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19:動機



Unkown



 阿修羅と帝釈天は阿修羅(あすら)が悪魔になってから、第一次ホーリナーラグナロクが起こる前までの事を見てきた。確実に史実とは違う事実。

 天竜家の思惑に気付いたカリルドールがその要でもある阿修羅(あすら)に接触し、二人はまずコルトヴィレツィアの代表と話をした。四神族の頭首や代表が協力すれば、VCSOは潰せるだけの戦力となる。

 幼いカリルドールの長と歴代一に破天荒な天竜家の長。そして、カリルドールの長は既にルシファーとなっていた。

 コルトヴィレツィアとはコルトバ一族が幹部を勤めている巨大な軍隊。その戦力と戦術はVCSOをも凌ぐと言われている。しかしその反面、現代表は穏健派と言われ、VCSOとは距離を置いて過ごしてきた。


「ちょっと、あんた協力しなさいよ。その力はこういう時のためにあるんじゃないの?」


 威圧的に代表に詰め寄る阿修羅(あすら)。しかしそれすらも鬱陶しいと言わんばかりに、目で帰れと訴える。


「我々の力はただの金儲けの道具ではない。力を持ったからには、その力を均等のために使う。我々はそのために生まれたのだ」


 ルシファーは僅か10歳でカリルドールの力、“闇の隷属”を手に入れた。カリルドール以外からは“世界に反抗する者”とも呼ばれている。

 故に幼い頃からカリルドール頭首として、今のVCSOに対して四神族の中で一番の助力をして来た。


「俺の兵を犬死にさせるつもりか?巫女さんなら知っているだろう、ミトラ、ランギ、毘沙門天の強さを」


「だから頼んでるんでしょ。それとも最大戦力と言われたコルトヴィレツィアが、たかだか3人のホーリナーにビビって逃げるっての?」


 阿修羅(あすら)は呆れたように挑発する。しかし、代表は決してその挑発には乗らない。何故なら、この戦いに参戦すれば大半の勢力を確実に失う。

 阿修羅(あすら)は踵を返すと、そのまま歩き去る。ルシファーも代表に一礼し、阿修羅(あすら)の後を追った。

 しかし、阿修羅(あすら)は顔を軽く後ろに向けた。


「あんた、末代まで臆病者の一族のレッテルを貼られるわよ?あんた一人のせいでね」


 ルシファーは驚く。そんな事は言わずとも、誰もが理解している。なのに、阿修羅(あすら)はあえて言った。

 それは“一人”という単語、つまり代表一人でも来れば被害はなく、組織に汚名が被さる事もない。そして、家のためにそこまで出来るのか?という問いが混ざっている。

 阿修羅(あすら)は四神族としてのプライド、それを聞いたのだ。




 次に向かったのは“語り継ぐ者”、クロス一族の頭首だった。語り継ぐ者に知らない事はない、と言われている程。

 そして、クロス一族は諜報に長けた一族である。つまり頭首はほぼ全ての事を理解していると言っても過言ではない。

 クロス一族の頭首は既に老体で、幼き後継者と言われる子供が必死に勉強させられている始末。

 二人が行った時も、頭首は布団に伏していた。隣には僅か4歳にしてホーリナーとして覚醒している、時期頭首がいる。

 歴代一の破天荒と言われた阿修羅(あすら)ですら驚く程、クロス一族の時期代表は好奇心の塊である。


「おまえ“てんりゅーのみこ”っしょ!?となりにいるのは“せかいにはんこーするもの”じゃん!」


 さすが時期頭首と言ったところ、まだ名乗っていないにも関わらず、どこから情報が漏れたのか分からないが、二人の事を一目見ただけ分かったらしい。


「はてんこーとかたぶつっしょ?」


「こらこらヴァーユよ、頭首様方に失礼じゃぞ」


「うるせぇじじい!」


 そのまま時期頭首のヴァーユは奥へと消えて行った。ヴァーユは阿修羅達の世界では神選10階にいる。好奇心はこの頃から変わっていないらしい。

 阿修羅(あすら)はイラつきながらタバコを吸おうとするが、ルシファーに睨まれてしまい引っ込めた。老体の前でタバコを吸うな、との事らしい。


「悪いのぉ、こんな老いぼれに答えられる事があるなら、包み隠さず話すぞ?」


「なら天竜の目的を教えなさいよ」


「ほぉっ、ほぉっ、ほぉっ。巫女様がこの老いぼれに自分の家の事を聞くとは、実に面白い話よのぉ」


 本当に愉快な老人である。何故かルシファーも阿修羅(あすら)もペースを乱されてしまう。


「今起きている事はヴァーユが知っているはずじゃぞ?ほれ、ヴァーユ、こちらへ来い」


 ヴァーユは扉を開けて、先程とは違う歳不相応な表情で入って来た。腐っても時期“語り継ぐ者”。そして、この歳でクロス一族の脳として機能している。


「てんりゅーの事っしょ?オイラにもわからない事だらけだよ。たしかなのはイザナギをよみがえらせる事だけじゃね?

 一ついえるのは、みこの血だよね?けんきゅーがおわってないっぽいし、血がなければこれ以上進まないっしょ?」


 紅蓮の剣の血にはイザナギの記憶が色濃く残っている。つまり、そこからイザナギの記憶を抽出して、現代にイザナギを蘇らせるのが目的。


「何であんな時代遅れの化け物を?」


「そこから儂が話そうぞ」


 ヴァーユはつまらなそうにその場に座る。しかし、その裏には好奇心がある。


「一つ言えるのは、天竜は毘沙門天が裏で力を握っておる」


「何であの馬鹿が!?」


 そう、頭首は阿修羅(あすら)であり、毘沙門天は分家の一ホーリナーにしか過ぎない。つまり、阿修羅(あすら)の物をいつの間にか奪われていた事になる。


「力じゃ。天竜は実力至上主義じゃな?そこで毘沙門天は巫女様を出し抜いた、天竜は巫女様の命令とでも思ってるんじゃないのかい?」


 阿修羅(あすら)は血が出る程拳を握り締める。つまらないと天竜を出て、日本支部や神選10階に入ったが、まさかそれが裏目に出ていたとは思ってなかった。


「目的は?」


「大義名分は他の四神族も同じ事をやっていて、天竜の存続という名目らしいのぉ。

 真の目的は、ミトラ、ランギ、毘沙門天の絶望からじゃ。

 ミトラは戦いの末に、大切な友も、愛する人も、自分の感情すらも失っとる。この世界に対する憎しみというよりは、不必要との判断じゃろうな」


 阿修羅(あすら)には心当たりがあった。誰が死んでも何とも思わないミトラ、苦しんでいる仲間を見ても、無理と判断すれば切り捨てる。

 しかし、上っ面だけは優しさを装っていた。故に今の今まで阿修羅(あすら)はミトラの闇に気付けなかった。


「ランギは仲間に裏切られたんじゃ。信じていた仲間、そやつが任務中に意図的にランギを攻撃し、気付いた時には神選10階じゃ。

 毘沙門天はもっと歪んどる。幼き頃から実力至上主義の天竜の分家で、天竜本家から迫害と言っても過言じゃないくらいの差別を受けて来た。

 才能があり強いんじゃが、まるで使用人のように生きる親の背中と自分が重なったんじゃろうな。巫女様に近付いたのは恋愛感情半分、天竜の実権を握るのが半分じゃ」


 阿修羅(あすら)の顔からは怒り半分、後の半分は怒りすら通り越して狂気に歪んでいる。


「ちっぽけね、本当にちっぽけな絶望よ。ただの八つ当たりで赤の他人を殺そうとするなんて、本当に馬鹿な奴らに背中を預けてたのね」


 ルシファーは一礼して部屋を出ようとする、阿修羅(あすら)はヴァーユを見ると、今までの怒りからは到底考えられない優しい笑みでヴァーユを見た。


「時期頭首の坊ちゃん。うちの息子と娘、もしあんたが大人になって会う事があるなら頼むわよ。最近産まれたばっかだからあんたと年は大して変わらないわ」


「はてんこーでもあたまのかいてんは早いんだね」


 ヴァーユが言っているのは、阿修羅(あすら)がこの戦いで死を覚悟しているのに気付いた、という事。

 誰もが分かっている。こんな無謀な戦いで勝てるわけがない。むしろ、阿修羅(あすら)は巫女の血が無くなれば研究が止まる。それを理解しての発言かもしれない。


「血がこいから、ゆうしゅーなみこになるだろうね」


「あの馬鹿に似なきゃそれで良いわよ」


「どっちかは似るよ。ぼくは母さん似で姉さんは父さん似だからね」


「なら、道を踏み外さないように見張っててくれる?」


「ぼくはぼーかんしゃだから」


 阿修羅(あすら)は思った。この子供はろくな大人にならない。幼いくせに弁が立ち、これにクロス一族の知識と知恵が身に付いたら手に負えないだろう。

 ただ、この歳から姉を差し置いて時期頭首と言われるのには納得出来る。


 下手をすればイザナギの復活を次代に先送りするだけかもしれない。しかし、一際血が濃い阿修羅(あすら)の双子。それにクロス一族のヴァーユ。恐らくカリルドールの次代はルシファーの弟になるであろう。彼は戦闘力だけならば遥かにルシファーを超える。

 そう、他力本願ではあるが、次代ならという淡い希望があった。阿修羅(あすら)達も負ける気はさらさらない。ただ次代が優秀だからこそ信じて命をかけられる。

 そして、この力を得た時から二人共覚悟をしていた。VCSOが道を間違えようものなら、その命に代えても止めると。

 サブタイトルをマイナーチェンジしました!変えるかどうか悩みましたが、こちらの方が読みやすいかな?と思ってのことです。

 現在進行形で読んでる方にはあまり関係ないかもしれませんが、もしかしたら、………もしかしたら新規で読んでくれる人がいると信じ、淡い希望を抱きながらの変更です。

 しおり機能があるから必要ないって?………ごもっともな意見です。でも変えたい気分なんです。お許し下さい。

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