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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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愛を止めないで

 柑子さんにああ言ったものの、落ち着いて考えるとホワイトデーって何する日だったのかよく分からない。

 バレンタインデーはレストランやケーキ屋でもそれ向けな商品があるのだが、ホワイトデーってイベントそのものが少しマイナー。

 バレンタインデーの対のようでいて、存在感でも負けている。

 こういう事は誰に相談すれば良いのか? 一つハッキリ言えるのはシングは我が家の猫達並にこういう相談には向かないと言う事。

「そこは、まぁ、良きにはからえば良いのでは?」

 と適当な事を偉そうに返してくるだけ

 となると誠実で紳士で行事系について詳しいジローさんか、女性心もよく分かるスアさんになる。

 階が違う事もあり、ジローさんとは意外と話すタイミングがない。どちらかが外出するタイミングだったりで挨拶程度で、ゆっくり話せないのだ。

 メールとかLINEの方で対話している事が多い。そうなると友達とのホワイトデーの過ごし方なんて態々しにくいものである。

 そんな時に差し入れ等を持ってきてくれたスアさんに相談する事にした。寒い玄関口では申し訳ないので部屋に入ってもらい卓袱台を挟んで向かい合う。

 卓袱台の上にはマグカップに入ったインスタントコーヒー二つとモノが鎮座。俺の膝の上にはサバが丸くなっている。

「サバちゃんもトラオが好きよね。そんなにトラオに甘えるなんて」

 目を細めそんな事言うスアさんに俺はイヤイヤと顔を横にふる。

「冬場の猫は、こうして人間で暖を取るらしいから」

 フフフとスアさんは笑い目の前のモノを撫でる。

「なんか想い通じあっているの分かるよ。モノちゃんはともかく、サバちゃんは私に近づかないもの。付き合いはトラオよりも長いのに。ねえ、モノちゃん。

 もう寄生虫はよくなったの? 毛の艶良くなったわよね」

 そう話しかけるスアさんにモノは目を細める。

「寄生虫検査も無事クリアーでにました! もう健康そのものみたいです」

 野良猫を飼い始める時に気にしなければならない事は病気と寄生虫。

 二匹はずっと共に居た為に最悪二匹とも悪い病気に感染していることも有り得る。

 検査の結果、そういった病気はないと言われ安心したのだが、寄生虫は引っかかった。その治療に三ヶ月程要したのだ。

 寄生虫の薬は卵には効かない。まず体内にいる成虫を投薬で処理して、時期をズラし卵が孵った所をまた薬で処理する。

 それを繰り返して完全駆除するまで繰り返す。それがようやく先月終わった。

 ダニの方もブラシとシャンプーとダニ取り首輪で何とか対応しているからもう大丈夫だとは思う。ただし二匹がシャンプーとドライヤーが苦手だから、ソレはソレで大変。狭いシャワー室で二匹と大乱闘。その後、二時間は怨みの篭もった目で見詰め続けられる。


 そんな猫報告していて思い出す。そんな相談をする為に来てもらった訳ではない。

「そうそうスアさんに聞きたいことが! ホワイトデーってどう過ごすのが正解なのでしょうか?」

 スアさんは首を傾げる。ジッと俺をみてから、何故かニンマリと笑う。

「何? 彼女出来たの?」

 俺はその言葉に慌てて首を横にふる。逆に彼女だったら、過ごし方にそこまで悩んで無かったかもしれない。

「ということは、告白するのね! 分かったお姉さん張り切って協力するわよ!」

 何故かテンション上げ出すスアさんを俺は必死に宥める。

「違いますよ! 友達と過ごすホワイトデーの過ごし方を知りたくて!!」

 スアさんは、意味が分からないもいう感じで首を傾げる。

「もしかして……友達って言ってる相手は男性だとか?」「女性です!」

 何か話が相談に乗る前に変な方向に進みそうなので俺は状況を説明する事にする。スアさんは俺の話を聞いてウーンと何故か唸っている。

「ソレ……もう付き合っていると言わない?」「そうじゃないですよ! 柑子さんからして見たら友達でしかないですし……」

 スアさんは丸い目を細める。

「俺なんかほら、患者の家族ですし……」

「………逆に、トラオから見たら、柑子さんは? どんな存在?」

 俺は少し悩む。知人から友達にはなれたと思う。

「……友達です。でも尊敬している相手。

 夢をもってソレを真っ直ぐ追い掛けていて、そこが凄いなと。

 嬉しそうに動物の事は、獣医のことや、父親の事語る姿も素敵で……」

 前向きな刺激を貰える素敵な友達という所だろう。俺はそう結論づけづける。

「……かなり、惚れているってことね……」

 スアさんがそう言ったタイミングで珈琲を飲んでいた事で噎せる。いきなり激しく動いた事でサバがブミャっと小さく叫び、膝から飛び降りる。

「サバごめん!

 違いますよ! 尊敬しているだけで」

「好きじゃないの? 尊敬って結構な愛よね? それに可愛いなとか思っていない?」

 スアさんは尚も追求してくる。俺はスアさんと顔を合わせているのも恥しくなり目を逸らす。手持ち無沙汰でサバを撫でる。

「可愛い人だと思っていますし、好きですよ。

 でも素敵な人だからだけで、そう言う意味で好きだと思う訳ではないですよね。

 可愛いから惚れまくっていたら、無節操な男になっいゃいますよ。俺」

「なら彼女はトラオにとってそんな対象には見られない?」

 俺は改めてそう聞かれ、頭に笑顔の柑子さんを思い浮かべて顔が熱くなるのを感じる。

「いや、俺は……。

 寧ろ俺が彼女にとってそんな対象になりえないというべきでしょ。下宿生活の貧乏学生で……それなのにこんなネコ(コブ)つきで」

 サバを撫でられて気持ちよさそうに目を細めている。

「真面目なのは良いことだけど、相手の人生に責任取るプロポーズするならともかく、交際でそこまで悩む?

 貴方みたいな(ひと)がそんな事言ってたら、私なんてどうなるの!」

 スアさんは優しく笑う。

「そんな些細な事で悩んでたら、一生恋愛出来ないわよ。

 それに恋はするものではなく、おちるもの!!

 大人になると恋はもっと複雑になる。若いうちはもっと奔放に生きなさい!」

 いかん、だんだん相談事が思わぬ方向に向かっている。

「恋愛は、奔放に楽しむ為にするものではないですよね。相手に惹かれて大切にしたいから」

 スアさんは、ニッコリ笑い頷く。

「もちろんそこは重要よ! 貴方がそう言う子だから素敵な恋愛して貰いたいの! 

 貴方は学生だから! お金がないから!

 とか言うけど、そこは恋愛に関してマイナスではないわよね?

 だからこそ育め楽しめる恋愛もあるのよ! 私も高校時代彼氏とサイクリングしたり、ロマンチックな気持ちになれる海岸探してイチャイチャしたり!

 金がなければアイデアと愛情と愛嬌でカバーよ!

 かえってそういう事の方が愛は盛り上がるの!」

 スアさんがバンと卓袱台を叩き、モノが驚き飛び下りる。

「愛はビタミンなの! 心の!!

 愛があるから心は健康に過ごせるの!!

 愛を諦めないで! 足踏みしないで!」

 熱く愛について語りだしたスアさんに俺はビビる。モノもサバもひいていて、部屋の隅に移動した。困っている俺と二匹の様子に気が付き、スアさんは我に返ってくれたようだ。表情を和らげニコリと笑う。

「そりゃ、強要するのはダメよ。

 でも相手を想い楽しくなる、笑顔になってもらいたくて頑張るって素敵ではない?

 愛は自分も人も楽しくするのよ。

 もしその恋愛がダメになったとしても、そういう風に良い心で頑張った愛は貴方の人生の糧となるわ!

 だから愛を止めないで! 否定しないで!」

 スアさんらしい言葉だと思った。スアさんは本当に愛の人だから。

 愛しているミケさんにいじらしい程尽くしている。

 ミケさんが留守の間の郵便物の管理や処理はスアさんがしているようだ。移動先に転送したり、急ぎの内容はスアさんが開けて代わりに事務作業をしてとかしている。

 帰ってきた時は、食事を作って嬉しそうに振舞う。そして一緒に食事しながらミケさんの夢の進捗状況の話を嬉しそうに聞いていた。

 二人は夜通し語り明かし、お酒を呑み明かしたりしたりしているようだ。この二人の関係はどうなのかよく分からない。親友というのが一番しっくりくる表現のような気がする。

 こんな性格も良くて気遣いも出来て料理も上手。

 そんな女性にここまで尽くされたらだいていの男は惚れてしまうと思うのだが、スアさんの身体が男性という事が、話を難しくしている。

「という事で、私はトラオのホワイトデーを全力で応援するわよ!!」

 少しボーとしていたら、前にはすっかりやる気漲らせて燃えるスアさんがいた。

「さあ! 乙女がキュンキュンするホワイトデーのデートプラン考えるわよ!」

 なんか相談事がスアさんの心の何かに火をつけたようだ。

 スアさんは雄々しく高らかにそう宣言した。


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