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01:新世



Vatican VCSO headquarters


 円形のテーブルに集められた神選10階、今は欠員がいるために9人しかいない。神選10階に関わると支部が破壊される、そういう噂がある以上仕方がない事だ。

 相変わらず元帥は3年前と変わっていない、元老の二人も同じだ。

 変わったのは神選10階のメンツのみ。3年前の“日本支部の反乱”以来、神選10階は目まぐるしく入れ替えを行い、今の9人で落ち着いた。


「今度はオルクスのフランス支部だってぇ」


「良い気味ね、彼がいなくなって、ワタシもいなくなって、フランス支部には守れる人間が一人もいないもの。ワタシ達を捨てた当然の報いよ」


 オルクスと呼ばれたお姉口調の青年、真っ赤な髪の毛は後ろで軽く結ばれている。真っ白のタンクトップの背中にカミゥムマーンの刺繍、スキニーデニムをブーツに入れている。


「鬼だねぇ、少しは支部の事を思いやってあげなよ」


 タバコを吸い、紫煙を吐き出しながら上を見上げる男性。クシャクシャな髪の毛、無精髭を生やしている。裾にカミゥムマーンの刺繍が入った白いTシャツの上に、ベージュのロングコート。アーミーのズボンを編み上げのブーツに入れている。


「オメテクトリさん、禁煙ですよ?」


 オメテクトリ、ロングコートを着た男性の名前だ。


「堅い事言わないの、ユスティティアも吸う?」


「吸わないよ、アタシまだ未成年なの」


 ユスティティアと呼ばれた女の子は金色のツインテール、くせっ毛で毛先はハネている。白いタートルネックの首に刺繍、赤いプリーツスカートは彼女の足の長さを際立たせる。


「くっくっくっ、オメテクトリ、タバコで死ぬ時は苦痛しかないのさ。肺がガンで蝕まれ、痛みに悶えながら、血を吐き出して死んで行くんだ。

 百害あって一利なしとはこの事だ」


「また始まったわよ、久延毘古の悪趣味な脅し」


 久延毘古と呼ばれた少年はメガネをかけ、白衣の胸ポケットにカミゥムマーンの刺繍。下にはYシャツにデニム。


「キャハハハハ!オメテクトリ死んじゃうんだって!血がいっぱい出るんだって!興奮するね!」


「リルちゃん、そんな事言ったらオメテクトリさん可哀想なの」


 リルは色素の薄い緑色の短い髪の毛、耳にはカミゥムマーンのピアスがぶら下がっている。赤と白の横縞のブラウスの、裾にフリルの付いた黒いスカート、紫色のニーソックス。


「アグニ、暴れるでない、瞑想に支障が出よう」


「マサライ、せ、狭い」


 アグニと呼ばれた巨漢は上半身裸の裸足、そしてボロボロの白いズボンの右膝にカミゥムマーンの刺繍。

 マサライと呼ばれた男性も半裸、白いカミゥムマーンの刺繍が大きく入った白い布を体に巻いているだけ。


「ってかお前らむさ苦しいっしょ?服着たらどうなん?あとマサライのおっさん、今は瞑想の時間じゃないっぽいぞ?」


「ヴァーユ、マサライは老体ではない、貴様と同じ年ではないか。……あと、き、貴様が一番、裸に近いではないか」


「何だよキウン、んなに顔真っ赤にしなくても良いっしょ?こんな暑い所で服を着れるか、ってぇの」


 ヴァーユはパンツ姿で団扇を仰いぎ、真っ赤な短い髪の毛をなびかしている。本来は真っ黒なレザージャケットの下に白のカミゥムマーンの刺繍が入ったTシャツ。真っ赤なスキニーデニムにラバーソールといった出で立ちだ。

 キウンは髪の毛を後ろでまとめ、メガネをかけた女性。半袖のラフなYシャツの裾にカミゥムマーンの刺繍、ブーツカットのデニムにハイヒール。


「いーち、にぃ、さぁんよ―――」


「リルちゃん、何数えてるの?」


 ユスティティアは指を折ながら何かを数えているに苦笑いを浮かべた、ユスティティアは17歳、そして身長こそ低いもののリルは18歳。


「支部がいくつ潰されたかなぁ、って!」


「くっくっくっ、フランス支部も合わせて12さ。そして死者はゼロ、完全に遊ばれてるじゃないか。

 破滅へのカウントダウンって感じかな?」


 不気味に小刻みに笑う久延毘古。


「どうせ日本支部の誰かっしょ?久延毘古分かんないん?」


「純白の剣なんていやしない。それに日本支部の反乱に関与した人間は迦楼羅、金色孔雀、摩和羅女を除いて行方不明。仮に分かったとしても捕まえられなければ無意味さ」


 あの大事件から3年経った今、阿修羅を奪おうとしたのは日本支部側となり、関わった者達は悪魔と同じような扱いとなっている。

 日本支部自体は金色孔雀と迦楼羅の絶対的な力により保たれているが、この冷戦状態が何かの拍子に崩れた時、再び戦争が始まる。


「神選10階レベルのホーリナーもボロ負けしてるのよ?異常としか思えない」


 キウンが顔を歪め肩を抱いた。


「漆黒の邪神、VSCOを脅かす存在と言えようぞ、ただちに対処をせねば」


 マサライは目を瞑ったまま元帥に問いかけるように言った。


「余計な事言うなよマサライ、凄い面倒だろ」


 タバコに火を付けながら、面倒と言わなくても面倒そうな雰囲気が伝わるオメテクトリ。


「別に良いじゃないのオメテクトリ。神選10階には手を出さないのでしょ?そんな弱虫さんアタシ達の相手じゃないわよ」


 オルクスは既に殺気を放っている。歴代でも彼程の戦闘狂はいない。


「確かに!日本支部関係ならどうせ天竜に行くだろうしな。久延毘古はそれじゃ怒られちゃうっしょ?」


「ヴァーユ、変な想像させないでほしいものだよ。ただでさえ研究が滞ってるのに、これ以上しくじったらまた素戔嗚がキレる」


 久延毘古の不気味な笑みが苦笑いに変わる。天竜から送られた久延毘古にとって、天竜の損になる事は避けたかった。


「じゃあどうしようか?やっぱりそろそろ止めなきゃヤバいよね?久延毘古はどう思う?」


 元帥は困った顔をしながら久延毘古に振った。久延毘古は溜め息と共にしばしの沈黙、その後にゆっくり顔を上げる。


「今から話す事を頭に入れて話を進める。

 VCSOには主に3つの種類の支部がある。まずは日本支部、インド支部、イギリス支部、カナダ支部の様に有力なホーリナーが生まれやすい支部。これは神選10階の任務でも行く事はまず無いような支部さ。

 もう一つは雑魚が大勢集まる支部。これは比較的神選10階の任務で行くような支部。

 最後に、有力なホーリナー少数のみの支部。コレは人数が少ないものの、一人一人が神選10階、ないしそれに準ずる力を持ってる。比較的ソルジャーの任務が多いはず。ユスティティアはソルジャー出身のホーリナーだから分かるだろ?神選10階とソルジャーの任務地が圧倒的に違うのが?」


 ユスティティアは頷いた。ユスティティアはソルジャーだった時にホーリナーとして覚醒。純粋な力で神選10階に入った珍しい例だ。


「今回襲撃を受けてるのは僕達が任務に行くような支部、もしくはソルジャーが行くような支部さ。第2次ホーリナーラグナロクとは違い、今回はホーリナーではなく支部の破壊。

 ここからはあくまで仮説でしかないけど、特に神選10階やソルジャーの派遣が多い支部が狙われてる。つまり、僕達と支部を切り離す、もしくは恐怖による確執というのも考えられるかもしれないね」


 全員が驚く、まさか教われている支部に傾向があるとは思っていなかったからだ。

 久延毘古の神徳は知識神、故のこの頭脳。


「さすが知識神だね」


 元帥がさらっと誉めるが、久延毘古はちっとも嬉しそうではない。


「僕は知識神でも科学者だ。ダグザみたいな策士が欲しいならお門違いさ」


 若干不機嫌な久延毘古。科学ならどんな科学者よりも優れている自信がある。しかし、策士としては2流と思っているため、この様なプロファイリングは苦手だった。

 ダグザのプロファイリングなら確率は80を超えるであろう。しかし、久延毘古のプロファイリング60を切る。故にそこが劣等感でもあった。


「確かに最近支部間での癒着が強いような気がしたんだよね」


「つー事はあれか!オイラ達このままじゃ孤立すんじゃねぇの!?」


 久延毘古を含め全員がヴァーユの一言に目を見開いた。勢いだけで生きているヴァーユ。しかし、稀に何も障害のない勢いが真理に迫る。


「久延毘古、どうなの?」


 久延毘古は悔しそうに唇を噛み、バレないように頷いた。


「だとしたらやっぱり日本支部関係っぽいね。僕達を孤立させて、一気に叩くつもりかな。その内支部からの状況提供もなくなるかもね」


「そうなったら脅して下僕にすりゃ良いっしょ!?」


 全員が白い目でヴァーユを見る。軽く謝りながら団扇で顔を隠す。


「元帥と僕の話を聞いていたのかい?脅したりしたらそれを機に日本支部が全ての支部を取り込む。

 全部ダグザの書いたシナリオ通りか。神選10階もなめられたもんだ」


 既に久延毘古のプライドはズタズタに切り裂かれていた。たった一人の策士、まだ確証はないが久延毘古には分かっていた。神選10階に喧嘩を売れるのなどダグザのみ。

 そして漆黒の邪神の出現。久延毘古は確信する、確実に漆黒の邪神は日本支部関係のホーリナーだと。


「じゃあ今の内に支部に恩でも売っておこうか?」







 新しい神選10階が登場です。案外キャラクター一人一人を気に入ってたりします。


 私生活は巨人の足音みたいのが聞こえたと思ったら、隣町の花火大会の音だった、というチキンっぷりを見せてる暁です。

 執筆の方は順調で、更新ペースは前作よりも上げていけそうです。

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