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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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祭り前の賑やかさ

 二年目も東京で年を越す事にした。コチラのこの時期のバイト代の高さと、猫二匹連れての帰省がキツいから。

 またこのアパートと人間関係が既に俺の家と家族という気分で、更に帰るという事の意味が見いだせなかった。そう言うとシアさんには怒られた。

「私達を家族と言ってくれるのは嬉しいけど、御両親も大切にしなきゃダメよ。猫ちゃん達なら私が見てあげるのに」 

 そう怒られた正月にまた皆の前で実家に電話を掛けさせれる。そして春休みに少しだけ帰る約束をさせられた。

 とは言えアパートで実家より豪華で美味しいお節と俺の母親直伝の筈なのに遥かに美味いお雑煮を食べ楽しい新年を迎えた。

 昨年と違うのはノラーマンの二人は仕事でアパートに居らず欠席したこと。

 二人は嬉しい事に忙しくなり今ではお笑い芸人の仕事のみで生活しているようだ。最近はツナギ姿でアパート出かける事もない。

 もう一つ変わったのは柑子さんが挨拶に来て。皆で一緒に初詣をしたこと。近所の神社情報アパートの皆と別れた後、薮家にも新年のご挨拶に行くとお年玉を何故か頂いた。



 そんなまったりとした正月を過した後にまた出版の事で色々大変な事が待っていた。

 俺の本【俺の部屋はニャンDK】の出版の情報は解禁となり、その宣伝でバタバタしたからだ。

 猫雑誌やネットで紹介され始めただけでなく、俺自身もブログ、YouTube番組【ねこやまもり】での宣伝した。すると俺の家族や知り合いが大騒ぎする事になりその説明と対応に俺は追われる事になる。

 こういう事は守秘義務がある為に情報解禁の前に公表は出来ない。その為極々一部の人にしか伝えていなかったのだが、話せなかったから水臭いと怒られた。



 有り得ない事に写真展とサイン会なんてものが決まってしまった。

「サイン会ですか?! 俺そんなサインなんて大それた事、出来ませんよ! そもそも俺のサイン欲しがる人なんているんですか?!」

 色校正を持ってきてくれた担当の編集者の我有さんは当然という感じで頷く。

「あら? 宮尾からサイン会したことあるって聞きましたけど。かなり人が並んで盛況だったと。その感じ出してくれたら良いから!」

「アレは事故のようなもので……皆さんオレがなんか有名な人と勘違いされたみたいで!」

 我有さんはバンと、机をたたく。

「それこそが、コチラが求めていることよ!

 いい? 本はただ書店に並んでいるだけでは売れないの!

 面白そう! と、手に取って貰わなければならないの! だからネットとかでも、宣伝するし。サイン会とかのイベントに絡まして『何だろう?』 と、注意をひいてナンボなの!

 君の本なのよ! 君が売らなくてどうするの!! 」

 そう力説されると言い返せる訳ない。

「……はい……」

 そう答えるしかなかった。



 そして悩んだのはサイン。まさかこの俺がサインについて悩む日が来るとは思わなかった。そしてサインを考えるという事が、厨二病の人をみたいで恥ずかしかった。

 名前はブログをしている名前のまま【トラオ】とした。俺の苗字名前共に微妙に読みづらいからその方が親しみ易いだろうということもありそうなった。

 そうなると【トラオ】とカタカナで書くとなんとも間延びした緩すぎる感になる。

 そこで【Torao】と筆記体で書くことにしたのだが、何処まで崩すのがが悩ましい。余りにもサインっぽくすると『なに気取っているの? この人』と思われそう。

 かといって素直に書くと「買い物する時のサインかい!!」とが言われそう。

 最後の【o】を猫にして可愛くするのも「ヤローがアイドルみたいなファンシーなサインするなよ」とか突っ込まれそうだ。

 アパートの皆や柑子相談すると、逆に皆が張り切りそれぞれが俺のサインを作って来てくれて更に混乱と悩みを深くしてしまう。そして人気投票がなされ「orao」部分の最初の【o】が頭、最後の【o】が尻尾で猫のイラストっぽくなっているサインに決定していた。考えていたものよりさらにファンシーになっていた。

 ドヤ顔してそのサインを突きつけてくるみんなにNOは言えるはずもなくオレはその後皆の指導の元サインの練習を一時間させられた。



 青春の思い出作りと社会勉強と軽い気持ちで始めた出版という出来事。こうして多くの人が売るために広報となり、私設プロデューサーとなり、個人的営業となり本を売ろうと動いてくれている。その事に驚きつつも感動していた。

 そしてこの事は大変な事だったのだとここに来て改めて理解した。それだけ多くの人が携わり支えられ応援され作り上げたモノ。

 俺も気を引き締めて頑張らないといけない! そう強く心に思う。同時に不安も大きくてなっていく。



 サイン会では態々俺の本を手に取り買ってくれる人にも感謝の気持ちを持って接しないといけない。

 どのくらい来て貰えるかは分からないが、その人に顔を合わせてお礼を言える。

 そういう意味ではサイン会は良いチャンスなのかもしれない。そう考えるようにする。例えそれが数人だけであってもシッカリ感謝を伝えよう。そう自分に言い聞かせる。

「誰も来なかったらどうしよう……」

 そんな弱音をつい柑子さんに漏らしてしまった。

 しかし柑子さんはニカッと笑う。

「それはないよ! 大丈夫!」

 と根拠ない断言をされてしまった。

 モノはいつものように能天気で気侭だったが、サバはなんか優しかった。俺にピトッと寄り添ってくれたていた。独り言で弱音を吐くと俺の腿に手をゾッと乗せブミッっと俺に何か応援らしき言葉をかけてくれた。人肌は心地よいというが、猫肌も温かく気持ち良いものだと知った。

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