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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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猫と暮らすには

 次の日、必死な様子なモノに起こされる。窓を開けるとモノは外に飛び出していったが、何故かすぐに手摺に戻ってきた。トイレに行ってきただけのようだ。

 目が合うとオヤツと水を、強めに要求してくる。多めの煮干を与えると、当然のようにそれを食べて喉を潤していた。そのあと何か言いたげな目で俺を見上げてくる。サバの事を聞きたいのだろうが、今の俺には何も答えられない。

 出来るのはモノの頭を撫でてやることだけ。そのまま俺の部屋の手摺に座り込み、そこから動く様子はなかった。


 回診時間まで待ち、薮動物病院にジローさんと向かった。サバは無事で、生きてくれている事にホッとする。しかし横になって寝たままで、声をかけても目を少し開けるだけですぐ閉じてしまう。そんな様子でも、サバの状態はもう安定したので明日に退院だといわれた。

 責任を取るとは言ってみたものの、今の学生でバイトもある俺。サバの介護が出来るのだろうか? 不安もこみ上げる。


 病院を出て仕事に向かう為に商店街方面に行くジローさんと別れて反対側に歩き出す。その時、薮動物病院の裏口から出てきた人物に気がついた。

 柑子さんだ。コンタクトにしているのか、メガネはかけておらず、特徴のある丸い目がより大きく見える。俺が頭を下げると、手を振り微笑んでくる。

「良かったね、猫ちゃん」

 その言葉に俺は首を傾げるしかない。あんな状態のサバの何処が良かったというのだろうか?

「足の他は特に異常も見られなかったのでしょ?

 直ぐに元気になるよ!

 猫ちゃんって意外と逞しい動物なの」

 そう言葉を続けてくる。足を失ったという事実が俺の中では大きすぎて、その言葉に素直に頷けない。

「三本足になっても元気に動き回っている猫ちゃんを、今まで沢山見てきたから大丈夫。

 猫ちゃんは四足だから、人間が一本足を失う程深刻な状況じゃないのよ」

 柑子さんはそう言って明るく笑った。

 言っている言葉よりも、ホンワカとした柔らかい雰囲気と明るい笑顔が俺の不安を少し軽くする。


 向かう方向が同じだった為に、そのまま一緒に歩く事になった。柑子さんは俺の大学近くにある獣医学系の専門学校に通っているという。


 猫を飼う事が初めてな事もあり、飼い方や看護の事を色々教えて貰った。

「何か分からない事があったら何でも聞いてね」

 そう言ってくれた柑子さんとLINEの交換して別れた。


 すべき事が明確になった事で覚悟も決まり落ち着く。気分を入れ替えて講義を受ける事にした。

 授業の合間に猫を飼う為に必要な物のリストを作る。明日からはサバが家に来る。猫用トイレに、直ぐにご飯を食べられるかは分からないけどキャットフード。あと爪研ぎ、首輪……意外と色々必要な事にため息をついた。

 講義と講義の合間にジローさんに、サバは公園でどんなご飯をもらっていたのかをメールで聞いてみた。返事でかえってきたドライフードをスマフォで検索して値段をチェックする。明日からサバはウチにくる事を考えるとネットで買うと間に合わない。帰りにサバの生活用品を用意しておかないとダメだろう。

 本日最後の講義を終えスマフォをチェックすると、LINEグループの【壽楽荘】が賑やかで、皆が会話している。サバが新たにアパートに入居する事について盛り上がっているようだ。それにあたって必要なものは何かという話が、猫に詳しいジローさんを中心に話し合われている。そしてそのラストのメッセージは俺宛のものだった。


 【ネコトイレ・キャリーバック・餌用お皿・キャットフード・爪研ぎ・爪切り、もう用意してあるから! 買わないように!!】


 【猫を飼うのに必要な物は買っておいたから、トラオは何もするな!】


 そんな連絡が、そのLINEグループ内と、それぞれから直にも俺へ連絡が来ていた。

 俺はサバの代わりにお礼を返し、その代金を後で支払うからと返事を返す。


【コレは皆から、サバへの新生活応援祝い! 返礼不可】


【No Return!】


【アタシとアナタの仲じゃない~♪

 お礼なんていいわよ! 愛と身体で返して♥】


 そんな言葉を返される。俺は皆の優しさに泣きそうになりながら、薄暗くなった街中をアパートに向かって歩きだした。

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