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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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見えない未来

 本が発売され、商店街でまたサイン会的な事をさせられたものの取り敢えず俺の生活そのものは三ヶ月ほどして落ち着くことになる。

 同じ出版社の系列の雑誌にも取り上げられたりとかはしているが、本屋で平積みになることもなくなった。

 俺の本のあった場所は新刊が並び、俺の本は棚に行儀よく並んでいる。

 それを、目立つ所に移動させるという恐ろしい運動が親戚や友人の間で密かに行われたりするらしいが聞いてない事にする。



 ネットのスゴい所はエゴサーチするまでもなく、俺のTwitterアカウントに直接感想を書いてくる人が多いこと。概ね好意的な意見が多い事にホッとする。

 俺のサバに対する行動が偽善的な自己満足とか、障害を持った猫を題材に金儲けするなんてあざといとか。そんな意見もチラホラ入ってきた。

 偽善的な自己満足であろうと、サバとモノは今は俺の生活に当たり前にいる家族。金儲けしたつもりもないからそんなに傷つく事もなかった。

 しかも金儲けと言うが、彼らが言うほどお金を儲けた訳でもない。貧乏の俺にとっては小さくはないが、かと言ってそれで生活が変わる程でもない。

 俺が怪我とか病気した時、サバとモノが病気にかかる事もあるかもしれない。そんな時に予算が出来たから少し気持ちは楽になった。

 Twitterやブログでの書き込みで増えたのは同じように怪我を負った猫さんの飼い主からや、さくらねこを飼うにはどうしたら良いのか? といった相談。それにできる限り丁寧に答えている。

 一つ困った事は本を読んだ知り合いからの不満の声。主に左隣さんから。

「俺とトラは親友だよな? それなのにこの本に殆ど登場しないのはどういう事だ?」

「ジローはあんなに活躍しておるのに! 俺は隣に住む先輩という名前でチラリと出てくるのみ!

 何故イケメンで爽やかなインドの若者と紹介しない!」

 イケメンはともかく、こんなにグチグチいつまで文句言う男の何処が爽やかというのだろうか?

 確かにジローさん以外の人物は、【アパートのみんな】とか、【隣に住む先輩】、【隣のお姉さん】【上の階のお兄さん】と暈して表現している。

「余り皆を出したら悪いと思ったんだ」

 そう答えてもシングは不満そうである。

 ジローさんは俺にとって猫飼いの師匠。それだけに文中にジローさんのありがたい言葉も多いので、許可を貰い名前を出させてもらった。そして本の中には薮先生も登場しているが、本人の希望で名前は出てない。そんな感じで人を出すというのも大変な事。

 俺との関わりの多い為にブログではよく登場しているシングやスアさんだが、今回の本が猫を中心にした内容を求められた為に出てくる人物も削られたという経緯がある。

「次の本では、しかと出すのだ!」

 そんな事をシングは言ってくるが、一冊本を出しただけでも奇跡である。次があるとは俺には思えなかった。



 気がつくと俺は大学三年生になった。就職活動準備が始まることになる。柑子さんは就職活動本番となり会社説明会等に参加して忙しい毎日を過ごしているようだ。

 てっきり薮先生の元で働くのかと思っていたが、そのつもりは無いという。

 希望はトリマーだが、ベットフード等の会社も視野に入れて動いているらしい。

 シングも本格的に就職活動が始まりスーツ姿で出かける日も増えている。



 そうして皆が未来に向かっている中、俺は多くの就職資料を前に途方に暮れていた。俺は何になりたいのか? どういう未来を描きたいのか?



 大学で学んで来たことから出来るであろうSEやプログラマー方面から調べて、次に性格判断テストで適正と出てきた販売営業とかも調べて余計に悩みを深くしていた。俺がやりたい仕事って何なのか?

 去年シングはインターンシップに参加して「大層有意義な時間を過ごせたぞ」と言っていた。ならば俺も行って見るべきなのだろうか?



 しかし、どの業界の企業のインターンシップに参加すべきかそこで悩む。それをシングに相談してみるとひどく驚かれた。

「お前は作家になるのではないのか?!」

 俺はその言葉にため息をつく。

「あのね本を一冊出したからとそれで生活出来るものではないよ! それに次出せと言われてももう書けるものもない」

 シングは首を傾げ俺を見つめてくる。

「そういうものなのか? お前の本俺は好きだぞ! 写真が多くて文章も簡単だから外国人の俺でも楽しめる」

 この言葉は褒められているのだろうか? 俺はなんかおかしくて笑ってしまう。

「ありがとう」

「お世辞ではないぞ! 本音だぞ」

「分かっている。だから嬉しい。シングにそう言って貰えるなら出して良かった思った」

 そう言うとシングは満足そうに笑った。

「そうであろう、そうであろう」

 二次選考へと進んだ会社に提出するという小論文の添削を再開することにした。

 その小論文はシングのその会社で働きたいという熱意が籠っていて面白かった。面白いというと失礼かもしれないが、いいアピールをした文章に見えた。誤字がやや多いのが困った所だが……。

 仕事をするという事のアプローチが独創的で俺はそこに魅力を感じた。

「シングこそ、楽しい文章書くよな。俺が人事の人ならこんな楽しい文章書くシングに来てもらいたいと思うのにな」

「なら、トラ。さっさと明日からでも就職して人事部の人間になり。俺に内定を出せ!」

 シングは無茶な事を命じてきた。


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