰掛けた。

 祝融は走り出すと、どこかへと行ってしまう。その行動の意味を理解しているダグザは特に何もいわず、目を瞑って普段はしないという感傷というものをする。


「(俺もまだまだ甘いな。この戦いは何があっても死人が出る。アストライアが死んだ時のように俺が取り乱せば、被害は悪化するだけだ。………感情を捨てろ、勝つことだけを考えろ)」


「ダグザ様、コーヒーです」


 ダグザはゆっくりと目を開き、缶コーヒーを持った祝融を見る。ダグザ曰わく、この無駄に甘くて無駄に不味いコーヒーが脳を活性化させ、無駄な考えを忘れさせてくれるらしい。


「ダグザ様。ワタシはダグザ様の駒です。この命、いつ失っても惜しくはありません」


 毎回祝融にだけは感情を読まれてしまう。祝融が敏感なのか、ダグザが分かり易いのかは分からないが、祝融を騙せた事は一度としてない。


「俺は誰にも死んで良いとは言わない」


「だからって―――」


「それが最善ならば、俺は迷わずそれを選ぶ」


 ダグザは祝融の言葉を遮って強い口調で言った。祝融が言おうとしたのは

「だからってダグザ様が死ぬ事はない」と。

 そう、そこがダグザの一番の強みであり、弱み。ダグザは目的達成のためなら良くも悪くも手段を選ばない。


「祝融には感謝している。だから、これからも俺に付いて来い。何があっても俺から離れる事は許さない」


「はい。何があろうと、どこにいようとダグザ様に付き従います」


 お互いが確固たる意志を見せ、ダグザが一息つこうと缶コーヒーに口をつけた時、ダグザの携帯が鳴りだした。

 思考を切り替えるには丁度良いと、ゆっくりと通話ボタンを押して耳に近付けた。


『テメェどこで何してやがる!?』


 始めに聞こえたのはタナトスの怒鳴り声。


「…………どうした?」


 大体の事はそれだけで理解出来た。恐らく、戦争が始まったのだと。

 ダグザは立ち上がり、祝融から携帯を借りる。


『テメェには余計な事は省いて言うぜ?ククルカンと、ニヨルドがやられた。ククルカンはバアルに助けられて、ニヨルドは居場所が分からねぇ』


 ダグザは舌打ちしながら、祝融の携帯から衛星の記録を引き出し、ニヨルドの位置情報が消えた場所を探す。


「アルテミスとユスティティアは?」


『アルテミスは大丈夫だが、ユスティティアは精神的にヤバい』


「分かった。まずはそこを動くな。後はどうにかする」


 そのまま通話を終了させた。そしてダグザは祝融を見ると、一気に走り出す。

 端から見たらダグザは普通に見えるだろう。しかし、祝融にはダグザが怒りを必死に抑えてるのが分かった。



 2人が目的の場所に着くと、何故かそこは人がまったくいなかった。大きな路地だというのに、不思議なくらいに人がいない。

 そしておびただしい量の血溜まり。その上にはバラバラに破壊されたニヨルドの携帯。

 それだけでダグザは理解した。‘どんな形’であれニヨルドは生きていると。

 固く拳を握り締め、今にも怒りが爆発しそうなのを堪える。祝融でも怯んでしまう程の殺気を放ち、今にも暴れ出しそうなダグザ。


「…………行くぞ」




 マンションに戻ったダグザは自分が情報を集めるために作った部屋にこもった。しかし、それもものの数時間。すぐに全員をこの部屋に集めた。

 ククルカンはまだ眠っていて、新たにバアルも加わっている。バアルは先程まで帝釈天と模擬戦をやっていて、ダグザもそれは見ている。恐らくダグザと同等、もしくはそれ以上の力がある。つまり、戦力としては申し分ない。

 ユスティティアは憔悴しきっている。しかし、ダグザも驚いたが、絶望の中に殺意が混ざっている。


「まずは貴様らに情報を与える。ニヨルドはバチカンにいる。一応は生きているが、いつ死んでもおかしくはない」


「もしかして、バチカンに乗り込むつもり?」


 阿修羅は焦りを隠さずにダグザを責めるように言った。バチカンに乗り込むなど自殺行為。


「あぁ、嫌ならココから消えてもらって構わない」


 ダグザは威圧的に言い放った。それは頭に血が上って下した結論ではなく、万が一を想定していたので下せる決断。


「とりあえず作戦概要を話す。まず、モリガンに潜ってもらう。モリガンを選んだのは、神技が一番隠密に向いているのに加え、いざという時には逃げ出す事も可能なだけの能力を持っているからだ。

 そして仮にモリガンが見つかっても、一人だけと思わせるために、迦楼羅を付ける。ニヨルドの場所は後で教える。潜入出来たら手段は問わない、生きてニヨルドを連れ出せ。無理なら生きて帰って来い。

 そしてヘリオス、貴様にはまた漆黒の邪神になってもらう。神選10階はともかく、何も知らないソルジャーを撹乱させるためだ。

 ズルワーンと摩和羅女には正面突破を頼む。スピードと臨機応変な対応が出来るズルワーンと、瞬殺が出来る摩和羅女で神選10階を引きずり出せ。ただ、貴様らはすぐに戻って来い。神選10階を誘き出すヘリオスとの2重策だ。

 そして、別ルートからは金色孔雀に行ってもらう。元帥や元老を鎮圧出来るのは貴様くらいだ。

 残りは状況に応じて俺が振り分ける。ただ、今回の作戦は相手の戦力を削る事じゃない、ニヨルドを連れ戻すだけだ。つまり、生きて帰って来い。

 そして、今回は迷わず殺せ。手を抜いたら逆に殺されると思え。向こうは乗り込んで来るのを理解しているはずだ」


 一気に話し終えたダグザ。異論はない。危険な事は端から分かっている。死を覚悟していると言えば嘘になるが、仲間を捨ててまで生に執着するつもりもない。

 ダグザは最後に、ユスティティアを見る。ククルカンが抜けただけでも穴が大きいのに、ユスティティアまでこうなるとダグザの計画は大きく狂いをみせる。


「ユスティティア、貴様は―――」


「モリガン君と一緒に行きます」


 全員が驚く。お世辞にも万全の状態と言えないのに加え、神選10階と戦わなくてはならない。そんな中でユスティティアがいるという事は、間違いなくお荷物にしかすぎない。


「ユスティティア、無理しなくても良いんだぞ?」


 摩和羅女はユスティティアを気遣う。しかし、それにユスティティアは笑顔で応えた。


「ニヨルド君を傷つけちゃったのが辛いの。それに、今の仲間はリルちゃんじゃなくてニヨルド君だから」


「………貴様、何を考えてる?」


 全員ダグザの一言に驚きを隠せずにいる。全員ユスティティアの言った事が真意だと思ったからだ。

 さすがにダグザの疑っている一言に、摩和羅女はダグザの胸倉をつかみ上げた。


「お前何言ってるんだ!仲間を疑うならアタシはお前の言うことなんて聞かないぞ!」


「摩和羅女ちゃん、違うの」


 ユスティティアは俯きながら摩和羅女は制止した。摩和羅女はゆっくりと手を離し、ユスティティアを見た。


「ダグザさんの言ってる事は嘘じゃないよ。あたし隠し事してるの」


 その瞬間、ユスティティアから発せられているとは思えないような殺気が充満する。


「今、凄い自分が情けないの。それだけじゃない。ニヨルド君を傷付けた神選10階を、………殺したい。

 もしかしたらダグザさんの作戦には従えないかもしれない。勝手な行動をしちゃうかもしれないの」


 怒りを抑えながら、淡々と自分の感情を吐露するユスティティア。しかし、その感情は誰しも同じ。故に間違っているとは思わない。



「今から1時間後、またここに集まれ。

 バアル、あの空間移動を使えるのは貴様だけだ。俺が場所を教えるから頼む」


「分かった」


 そして全員が思い思いに散り散りになる。1時間後に、歴史を塗り替える戦いが始まる。








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