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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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普通の世界

 身も蓋もない親の話で良かったのか、俺はそっと田邊さん(師匠)の顔を見上げる。

「当たり障りのない話で濁したり、盛ったりしてこなかったから、まあ合格かな。

 乕尾くんらしい話で楽しかったよ」 

 田邊さんはそのように感想を述べてくれた。変に盛ってウケを狙いに行かなくて良かったと安堵する。

「乕尾くんのご両親がどのような人かを聞きたかったのではなく、君がどう家族というネタを解説してくるかを聞きたかったんだ」

「私はご両親の事を知りたくて聞いていたけどね!

 思っていたよりも面白い人で楽しめた!」

 田邊さんの言葉にテンポよく有子さんが続き俺はどちらに反応すべきか困る。

 田邊さんが余計な事は言うなと叱るように有子さんを軽く睨み、有子さんは肩を竦め二カリと笑って誤魔化した。

「乕尾くんは最初、自分の両親を普通で面白くないと言っていたけど、普通ってなんなんだろうな。

 そもそもこの世の中の大半は普通だ」

 俺はコチラに話しかけてきた田邊さんの言葉をじっくりと考える。普通なモノが多いから、特別なモノが目立つそれは当たり前なのかもしれない。俺は頷く。

「家庭なんて日本にある家の殆どが、所謂一般家庭。

 君も自分の家族は普通の平凡な人達と最初言ったが、逆に普通って結構幅広い世界なんだ。そこには色々面白いモノがちらばっている所でもある。

 それに家族というのはなかなかネタの宝庫だとも思わないか?

 それなりの時間共に過ごしているから面白い話は一つや二つあるし、本人は普通だと思っていても他の人から見たら普通で無いこともあったりする」

 確かに不思議なローカルルールが産まれがちなのも家族という小さな社会。

「一般に普通と思われているモノに個別性を見出しそこを魅力として語れるか? それがこの我々の仕事でもある」

 田邊さんはそこで言葉を切る。

 俺はこの会社で皆がしている仕事を思い起こす。色んな素敵なお店や商品を紹介したり、素敵な過ごし方の提案。

「俺たちが取材しているのは街にある一見よくあるような普通のお店が殆どなんだ。世界的な職人が仕事しているような特別なお店ばかりではない。

 でも、そこならではの素敵さを、いかに見つけ人に紹介出来るか? それをしているのがウチの仕事だ。

 それに普通な世界の中の方が面白い何かが埋もれているもんなんだよ」

 確かにミシュランガイドに載っているとか、創業百年とか、皇室御用達とか、そんなお店は一部だろう。しかしそんなのではなくても素敵なお店はいっぱいある。

 根来山森商店街のように。

 確かに知らない人が見たら普通の肉屋や八百屋等のお店が並ぶありふれた商店街。でも俺から見たら素敵な店ばかり。

 俺は脳内で根来山森商店街をぶらりとうろつきショップを楽しむ。やはり最高に落ち着くし楽しい素敵な場所だと再認識する。

「物事を調べて纏めるという訓練をしてきたから、一歩先に進んでみるか? 

 今度は君の眼で見て感じたものをアウトプットする訓練をしよう」

 田邊さんはそう言って笑う。

 俺は背筋を伸ばし次の言葉を待った。

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