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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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全ての事は学びに繋がる

 この話は、今までの流れの延長できたとは言えるものの、俺を驚かすには充分のインパクトがあった。



「何でも経験だと思うよ。やってみれば!」

 その相談をしたらジローさんは軽くそんな言葉を返してきた。青い目がいつもよりキラキラしていて楽しそうだ。

「でも、俺なんかが本を出すなんて! 素人の俺がですよ!」

 そう猫雑誌出している出版社から連絡があり、俺のブログをフォトエッセイとして書籍化しないか? という話をいただいたのだ。先日お会いした編集者の宮尾さん経由でその話が来た。俺のブログの猫部分をピックアップした内容を本にしたいう。

 つまり東京に越してからサバやモノ達と暮らすまで。

 その依頼に迷い悩み、一番口も固くそして人生経験豊富そうなジローに相談していた。

「だったらコレを機会に学べばいいだろ? 良いチャンスだ。学びの場を楽しめばいい。

 人に伝える文章はどういうものなのか? 何が自分の文に足らないのか? 知る良い機会だよ! それは就職活動する時にも役にたちそうだし!」

 考えてみたら、ジローさんは日本にくる、そして様々な体験をして学び、チャレンジをしで自己を高める。それを繰り返してきた人。だからこういう言葉を言ってくるのだろう。

 逆に俺はいかに目新しい事もない平凡で在り来りな人生を過ごしてきたのか? と思う。

「俺なんかが本を出しても売れるのかな? 出してコケたら?」

 ジローさんは笑う。

「それは君の本を出すと企画出し通してきた出版社が心配すれば良いこと。

 自費出版なら兎も角、出版社からの依頼で出すものなら君が責任取らないといけないようなことはないから。君が問題起こさなければ何か咎や損失を負うことはない。

 企画が失敗したらもう二度と本を出そうというお話が来なくなるだけだから心配することは無い。

 おじいちゃんになって孫に語る思い出作りの意味でもやってみたら?」

 そうジローさんに背中押されて依頼を受ける事にした。

 確かにそれは新鮮で楽しいのだが、思った以上に大変な作業だと思い知る事になった。

 一番俺が辛かったのは、自分の文章と改めて向き合う事。コレが半端なく恥ずかしい。

 校正の人に見つけられた誤字脱字の数々。指摘された誤用、改めて読むと意味不明となっている文章。無知から来る勘違いや情報不足の内容。

 そのため俺は辞書を手に国語を一から勉強する羽目になる。またさくらねこの事や、サバの治療について薮先生やジローさんやさくらねこの活動されている方に話を聞かせて貰い色々と調べ勉強をした。

 写真も改めて選び直し、よりサバ達の魅力を感じる写真を選ぶ。この作業には何故かサバとモノが手伝ってくれた。画面を叩いて邪魔していただけとも言うが……。

 ネットで誰でも無料で読んで貰えるものとは違い、お金を払って読んで貰うモノを作るという事の大変さというのを改めて感じた。

 俺のグダグダな文章を読み込んでシッカリ指導してくれた校正の人、素敵過ぎる装丁をデザインしてくれた人、そして学生で世間知らずの俺をフォローし続けてくれた編集担当の人とジローさんにはどんなに感謝してもしきれない。

 アパートのみんなんや柑子さんらの応援もあったから頑張れた。

 最終校を出しホッと一息つけたのは年末になってからだった。



 作業中ゲラの上に寝そべったりしてグシャグシャにしたり、上に香箱座りすることで辞書を隠したり、マウスやキーボード操作を阻んできたりと、散々邪魔(応援)してくれていた猫二匹に一応感謝しながらお世話していた。

 ひとまず作業が俺の手を離れた事の開放感からも二匹をモフモフ撫でながらまったりとしていたら玄関のドアがノックもなしに開く。

 友達からしてみるとココがこのアパートの怖いところだと言われる。部屋にいると当たり前のように外国人が入ってくる所が有り得ないという。

 ノックなしで入ってくるのはシングだけなのだが、皆何故かビビる。醤油か洗剤が切れたのかな? くらいしか俺は思わないのだが……。



「良かった。トラオおったな。悪いがコレ見てくれぬか」

 シングがやってきて、今度行く会社に出すというエントリーシートを見てくれという。もう会社説明会という名前で三年生向けのイベントも始まっている。シングは未来に向けて動き出していた。俺は忙しい日を過ごしていたが、自分のやりたい事はまだ見つけられていない。


 シングの文章は意外な事に普通、所々おかしな所はあるが外国人が書くにしてはまとも。

 この不思議な喋りは態としていた事が何となく分かってきた。この喋り方だとウケるからあえてこのままにしていたらそれがシングのスタンダードになったという。

 シングの文章を読みながら辞書を開くと、シングは何故か嫌な顔をする。

「なんか、トラ。最近ジロー並に細こうなったな。文章に対しては」

 俺は苦笑して顔を横に振る。とてもじゃないが日本語文章力はジローさんに叶わない。


 ジローさんは、この地域のさくらねこの広報誌。カルチャースクール用の冊子等に軽いエッセイを載せていたりするのだが、それが外国の人が書いたと思えない程美しい日本語で情緒溢れる文章を書く。それがいつもありえないほど素晴らしい内容なのだ。

 実は本も出した事のあるという意味では先輩でもあった。ただそれはマニアックすぎて売れなかったらしい。

『日本人に日本を熱く語っても興味持たれるはずはないよね。

 だからフランス語と英語で出し直したら、まあまあウケた』と笑っていた。

 つまりジローさんはあの面倒な校正作業を三カ国分したことになる。なんともスケールがデカくすごい方なのか! と感心したものだ。



「日本に関わることで、ジローさんに勝る事は何も無いよ。知識も言語についても何一つ勝てない」

 そう言うと、シングは俺を目を細めて見つめているくる。

「トラ、それは日本人としてどうなのだ?」

「確かに。俺もシッカリ勉強しなければね」

 そう言うと、シングは苦笑する。

「お主はよくやっておる方だよ。あやつが可笑しい。日本マニアのオタクだからな」

 確かにジローさんの知識と技能の方が規格外と言うべきかもしれない。

「……ところで、その喋り方は、止めたのではないの?」

 ジローさんとスアさんにこの時代劇喋りは禁止された。

「それはアパート内の規則! お前は大学の後輩!

 つまりはここは大学と繋がった所にあるからセーフなのだ」

 相変わらずのシングの屁理屈に笑ってしまう。このアパート内で、言葉で突っ込まれまくってストレスが溜まっているようだ。

「分かりました、シング先輩!」

「そうだ、俺は先輩だ! もっとうわまっても良いぞ! 可愛がってやるぞ」

「【敬って】だよ」

 そう返したら、シングにムッとした顔をされてしまった。

「……そうだ! お前が俺に敬語で話してくれたら、俺の敬語の勉強になるではないか! そう、それが良い! 今から敬語で話せ! 構わぬぞ!」

「ハイハイ!」

 まぁ俺も社会人になってからの敬語て話す練習になるから良い事かとも思う。

「ハイは一回だ!」

 逆に指摘されてしまった。

 

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