鈴と凛
エルフ教室豆知識
全知神は全てを記憶し、消滅して次の全知神に変わっても記憶を共有する。
創造神は記憶の共有はなく、力の強さの引き継ぎもない
ホロロロ
不思議な声が聞こえる、鳥のような虫のような。窓の外は真っ暗でぼんやりと白く光る星が見える。
結局行くあてのない私は長老と一郎の住むこの家に住まわせてもらうことにした。
世界の神々が私を殺そうとしていることはわかった、初めは全知神と聞いて、すぐに場所がバレて殺されるのか、なんて、安易なことを考えたが、長老の話では、全知神とはこの世界が生まれた時から見たり聞いたりしたことを忘れることなく覚えるらしい、消滅して代替わりしても性格は反映されないが、情報は全て引き継がれるらしい。確かに、世界を治めるという意味では、失敗を忘れないことはあらゆることにおいて有利だろう。
次に創造神だがこれがかなり厄介だ、簡単に言えば無敵、そういう感じだ、あらゆる魔法が使えるらしい、火や水を出すなんてことは朝飯前で、地形を変えたり、感情を読んだり、記憶操作したり、なんでもありらしい、とは言え、強さが存在するらしく、創造神は力を使う時、背中に羽が広がり、それが何枚かで強さがわかるのだとか。
全部で10枚羽があるらしいが、10枚広げたことがあるのは始祖全知全能神ゼウスのみらしい。今現在一番強いのは、2無の種族悪魔の創造神、サタンだとか、そのサタンでも5枚が限界らしい。
改革者が消えたことについても聞いてみた、死んだ、消滅した、ではなく、消えたとしているのは、まさに文字の通りだった。いついなくなったかがわからないらしい、もっと言えば本当にいなくなったのかもわからない、一説によると4無に隠れているのだとか。ただ、消えるタイミングは決まって世界に大きな変化をもたらした後。50年前の第4の改革者アマテラスも4無を作った後すぐに姿を消した、なので、力を使い果たして改革者は消えるという説が有力らしい。
そう言えば第4改革者は50年前、第3改革者は300年前、第2改革者は2万年前、第1改革者は3万年前、と、出現する頻度はバラバラらしい、第1改革者ゼウスに関しては、ゼウスが生命体を作ったので本当に3万年かは定かではない。
今日教わったのはこんなところだ、世界の成り立ち、なぜ私、改革者が狙われているか、今まで改革者が何をしたかなどある程度は把握できた。
となると、次に行わなきゃいけないのは創造神としての能力の発現だと思った、イレギュラー創造神とはいえ能力は創造神とほとんど変わらないらしい、それに、最高神達からどれだけ隠れていられるかわからないし、見つかれば、今日の話を聞く限り、何もしないと言ったところで、見逃してもらえるとは思えない。
かといって、数日練習した程度で5枚の羽を持つサタンに匹敵するとは思えないが。
それに、長老は前の改革者アマテラスと話したことがあるそうだが、記憶喪失なんてしていなかったらしい、目覚めてすぐに自分のやるべきことを決めていたんだとか、自分の名前さえわからない私にこれからいったいどうしろというのだろう、この世界は。
「どうしたもんだろうね」
ぽつりと呟いた独り言が深淵に落ちていくと同時に、夜食べた獣の肉が美味しかった、などと思い出しながら、疲れていたのか眠りについた。
・・・
・・・・・・
ピピピッピピピピッ
「うるさい・・・」
ゆっくりと体を起こし、布団の上にある目覚まし時計を止めようとする。
「はっ!」
布団の中から急に出てきた腕が私より先に目覚まし時計を止めた
「今日も目覚まし時計早押し対決、私の勝ちだね、凛!私に勝ちたいなら、目が覚めたらすぐに時計を押さないと、そんなにゆっくりしてたら私には勝てませーん」
こいつの名前は、鈴、名前の通りいつもうるさいやつだ、その明るさに救われることもたまにはあるのだが。しかし、なぜだろう、とても眠い、昨日は特に仕事もなかったはず、鈴と出かけたなんてこともない。なんでだろう、ぼーっとする。
「ねぇ、凛、聞いてるの?いつもなら、すぐにうるさいとか言ってくるのに、今日はどうしたの?元気ない?キスして元気あげようか?」
鈴とは大学からの付き合いだ、髪はあのころは短めで今は私の真似をして肩より少し下まで伸びている、私は同性愛者ではないが周りの意見も含め可愛いと言える。同性愛者らしく、私は告白された。丁寧に断ったが、鈴は頭がおかしいので、ストーカーされた挙句、監禁され、詳しくは言いたくないが、いろいろされた。その後、鈴とは、まあ、いろいろ、とにかくいろいろあって、性的な行為禁止を守る限り、同棲するということで話は落ち着いた。とは言え、常に、お風呂は一緒に入らされるし、生理の時は心配だからと平気でトイレに入ってくる、隙があれば、おっぱいを大きくするためと触ってくるし、まあ、いろいろ大変だ。
「・・・・・・性的行為禁止だよ」
まあ、こんなこと言ったって無駄だ、鈴は頭がおかしいから、私が少し本気で怒らない限り引かない。
「性的行為は、性欲を満たすための行為のことだよ、元気をあげるためのキスは、元気をあげるためにやるんだから性的な行為には含まれません」
そう言うなり、背中に腕を回して抱きついてくる。
「・・・鈴、やめて」
「なんで?」
「元気はあるからいいの」
「凛がそう自分で思ってても、1番の理解者の私には元気がないように見えるよ」
「・・・あのね、キスしても私は元気になりません」
何か、鈴が反論しようと口を開く前に、会話を終わらせねば。
「とりあえず、顔洗って、朝ごはん食べよ、今日は体がだるいから、朝ごはん食べたら私は風呂入るね、そしたら少しはシャキッとするだろうし」
反論を考えていたであろう鈴の顔がパッと明るくなった、
「そっか、わかった!私も、体だるいから朝ごはん食べたらお風呂に入るね、一緒に入ろうね、いい?」
まあ、こうなるだろうとは思っていたが、風呂で鈴が余計なことしてきたら怒ってやれば、今日1日は平和に過ごせるはずだ。
「いいよ」
「うん、絶対だよ、絶対一人で行かないでね、一人で決めないでね、一人でかかえこまないでね、何かあってからじゃ遅いから、私に何かあれば相談してね、私があなたの1番の理解者になってあげるから」
なんだろう?鈴の様子がおかしい、もともとおかしいが、なぜ、風呂の話をしてるのに、意味のわからない話をするんだ?
いや、考えても無駄か、鈴は頭がおかしいからな。
「はいはい」
リアルのヤンデレは恐ろしい、とか、ヤンデレは二次元だから良い、とか言ってる人たちの気持ちがよくわかる。
抱きついてる鈴をどかして、朝食の支度を始めた。
・・・
「凛どう?私の作った朝ごはん美味しかった?」
美味しいもなにも、作ったと言っても目玉焼きだけだ
「うん、いつも通りおいしいよ」
機嫌を取るためだ。
「そっか、卵を焼いただけの私の料理が美味しかったんだね、それはきっと、凛が私を心の中では愛してくれてるから美味しく感じたんだよ、愛の調味料だね」
相変わらず、何を言っているんだこいつは。
「それはないね、風呂先に入るね」
「私もすぐいく、腕はお風呂につけちゃダメだよ、半身浴しててね」
なんども思うが、何を言っているんだこいつは、今日はいつも以上に変な気がする。
脱衣所に入ると
ザーーー
シャワーの音が聞こえる、おかしいな?誰も入っていないはずなんだけど、鈴がシャワー出しっ放しにしてるのかな。
「もう、しかたないな」
シャワーを止めるためにドアを開ける
「え?」
人がいる、私と同じで髪が肩より少し下まである、左手の近くにカッターが、右手は湯船に浸かっている、排水溝に向かって赤い濁った水が流れている。
どうしよう、なんだろう、すごく怖い、鈴を呼ばなきゃ、この状況も何か知ってたりするのかも、というか、これは、鈴のいたずらかな?今日はエイプリルフールだっけ?ホラー系だからハロウィン?あれ?何考えてるんだ私
「呼んだ?凛」
ビクッと少し肩を揺らす、振り返ると、無表情の鈴がこっちを見て立っていた
「う、うん、鈴、これ何?私をびっくりさせようとしてるのかな、だとしてもやりすぎだよ、本気で怒るよ」
「びっくりさせようとしてるのはどっち?」
無表情のまま詰め寄ってくる。
「死んだのは私から逃げようとしたの?私のことはそんなに信じられない?なんで一人で抱え込むの?どうして爆発するまで私に話さないの?許さないから、たとえどこに行ってもあなたを見つける、凛もそれを望んでくれてる。そうだよね、凛」
ゴーンゴーン
なんだろう、大きな鐘がなるような音が聞こえる、そう思った途端、鈴の体が光った、あまりの眩しさに目を抑える。
「必ず迎えにいくね」
急に眠くなってきた、さっき起きたばかりなのに、ぼんやりと鈴が見える、背中から何かが生えてるような、綺麗だな、私の好きな赤色の羽根がいっぱいだ。
ああ、眠い
・・・
・・・・・・
ピロロロー
「うるさい・・・」
鳥なのか、虫なのか、いや、今回は鳥だな。そんな鳴き声が頭に響いた。
コンコン
「おい、お前、起きてるか、朝飯ができたぞ、降りてこいよ」
一郎の声だ
「ありがとう、すぐ行くね」
「おう」
私の返事を確認するとすぐリビングへ戻って行く足音がした。
「なんか、今日はよく眠れなかったな、何か懐かしい、怖い、夢を見たような・・・思い出せない、まあ、夢なんてそんなもんか」
今日から、できる限り早く、創造神の力のことや、この世界の常識も知らなきゃいけないし、何もしないで住まわせてもらうのは申し訳ない、手伝いもさせてもらわないと、神々がどれぐらい今動いているのかも知りたいし、あまり長居もできない、親切にしてもらった人を死なせることはしたくない。
「はぁ〜」
考えても始まらない、行動しなきゃ、まずは朝ごはんだな。
エルフ教室豆知識
創造神の羽の色は金色である。改革者も同じく金色。
強さは羽の数で決まる、作られた神は羽の最大数は1から3枚。創造神は最大10枚。
4枚までは楽に発現できるが5枚目を使うのは難しい。次に、8枚目を使うのはさらに難しい。




