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12:力試



Japan Tenryu's home



 天照、素戔嗚、月夜見はヘリオスが屋敷に入った、との通信を受けて屋敷の前に立っていた。

 今回の天竜側の作戦は相手戦力の削減。どれほどの戦力を蓄えているかは分からないが、脅威と成りうる存在は潰すという事だ。

 本来ならば、相手側にはダグザと祝融も付いているはずだが、報告にはヘリオスただ一人のみ。3人は警戒しながら迎え撃つ。


 暫くすると、急に屋敷が白い炎に包まれた。これでは近寄れるのは天照のみ。しかし、罠があるやも知れない故、天照単騎で突っ込むのは確実に危険である。

 3人は腕輪に触れた。天照の得物は長刀、名は悲哀の長刀。素戔嗚の得物は七つに枝分かれした大剣、七支剣、名は破壊の剣。月夜見の得物は苦無、名は不浄の苦無。

 そして天照は瞳に、素戔嗚は全身に、月夜見はキャップに隠れた髪の毛に梵字が浮かぶ。


「恐らくダグザと祝融はいません。しかし、気を抜かないで下さい」


「応よ」


「承知」


 3人が構えたその瞬間、


「エミッション」


 炎の中から黒い刃が天照に向かって放たれた。


「姉ちゃん!」


「気になさらずに」


 天照はそれをギリギリの所で防いだ。そして炎が一瞬で晴れると、中から阿修羅が走り出して来た。後ろにはヘリオスが立っている。


「エミッション」


 阿修羅が夜叉丸を振るうと、先程までの白い炎が刃となり月夜見を襲った。


「サモン!青龍」


 一瞬で青い龍が現れ、月夜見を守るように巻き付く。炎は青龍の体に当たり、傷一つ作れずに消えてしまった。


「調子乗るなよ姉ちゃん!」


「チェンジ、アブソルペーション」


 素戔嗚は力強い連撃を阿修羅に浴びせる。本来ならば一発喰らったら吹き飛ばされる程の力だが、まるで自分の力が無くなったかのように手応えがなく受けられてしまう。


「チェンジ、エミッション」


 今度は阿修羅が素戔嗚に斬りかかる。素戔嗚はこの斬撃を防ぎ、体勢を崩してから阿修羅を戦闘不能にするはずだった。

 お世辞にも力があるとは言えない阿修羅が、100キロで走っている2tトラックを止められる素戔嗚を野球ボールのように吹き飛ばした。


「貴方達が力の使い方次第でここまで弱く感じるなんて、私は3年前何やってたのか」


 阿修羅は無力だった3年前を自ら嘲笑う。天照達は阿修羅のあまりの強さに驚く。この3年間、運動どころか一度も得物を握った事のない阿修羅が、自分達を圧倒する程の力を付けている。しかも、“紅蓮の剣”の力は全く使っていない。

 天照の脳内に最悪のシナリオが浮かぶ。目の前にいるのは本気を出した“漆黒の邪神”に“紅蓮の剣”。こちらが本気を出しても勝てるかどうかは分からない。退き際を間違えれば殺される。


「恐らく天照は視野が360度ある、素戔嗚は人間の限界の身体能力を持ってる、月夜見は人の考えてる事が分かる、ってところじゃないの?」


 3人は顔をしかめる。阿修羅が言った事が的を射ているからだ。恐らく3年前に見た力を今ので裏付けしたのであろう。


「逃がしてくれれば生かしてあげるわよ」


「残念ながらそれは出来ません。それに、(わたくし)達は負ける気はありません」


「ヘリオス。二人は任したわよ」


 阿修羅は天照に向かって走り出した。それを見て、青龍は水弾をヘリオスに向かって吐いた。

 ヘリオスはレーヴァテインを逆手に握り、刀身で身を守るように構えると、漆黒の炎が盾のように広がり水弾を防いだ。

 そのまま走って来る素戔嗚にエクスカリバーを向けると、素戔嗚を純白の炎が覆った。


「ツイスター!」


 素戔嗚は竜巻で炎を散らすと、一直線にヘリオスに向かう。ヘリオスは青龍の水弾を時に避け、時に防ぎながら素戔嗚に向かう。

 素戔嗚と斬り結ぶその瞬間、ヘリオスは跳び上がり素戔嗚の背後を取ろうとした。


「ライトニング!」


 空中にいるヘリオスに向かい落雷が起きた。しかし、ヘリオスはレーヴァテインを空中に投げ、落雷を全てレーヴァテインに受けさせた。

 そのまま着地すると、技名破棄のベロシティで月夜見に向かう。しかし、月夜見は瞬間的に青龍が巻き付き隙がなくなってしまう。

 ヘリオスは全く気にせず、青龍の堅い鱗を突き破ってエクスカリバーを突き刺した。青龍は地鳴りの様な図太い声で悲鳴をあげる。


「燃え尽きろ!」


 水の属性を持つ青龍。しかし、ヘリオスの炎はそれすらも無視して青龍に火を付けた。青龍が水のベールを纏い、相殺しようとしたが、ヘリオスの炎の前に為す術がなく、灰になるまえに消えてしまった。そこに残ったのは無防備な月夜見のみ。



 阿修羅と天照は激しい斬り合いをしていた。決して阿修羅と相性が良いタイプではない。天照のリーチは長く、阿修羅の長い間合いを生かした戦い方が通用しないからだ。


「なぜお姉様は素戔嗚に向かわなかったのですか?お姉様と素戔嗚の相性ならばお姉様の圧勝でした」


「さぁ?何故でしょう」


 阿修羅は馬鹿にするように笑う。そう、明らかにこの組み合わせは何かを考えている。本来ならば最大の戦力である素戔嗚から倒すのが常套手段である。しかし、一番厄介な力を持っているのは月夜見と天照。それを潰さない限り素戔嗚は倒れない。

 この3姉弟は素戔嗚が最大の戦力であり、天照と月夜見がサポートに回る戦い方を得意とする。天照と月夜見のみなら戦力が薄い、素戔嗚のみだと勢いが握れない。つまり、3人で1セットの戦い方。3人が同じ戦場にいる限り敗戦は無いと言われているくらいだ。

 その難攻不落の城を阿修羅は打ち崩す術を持っている。これまでに強力な敵は3人にとって初めてだった。


「お姉様の神技は全ての概念の吸収。そして、蓄積させて放出でよろしいですね?」


「少し間違えてるけど大半は正解よ」


「相手が強力な敵ならそれだけ強くなりますが、相手が弱ければ役立たずな力ですね?」


「そのためにコレがあるのよ」


 既に真っ黒になっている夜叉丸。そう、霊体を吸収してそれを刃として放てる。実際はこちらが副産物なのだが、阿修羅からしたらこちらが主流となっている。


「チェンジ、エミッション」


 夜叉丸の切っ先からは黒い線が伸びる。しかし、それは天照に向かわず戦っているヘリオスに向かう。天照の目には戦場が全て見えていた。ヘリオスの向こう側にいる月夜見まで。


「月夜見!危険です!」


 黒い線はヘリオスを貫き、勢いも威力も変わらずに月夜見を貫いた。

 月夜見の力は相手の思考を読む事だが、それは相手が見えている状態というのが前提条件にある。つまり、ヘリオスで死角を作り月夜見を潰した、という風に素戔嗚に見えた。


「素戔嗚!気を抜きすぎです!」


 貫かれたヘリオスは揺らめいて消え、既に素戔嗚の後ろにはヘリオスがいる。ヘリオスは素戔嗚が反応する前に背中を斬りつけた。


「そういう事ですか。厄介な月夜見を倒し、仲間を傷付けたと思わせ油断を作る。そこから厄介な素戔嗚を倒す」


「早く消えたらどう?刃を向けるなら月夜見と素戔嗚を殺すわよ」


 そう、月夜見も素戔嗚も致命傷ではないが、戦闘不能の状態だ。強いだけではない、戦闘においては天才的な2人。いくら能力が秀でていようとも、阿修羅とヘリオスの前では意味がない。


「今回は引かしてもらいます。しかし、次は必ず討たしてもらいます」


「一つだけ覚えておいて、私達は本気を出してないわよ」


 阿修羅はそれだけ言い、ヘリオスを連れてその場を離れた。後に残ったのは焼けた屋敷と倒れている月夜見と素戔嗚、そして唇を噛み締める天照のみ。

 更新が遅くなってしまいすみません。

 徐々に話が動き出しているんですが、未だに話の核心に至っていないのはいかがなものかと……

 ただ!徐々にではありますが小さな謎が解けてはいきます。今回は3姉弟の能力です。

 なぜあんな能力があるのかはまだ明かされませんが、近いうちにそれも話に入れたいとおもいます。

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