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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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猫が山盛り~♪

 猫山盛り~♪ 何が山盛り~?

 メシが山盛り~? ニクが山盛り~?


 チャウチャウ、ネコが山盛り!


 何処で山盛り~? 猫が山盛り?

 塀で山盛り~♪ 柵で山盛り~♪


 とこもかしこも 猫が山盛り~♪ 

 そんな街の名は? ねっこやまもり♪


 猫が雨宿り~! 寺で雨宿り~♪

 軒で雨宿り~♪ 小屋で雨宿り~♪


 あちらこちらで 猫が雨宿り~♪


 俺は商店街に流れるこの曲を聴きながら溜息をつく。まさか俺がウッカリ『この町の名前面白いですよね~【猫が山盛り】みたいで!』とお酒の席で漏らしたことで、こんな恐ろしい曲が産まれるなんて思いもしなかった。何故恐ろしいかって? 一度聞いたら最後、しばらく頭から離れないのだ。

 それはLINEグループの壽樂荘のメンバーで、例の飲み会での出来事。集まったのは現住民は三宅さん以外。

 ジローさん、スアさん、シング、タマさんと、シマさんの六人。そしてOBは前一○三号室のキティーさんと、元二○一号室の黒根虎徹(クロネコテツ)さんと元二○二号室の白音小太郎(シロネコタロウ)さんの三人。大家さんが最初だけ来て旧メンバーとの会話を楽しみ、大量の唐揚げとコロッケを置いて帰っていった。

 LINEでは軽く若い口調のクロネコさんが、髭をセンス良く生やした四十代くらいのちょいワルオヤジ風なカッコイイ大人の男性である事に驚いた。そしてクロネコさんの言葉にいつも絶妙なツッコミを入れているシロネコさんも年は同じだとか、長髪で細身のジーンズに派手なジャケットという出で立ちが格好がよい。

 四十超えて二人のように格好いい大人に自分がなれるとは思えない。というかもう出発点からして違うからこういう大人には俺はなれないだろう。そのイケてる大人な雰囲気にひたすら感心するしかなかった。

 二人は元々親友でプロのミュージシャンを目指し、このアパートで共にパンドで頑張っていたらしい。

 現在クロネコさんはスタジオミュージシャンをしていて、シロネコさんはライブハウスのオーナー。

 普通に会社勤めしているようではなく、なんとも只者では無い雰囲気にも納得である。


 そんな二人のいる飲み会で、ここのLINEグループの会話は猫が井戸端会議しているように見えるとか、町名も【猫山盛】にしたら良いのにと洩らしてしまったら皆のツボにハマったのか大ウケした。

 まあ、俺以外は皆酔っ払いなので基本何か言ってもウケる状況ではあった。

 しかしその盛り上がりがよく分からない創作意欲に火を付けてしまったようだ。

 元バンドマンである二人の才能に、更に()()お笑い芸人コンビであるタマさんとシマさんも歌詞作りに参加し、この曲はあっという間に出来上がってしまった。

 普通はお酒の席の楽しい余興で話は終わるのだが、ここに根古山森町商店街で役員をしているジローさんがいたから話は壽樂荘から飛び出してしまったようだ。

 ようだと言うのは俺は飲み会までの流れしか知らずに、ある日商店街を歩いていたらスピーカーから【猫山盛りソング】が流れていて愕然として、さらにこの曲に脳が感染して大変な事になっているのが今の状況。

 新たに「笑顔山盛り、旨さ山盛り、それが根来山森商店街~♪」といった歌詞が加わり商店街ソングっぽく仕上がっでいるが、【ネコヤマモリ~♪】というパートのインパクトが生半可なく、そこの部分のメロディーが頭に染み付いて離れない。

 しかもこんな惚けたコメディーソングを、あの渋いロックスターな風貌の二人が演奏して歌っていると思うと表現しがたい不思議な気持ちにもなる。


 俺どころか一日聞き続けている商店街の皆さんはもっと大変な事になってるようだ。

 刷り込まれてしまっているのか、八百屋さんのオジさんも【猫山盛りソング】を口ずさみながら野菜を並べていたりする。

 そういう俺も重症で、部屋に漫画読みに来ているシングに「トラまた歌っているぞ。その曲お気に入りのようだな」と笑われてしまう。気に入っているというのではないのだが……。


 そして今も通学中もつい口ずさんでいたようだ。

 歌っていた自分に気が付きハッと周りを見渡すと、眼鏡をかけた女の子がこちらを見てクスクス笑っている事に気がつく。

 相手はコンビニから出てきて自転車に乗ろうとしていたところで、俺がその横を歌いながら横を通ったという状況なのだろう。歌を聞かれた事に恥ずかしくなる。

 笑い声に反応して俺が顔を向けてしまった事で、その子とシッカリ目があってしまう。

 丸顔で丸眼鏡の子で俺と同じくらいの年齢だと思う。目があってしまったので俺を丸い目でジッと見つめ返す事になる。気まずい空気が流れる。

「……わ、分かります。それ耳に残りますよね。私も気がつけば歌っていて……」

 女の子は困ったような顔をしてそう言葉を掛けてきて、目をそらす。

 誤魔化す為だろうニッコリ笑い頭をペコりと下げて自転車に乗り去っていった。そして顔を赤くしたままの俺だけが道に残った。


 

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