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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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サバキラー?

 YouTubeの番組『ねこやまもり』はバズる程ではないがそれなりに再生数を伸ばしていた。といっても四ケタいったくらいだが、チャンネルを見たという人が店にきたり、ノラーマンのライブを見に来てくれる人もいたり、という目に見える反応も出てきていた。

最も再生回数を伸ばしたのは、『さくらねこ』の活動を取材したもので、皆で『やはり動物は数字もっているんだな~』と感心したものである。

 そしてあのサバを何故かカワイイという感想を残す人もいて、驚いた。

 航空写真でみると丸い部分に耳のような尖りが二個ついており猫っぽく見える前方後方墳、根来山森古墳の紹介もしたこともあり、猫好きを街に呼び寄せたようだ。

 カメラを持ち、猫のオヤツを手にした人が住宅街を歩く姿を目にするようになった。そしてTwitterなどでも『#ねこやまもり』のタグがついた根来山森町の猫写真が登場してきている。俺の部屋の外にいるサバを撮影した写真などもアップされているのを見て複雑な気持ちになった。


 サバが今朝も俺の部屋に来ておやつを請求してくる。窓ガラスを態々ノックして。つい道の方で人が見ていないか気にする習慣がついてしまった。

 コイツがサバと呼ばれているのはサバトラ柄だから。魚の鯖のような色の縞模様をサバトラというらしい。モノはモノクロの模様だからモノ。モノはそうでもないのだが、サバはハッキリと俺を訊ねてくる。オヤツを確実にくれる舎弟とでも思っているのだろう。


 他の住民は、『あの人見知りでシャイなサバがそんなに積極的に寄ってくるなんて! 愛されている? もしかしてサバキラー?』とか言ってくるが、単にカモ認定なだけのような気がする。人から羨まれる状況では決してない。それにサバはシャイな性格などではまったくない。単に人見知りで、ごく一部の人間の所しか近くに居ることを許さない。公園でも餌をいつもくれるおばあちゃんからしか受け取らないという。実はここのアパートに居ついているようで、全ての住民に懐いている訳でもなく、俺とシアさんとジローさんにしか触らせない。ノラーマンやシング相手だと威嚇する。


 そんな性格だけに最近の街はサバにとってそ居心地は良くないようだ。猫に対してそれが愛情であっても圧を強めで迫る人もいて、迂闊に散歩していると声をかけられ、それが煩わしいのだろう。余計にこの手摺にいる事が増えたように思う。


 この街に住む事で見えてくる、近所に暮らすそれぞれの猫の性格。

 サバとモノの顔は似ているが、まったく性格が違う。モノの方が愛想はよくチャッカリしている。顔は可愛くはないが甘えておやつを請求してくる事もしてくる。シングにもモノが交渉して、いざオヤツが貰えるとなると、サバがいつの間にか横にいてオヤツを二匹で食べいて、ありがとうな声を返すモノとは異なりサバは『お前にはもう、用なぞない』と離れていく。シングがサバに対して冷たいのもそういう日常の積み重ねなようだ。基本この辺りの猫は皆チャッカリしてきて、お腹がすいた時だけ可愛くなる。サバ以外は。

 そして各猫はそれぞれ下僕(ファン)をもっているようで、そのファンからの差し入れを楽しんでいるようだ。ブサ猫好きもいるようで、モノがファンの子の相手をしている様子をみかけた時は驚いた。


 トラとミケは元々の性格が人懐っこいのか、餌があろうがなかろうが人に甘え撫でられ可愛がられ、この近所の猫好きからも愛されている。

 そして前に俺の窓に嵌っていた可愛いシロは一番あざとく、甘える時はあんなに可愛いのに、相手の餌が尽きた途端に豹変して、触ろうとすると攻撃してくる。その癖にサバなどに虐められそうになると猫好きな人の所に救いを求め利用する。そういう現場を何度も見て『コイツ性格がかなり悪く、ズル賢いヤツだな』と思ったものだ。


 そういう意味では裏表のない何時でもアイドル対応のミケやトラや、誰にも塩対応のサバの方が好感はもてる気もする。しかし飼い猫では無い猫にとって、人を見て対応を変える事も必要なのも確か。

 世の中猫が好きな人間ばかりではないし、悪気はなくても子供なんて扱いが乱暴だったりもする。また突然行方不明になる猫も出てくる。最近では、突然ミケが消え近所の人が心配している。人懐っこい性格だったから、猫好きに連れていかれ飼われたとか、新天地を求めて旅に出たとかいう事であれば良いが……動物を虐待するために連れ去さるという人もたまにいる。伝染病だってうつされることもあり、地域猫としてここに居る事を許されて生きていても、安全ではないのだ。


 近くの猫の溜まり場となっている公園でなく、サバがウチのアパートで寛げているのも此処が私有地で不特定多数の人が入り込んで来ることのない場所だからだ。人を警戒するという事は、過去にそれだけ怖い目にあった可能性もある。だからこその、この凄みとやさぐれ感なのかもしれない。


 ボランティアの人が餌を持ってくる時間にだけ公園に行き、縄張りをパトロールしてこのアパートに戻ってくる。猫は猫なりにスケジュールやマイルールがありそれに従ってこの街で各自色々考えて生きている。


 ムシャムシャと煮干しを食べているサバにそっと触ってみる。猫ってモフモフしていて意外と触り心地が良い。食べ終わったサバが顔を上げて見上げてから目を細める。煮干しの香りが残っているからか俺の指をペロペロと舐め、顔を珍しくスリスリと甘える仕草をしてきた。

 俺もついサバの頬肉をモミモミすると、ゴロゴロと喉を鳴らす。

 あ……なんかサバが何故か可愛く見えてしまった。

 段々この顔にも慣れてきたのか、普通に猫で可愛く感じてきている自分が怖い。

「煮干し、もう一匹いるか?」

 つい甘い言葉をかけてしまう。サバはブミャーと返事をする。俺は煮干しをもう一匹与え、美味しそうに食べる様子を見守ってしまった。

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