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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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記念日

 モノが出て行った後、窓を閉じて視線を戻すと、サバが俺をジッと見ていた。食事も食べ終わった様子なので、俺は再びエリザベスカラーを装着しておいた。昨日までと違って目付きも鋭く意識もしっかりしている。目に生気がありサバの顔に表情というか感情がある。俺はその様子を皆に報告するために写真と動画に撮り、サバをゲージから出してあげることにした。

 トイレの事も気になったから。猫用のトイレの屋根をはずしてからサバの所に戻る。

 傷に触らないように脇の所で持ちあげ移動。猫トイレの方に連れていき砂の上にサバを置き、屋根を再びセットした。女の子だしトイレをしている所を見られるのも嫌だろう。離れて様子を確認。何やら蠢く音はする。覗くとやはりエリザベスカラーが気になるようで顔を激しく振っていた。結果エリザベスカラーで猫砂を掘り、それを外に放り出すという作業を繰り返している事になる。和室ではなくまだ板間の方にトイレを置いといて良かった。とはいえ思うが散かされる事が嬉しい訳ではない。

「サバ!! 何しているんだ! ダメだろ!」

 サバを怒るが、逆にシャーと激しく怒られる。あまりの怒りの気迫にエリザベスカラーを外した。基本傷を触ろうとしなければつけなくても良い筈だから、外してから様子を見守った。外すとサバは怒り収めて、トイレの中でジッとしている。

 傷部分を触ろうとする訳でもなく、入り口の穴から部屋の様子を窺っていた。

初めてきた所ではない筈なのに、少し何かを警戒しているようにも見える。彼女なりに今自分が置かれた状況を探っているのかもしれない。

俺はとりあえず箒をもって散らされた猫砂を掃除することにする。掃除機をかけると絶対嫌がりそうなので、気を使いながら掃除をする。(前足)を出してきて箒をパンチして邪魔してくる。

「サバ!邪魔するなよ! お前が汚した所を掃除しているんだろ!」

 そう言っても、言う事を聞く訳もなく、執拗に箒を攻撃してくる。怒っているというより、楽しんでみえるのは気のせいだろうか? 思った以上に元気である。

 ドアをノックする音が聞こえた。コレがビアさんなら台所の窓に影をうつして、声をかけてからから玄関を開けて入って来る。シングだと何も言わずにドア開けて入ってくる。 この感じはジローさんだろう。

「ジローさん、開いていますからどうぞ~!」

 箒での作業が終え、モップをかけていた所なので俺はそう叫ぶ。玄関が開き、案の定ジローさんが入ってくる。その足元をモノが走り抜け部屋に突入してきた。そのまま和室の日向に向かい毛繕いを始め寛ぎ始める。


「お加減いかが?」

 その質問で、視線をモノからジローさんに戻す。

「それが今日はやたら元気で」

 俺はモップの柄を縮め、玄関の傘入れに収納しながら答えた。サバは挨拶するジローさんにトイレから顔だけを出してジッと見上げている。

「おぉ! 目の輝きからして違うな」

 ジローさんが撫でようとすると、顔をしかめて背け『触るな~』という感じで逃げようとする。

「すいません。相変わらずな態度で」

 謝る俺にジローさんは笑う。

「コレがサバだからね~」

 俺はトイレから出てこないサバを放っておき、ジローさんを和室に誘う。卓袱台の前の座布団に座ってもらう。インスタントだがコーヒーをいれて、ジローさんに振る舞った。

 改めて向き合い、サバの状況を報告する。サバはそんな俺達の様子をトイレから顔だけを出して様子を見守っていた。傷を触っている様子もないのでそのままにしてあげることにする。もしかしてトイレもしてくれるかもしれない。


 猫の飼い主として先輩であるジローさんに猫飼いの心得を請う事にした。野良ネコは、食べられるとなると際限なく食べようとする所があるようだ。気を付けてやらないと肥満になるという。

 明日から俺も大学がある。サバを一人で部屋に置いといても大丈夫なのだろうか? といった話をしているとジローさんの青い目が見開き俺の後ろを見ている。

 振りむくとサバが上半身をトイレから出して、そのままズルズルと出てきている。トイレの砂を散らしながら。俺が注意するために近づこうとするが、ジローさんに止められる。

 見ていると少し匍匐前進的な動作で前に出てきた。そのまま立ち上がろうとして転ける。そして再び立ち上がろうとしてバランスを崩す。やはり四本足の時に比べてその動きが明らかにたどたどしい。


「サバ……」


 俺の声なんてまったく聞こえてないようで、前だけを向いている。再び立ち上がろうとする。今度は転ぶことはない。

 三本足でふらつきながらもサバは立っている。そして次の瞬間前足を出し歩き出した。二歩ほど歩いてまた転んだが、その後はビックリする程アッサリ歩き出した! 勿論四本足の時のようにスムーズなものではないが、自分の意志をもってしっかり歩いている。そのままモノのいる日溜まりのある畳の上まで進んで来てそこでくっつくように座った。

「サバが歩いた!! ねえ!ジローさん見ました? サバが歩きましたよ!!」

 ジローさんの方をみると、驚いた事にスマフォでサバの様子をシッカリ撮影していた。

「サバの記念すべき日だからね」

 ジローさんはそう言って嬉しそうに笑った。でもこの時のビデオを後でみて、瞬間瞬間の記録があるという事は素敵な事だというのを実感する。俺の子供時代にイベントある度に、やたら撮影する父親の気持ちが分かったきがした。

 この後部屋にアパートの皆が来た時にはサバはかなり普通に歩いていてその事にも驚かれた。その為にジローさんの撮影した動画であの感動の瞬間を皆で共有し喜び合う事が出来て良かったのかもしれない。

 スアさんなんて涙を流しながら何度も観ていた。サバはと言うとそんな大騒ぎしている人間を冷めた目で煩わしそうにチラッと見るだけ。そのまま丸くなって日溜まりを楽しんでいた。

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