表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
6/65

カレーの日

 このアパートはヤクザな猫が窓枠に居ついているものの、人間関係はいたって平和。

 しかし一つだけ非常に困った事があった。それは両隣の部屋からのご飯の香り。右隣のシングと、左隣のスアさん、それぞれからカレーな良い香りがしてそれが辛い時がある。カレーなのかは分からないが、香辛料の効いた良い香りが、俺をいつも襲ってくるのだ。空腹時で家に目ぼしい食材がなくなっていただけに辛かった。まさかご飯をもって隣に突入する訳にもいかない。


 ここ数日はおにぎりとサバのおやつ用煮干しがおかずで、夜はバイト先であるネットカフェのドリンクバーにあるコーンスープで凌いできた。


 何故そんなに苦しかったのか? かなり節約したつもりでも、新生活をスタートさせるということは何かと色々お金が必要になる。思ったよりも痛かったのは教材費。履修した科目ごとに教科書やらなんやらがかかる。大学の教材は教科書というより本で。教授が出している自分の本を単に売りつけているだけではないかと思うくらい、色々買わせてくる。白衣とか本当に使うのか? と思うがそういったものも買わされる。合わせると結構なお金となっていた。幸いな事に米はあったので、干物が尽きてもそれで頑張ってきたのだ。


 そんな日々も昨日で終わった! バイト料が入ったのだ! しかも五日後には実家からの仕送りも入金される。新生活最初の経済危機は無事なんとか乗り越えられた。来月はもう教材追加で必要なんてことはないだろうから、かなり楽に過ごせる筈。

 そこで俺は数日前から進めていた計画を実行に移すことにした。


 計画それは……香り高いカレーを作ること! 


 香しいスパイスの香りに晒され続けてスッカリお口がカレーとなっていたのだ。そして自炊初のカレーを作るにあたって、それはもうしっかり準備をしてきた。

 カレーなんて、ただ鍋に材料をぶっ込んで煮て、ルーを入れたら良い! そんな軽い事を言ってはいけない。そんな甘い世界ではないのだ! カレーだけに。その世界は深くそしてとてつもなく広い。

 具材は牛だけでなく豚でも鳥でも魚介でもなんでも良く、野菜も何入れても美味しそうだ。ネットで調べていくうちにその、魅惑的なカレーなる世界にのめり込んでいく。テンションも上がる一方。


 色々試したいレシピとかもあったが、自炊初心者の俺にはまだまだハードルが高いのと、初めて聞くような香辛料も多く使われており、それを揃えるのも大変そうだ。

 また、カレー道の第一歩としては、基本のカレーを作るべきだろう。俺は牛肉と玉ねぎとジャガイモと人参を用意した。基本とはいえ、部屋に今あるインスタントコーヒーと家にある数少ない香り野菜であるニンニクを隠し味に入れてみようかとかも考えてみたりもする。


 ルーは四杯分でひと塊になっているので、ここは男らしく四人分を作ることにする。逆に一回の調理で数日分のご飯が作れるってそれはそれで幸せかつ、お得な気もした。

 玉ねぎは食感を残す分と、炒めて甘味とコク出しをするものを分けて入れて作ると格段に美味くなるとあったので俺は半分の玉ねぎを刻んでニンニクともにジックリと飴色になるまで炒め、表面をカレー粉を塗し焼き付けた肉と野菜を入れて煮込む。もうこの段階で既に旨そうな香りが立ち込めている。そこで炊飯器の存在を思い出し慌てて炊飯ボタンを押す。


 危なかった、カレー作りでやりがちの、カレーはあるのにご飯が炊けていないという失敗。自分でしでかすと笑えない。再び鍋に意識を戻し結構激しく浮いてくるアクを取ったり時々混ぜたりと付きっきりでお世話をする。なんだろう楽しいし、鍋が愛しく思えてくる。

 パッケージの指示を守り、一旦火を止めてからカレールーを投入する。すると一気に鍋はカレーとなり、その劇的な変化に感動すらした。そして隠し味にインスタントコーヒーを一匙入れて溶かし入れる。


 ふと、視線を感じて正面を見ると、台所の前の開けた窓の向こうにシングがいた。

「おっ、シング?!」

 俺が声をかけるとシングは窓越しに、挨拶してくる。

「トラが、楽しそうだから見ておった」

 そう言われると恥ずかしい。

「今日はカレーだから」

 俺は意味もなくそう言って宣言して、少し後悔する。カレーといったらシングの国が本場! 日本のカレーなんて邪道でしかないだろ。しかしシングはニッコリ笑う。

「そのようだな。

 しかも、なかなかそのカレー美味そうだ。

 一緒に食べても良いか?」

 え? 逆にそんな事を言ってくる……? もしかして俺もご飯もって突入しても良かったのだろうか? とも後悔する。

 とはいえあまりにも無邪気な笑顔で言ってきたことと、生まれて初めて作ったこのカレー、誰かと分かち合いたかった気持ちもあり頷いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ