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09:開始



Japan Tenryu's home



 正門の前にはタナトス、緊那羅、摩侯羅迦の3人が堂々と立っている。

 固く閉まったその扉は、不気味な程静まり返っている。嵐の前の静けさ、それが今の状況に相応しい言葉。

 ダグザが朝言っていた、既にバレている、という言葉。それを静けさが語っている。

 誘き出されているにも関わらず、3人から絶望感は感じられない。むしろ、摩侯羅迦は確実に捕食する側。タナトスに至っては殺気を隠す事すらしていない。緊那羅は精神を集中して目を瞑っている。


「早くやろうぜ?」


「緊那羅!俺は我慢出来ない!」


 緊那羅が目を開くと、二人は腕輪に手を触れた。タナトスの得物は大鎌、名はスケイル。摩侯羅迦の得物は全身を覆う鎧、風貌は銀色の狼、名は銀狼。


「あんた得物変わってるじゃない?」


「クォン!」


 金属が悲鳴をあげるような鳴き声。まるで体の芯まで得物で覆われているかのようだ。

 緊那羅も腕輪に触れた。得物は納刀された刀、名は羅刹。


「じゃあ、行くわよ」


「クォォォォォォォォォォォン!」


 その一声で摩侯羅迦が扉を破壊して突っ込んで行った。

 扉の向こう側には様々な得物を持った者達がいる。しかし、摩侯羅迦は一瞬にして数体の死体を築き上げる。喉を食らい、胸を切り裂き、腹を貫く。ゴミのように目の前にいる兵を‘破壊’する。

 タナトスと緊那羅はゆっくりと歩きながら、近付いて来る者を一瞬で斬り伏せる。決して天竜が弱い兵を揃えているわけではない。言うなら、それは誤算。例え量を集めたとしても、タナトス達には無意味な事だった。

 しかし、目の前には大量の兵が分厚い壁を作っている。いくらタナトスと緊那羅と言えど、これだけの相手はキツい。

 タナトスは妖しい笑みを浮かべ、掌を目の前の群に向けた。


「グロージョン」


 その瞬間、目の前にいた兵は、腐り、死体というのもおこがましいような醜い姿となってしまった。緊那羅は口を抑えながら、タナトスを睨む。

 タナトスのグロージョンは得物で傷付けた相手を、傷口から腐食させる神技だった。しかし、今は空気すらも侵食し、対象範囲内を腐食させる力と化した。


 摩侯羅迦が大暴れしながら、どこかへ消えてしまい、タナトス達の前に人がいなくなってしまった。その時、目の前に3年前に見た忌々しい存在がいる。


「派手に暴れてますね。しかし、ここで終わりです」


「一人で来るとは良い度胸じゃねぇか」


「阿修羅を返してもらうわよ、天照」


 そこにいるのは鮮やかな着物に身を包んだ天照。手には得物である薙刀、名は悲哀の薙刀を握っている。

 緊那羅は構えたが、タナトスは掌を天照に向ける。


「グロージョン」


 天照が瞬時にその場から離れると、立っていた所が腐食する。目に梵字を浮かべて、悲哀の薙刀を後ろに振るうと、緊那羅の羅刹と交差する。


「レイ」


 天照は牽制程度に、とタナトスに向けて指先から熱線を照射するが、案の定軽々と避けられてしまった。そのまま緊那羅に向き直り、指先を向けた。


「まずはお一人」


 完璧なタイミング、緊那羅はバックステップを踏んでいたが、今からではもう間に合わない。

 天照が不気味な笑みを浮かべると、指先から熱線が照射された。緊那羅はレイに向けて羅刹の切っ先を向ける。


「シンパシー」


 緊那羅の切っ先から平面状に空間が歪むと、レイはあらぬ方向へと軌道を変えた。これにはさすがに天照も困惑に表情を歪める。


「まさか振動で空間を歪めたとでも言うのですか?」


「そんな分析なんてしてる場合じゃないぜ?」


 天照の後ろには既にスケイルを振り上げたタナトスがいる。スケイルを振り下ろすと、後ろを向いたままの天照が防御の体勢に入る。タナトスは直前で軌道修正をし、防御の合間を縫うように振るうが、緊那羅に向いたままの天照はスケイルの柄を掴んで防いだ。


「はっ!?テメェ後ろに目でも付いてるのかよ!?」


「そう捉えてもらって構いません」


 タナトスは天照を引き剥がすように間合いを取ると、再び構えた。天照を挟むように構える緊那羅とタナトス。

 しかし、天照は耳に手を当てて顔をしかめると、その場から消えてしまった。






 ニヨルドとユスティティアの前には大量の忍がいる。かなり古典的な格好だが、彼らが纏う空気は徒者ではないのを物語っている。

 ニヨルドとユスティティアは腕輪に触れた。ニヨルドの得物はナイフ、名はティルヴィング。ユスティティアの得物は剣と盾、名はスケルグとフレッグ。


「エクスペンション」


 ニヨルドの得物は巨大化し、二振りの剣のようになった。ナイフですら近距離戦で戦えるニヨルドが、剣を持つという事は遠距離も近距離も全てがニヨルドの範囲という事。

 二人は走り出すと、天竜の忍が散り散りとなる。一瞬で包囲されるが、ニヨルドは笑みを浮かべて大量のティルヴィングを敵ではなく、散り散りに飛ばした。


「ファイヤーワークス!ファイヤーワークス!ファイヤーワークス!」


 ティルヴィングは花火のように散り散りに増えると、天竜の忍ごとニヨルド達を包み込む結界のようになった。


「これじゃあアタシ達まで危ないの」


「僕がそんな馬鹿なわけないでしょ?」


 ニヨルドが包囲しているティルヴィングにティルヴィングを投げると、数秒後に何かが倒れる音が聞こえた。ユスティティアが音の主を見ると、背中にティルヴィングが刺さった忍が倒れている。

 しかし、それが合図となり忍が一気に二人に襲い掛かる。素早い連撃を使い、手数で圧倒する忍達を、真っ向から手数で対抗する二人。軽々と素早い攻撃を防ぎ、それを上回る速さで相手を地に斬り伏せる二人。

 それに加え、連撃の途中でニヨルドはティルヴィングを投げ、様々な方向から敵に攻撃を仕掛ける。まるで渦潮に飲み込まれた海賊を、海が嘲笑うかのように場を支配する。


「弱いねぇ」


「油断大敵なの」


 ニヨルドは自分が戦いながらもユスティティアの戦いを見続けた。祝融に鍛えられただけあり、その無駄がなく素早い動き。‘実は’3年間、死に物狂いで修行したニヨルドでも戦いたくないと思う程。

 祝融曰わく、鍛え始めは所詮神選10階レベルだった。しかし今は、明らかに神選10階の頃より強くなったニヨルドに匹敵する。天才、モリガンやニヨルドが3年前に言われた言葉。しかしこれを見たらそれも戯れ言にしか聞こえない。それ程ユスティティアは強かった。


 二人が目の前の忍を掃討し終わった時、今までとは別格の気配を感じた。二人が後ろを向くと、そこにはキャップを深く被った少女、月夜見が立っている。

 月夜見の手には不浄の苦無が握られていた。それが示すのは敵意。二人も今までのままではキツいと判断し、気を引き締めて構える。


「サモン・朱雀」


 月夜見と二人の間に、不思議な紋様が現れ、そこから朱色の大きな鳥が現れた。


「何かヤバそうなの出てきたよ」


「向こうも本気なの」


 二人は口を開けながら、月夜見が召喚した朱雀を見上げる。


「ここは、通さない」


 月夜見が手を振ると、朱雀は翼を羽ばたかせ、無数の燃えている羽を二人に向かって放った。

 ニヨルド達は構えると、一気に羽を撃ち落とす。そして、一気に月夜見に向かって走って行った。

 しかし、それを阻むように朱雀は炎を吐く。


「リフレクト!」


 ユスティティアが炎を受けると、反射して月夜見に向かう。


「水遁・瀑」


 月夜見の目の前に水が現れ、弾けるように炎を打ち消した。


「ユスティティア下がって!」


 ユスティティアはニヨルドの後ろまで一気に退避すると、ニヨルドは地面にティルヴィングを突き刺して両手を空に向けた。


「ツナミ!」


 後ろの森から巨大な津波が現れ、空中にいる朱雀もろとも月夜見を飲み込んだ。


「廻れぇ!」


 ツナミは月夜見を飲み込むと、その場で回り始めて渦潮を作り出す。ツナミの破壊力をその場で停滞させる、自然型の神技でも最強クラスの力を増幅させた。


「す、凄い」


 これが自然界で最も恐れられている海の力。いつも笑顔でふざけているニヨルド、ユスティティアにはニヨルドが本物の悪魔にも思えた。

 しかし、ツナミが無くなり海に浸食された大地に、月夜見の亡骸はなく、見るも無惨になった丸太のみ。







 一人で暴れまわっていた摩侯羅迦は、血まみれになりながら一人の男の前で止まっていた。その男とは素戔嗚。


「拙者はハズレか」


 素戔嗚はつまらないというオーラを体から出しながら、腕を組んで摩侯羅迦を睨んでいる。摩侯羅迦はそれを全く意に介さず、体を沈めるとその場から消えた。凄まじい金属音と共に、素戔嗚の破壊の剣に噛み付いている摩侯羅迦の殺気。そして、素戔嗚の苦笑いと冷や汗。


「何か楽しくなりそうじゃねぇか!」


 素戔嗚の体に梵字が浮かび、摩侯羅迦を引き離すように破壊の剣を振るう。


「………マジ?」


 後ろを見ると未だに破壊の剣に噛み付いている摩侯羅迦。そう、凄まじい力で摩侯羅迦を吹き飛ばしたはずだったが、あの力でも離れない。もし噛まれたら、一瞬で引きちぎられる。急所ではなくとも、致命傷はさけられない。


「面白いじゃねぇか!」


 摩侯羅迦は破壊の剣を離し後退すると、再び素戔嗚に向かって突っ込む。素戔嗚は拳を振り上げると、真っ正面から摩侯羅迦を殴った。痛みで顔を歪めるが、そのまま摩侯羅迦を掴んだ。


「ツイスター!レイン!ライトニング!」


 二人を竜巻が包み、激しい雨が降るのと同時に凄まじい落雷が摩侯羅迦を貫いた。

 本来ならば即死のはずだが、摩侯羅迦の殺気は消えず、しっかりと素戔嗚を睨んだ。


「ま、まさか、全身が武器であり防具でもあるのかよ?」


 摩侯羅迦の得物、銀狼は全てが刃のような破壊力、盾をも凌ぐ防御力。それはただの得物でありながら、神技をも凌ぐ力を誇っている。


「燃えてきたぜぇ!」


 素戔嗚は間合いを取り構えるが、顔をしかめて耳をおさえた。


「…………………ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 そのまま走り去って行った素戔嗚。摩侯羅迦は犬座りで首を傾げると、金属を揺らしたような遠吠えをした。

 投稿が遅れてしまった事をお詫びします。


 梅雨ですね。凄いジメジメして過ごしづらい毎日が続いてます。

 暁は早くも夏バテ寸前です。ってか肉体が悲鳴をあげてます。

 階段を降りるだけで太ももが吊りそうになるのはやっぱりヤバいですよね?

 ちょっと体の事を労ってやらないともうそろそろ倒れるんじゃないか?という勢いです。

 皆さんも体を大切にしてやって下さい。

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