お・も・て・な・し てどうするの?
さて、サバの快気祝いって何をするものなのだろうか? 俺は悩む。
一人暮らしを始めて半年。作る料理はグリルで魚を焼くか肉を野菜と一緒にフライパンで炒める。もしくは鍋に色々入れて煮てカレーを作るかそれくらい。人を招いてパーティーなんてしたことがない。シングとしているのはカレーパーティーではないだろう。
大学の友達がきても、スナック菓子とドリンクを出しておけばいい。まだ酒も呑まない事もあり、しゃれたつまみなんかも作ったことがない。
【ホームパーティー レシピ】で検索すると、アボガドのディップ、カプレーゼといった未知の食べ物が出てくる。
まずはシャンパンで乾杯……ってお酒も用意しておかないとダメなのだろうか? 酒の事俺はまったく分からない。そうパソコンの前で悩んでいると、キーボードをチョイチョイ叩く者がいる。いつもは全く絡んでこないサバが俺の周りを歩き回り、らしくなく擦り寄ったりと邪魔してくる。さらにモノが窓ガラス向こうから開けろとうるさい。確かに今の季節外にいるのは辛いだろう。
モノを部屋にいれてやる。するとサバは俺から離れモノに近づきスリスリと挨拶していた。そのまま微笑ましく姉妹の絆を深めるかのように絡む。しかしそのジャレあいが徐々に熱くなりプロレス大会が始まる。二匹の猫が縺れ転がり回る横、俺は初めてのホームパーティーについて悩んでいた。
「何しておる? トラ」
いきなり話しかけられ、俺はビビる。知らない間にシングが入り込んでいたようだ。
元々互いの部屋に行き来する関係ではあった。加えサバの様子を見てもらう為に俺がいなくても入ってもらう事から我が家は更に入りやすくなっている。特にシングはいつのまにか部屋にいるという事がよくある。シングって名前はライオンという意味らしいが、ライオンというかシングもモノと同じような猫に思えてきた。気がつくと部屋にいる。
横で変に盛り上がっている猫二匹を、全く気にすることも無く俺だけをジーと見つめてくる。
「いや、サバの快気祝いパーティーって何を用意したらいいのかなと」
シングは俺の横に座り画面に視線を向ける。
「なんか女子の作る料理っぽいぞ。お主らしくない。
トラといったら干物では?」
「そんなのパーティー料理にならないよ!」
流石にパーティーで干物はないような気がする。
「ホッケって居酒屋でもいいおつまみになっているよな? それに皆も色々もってくる。
パーティーらしいオシャレな料理はシアとかジローがもってくるであろう。だからお前が作らずともいい感じにはなると思うぞ」
シングは薄い茶色の眼でコチラをジッと見つめ首を傾げる。シングが猫っぽいと思うのは、この不思議な目の色もあるのかもしれない。
「ここのアパートのパーティーって大概持ち寄りだよ。皆適当に何か持ってきて、料理とかお酒がたりなくなったらシアとかジローが部屋からもってくる」
目から鱗だった。ホストとしてどうするか悩んでいただけに少しだけ気が楽になる。
「もしかして、また一人で頑張ろうとしていたのか? またシアとジローに怒られるぞ」
確かに怒られそうだ。無理してお金をつかってご馳走を用意してたと知ると、二人に一時間程小言くらうだろう。
「それにアヤツらは大人だ。俺達子供を可愛がり甘やかし面倒をみる義務があるのだ。だから遠慮はいらぬぞ!」
シングは何故かドヤ顔でそんなトンデモナイ事を言った。
「シング、それはないから! 大学生という段階で俺たちは子供じゃない。大人じゃないかもしれないけど……。
それにお前は二十歳は超えている。だから大人だ」
俺は思わず突っ込んだ。




