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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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毛の問題

 夏になり、より困ってきたのは抜け毛の問題。俺の毛ではなくて猫の毛。猫は衣替えをしないようでいて、実は冬は冬用の毛を生やし、夏はその毛が抜けて夏用の毛を生やすという。その為に柵にいて毛繕いなんかされると、もうそこら中に毛が飛び散るのだ。猫が去った柵にも毛がアチラコチラについていて、それが風で飛び散って大変な事になっている。掃除機とモップとコロコロがますます手放せないようになった。


 公園で他のさくらねこが、ファンにブラッシングして持っているのを見て衝撃をうけた。サバとモノはあまり人に懐かないというか触られるのを嫌がる為にブラッシングをしてもらえず、散る量も多かったようだ。しかも先日部屋に泊めたことがいけなかったせいか、俺の部屋も縄張り認定されたようで、気が付くと侵入している事がある。見つけたらすぐ追い出すのだが、後に飛び散った毛とか、謎の毛の塊が残っている。そういう状況で毛の被害が深刻なことになっていた。しかし台風の時などは可愛そうで外に放りだす事も出来ず、許してしまう事が、余計に二匹を付け上がらせてしまったのかもしれない。

 そこで俺は決意する。毛が散る前に抜け毛を無くしたらいいだけである。ネットで検索すると百均のペットコーナーにも猫用のブラシが売っているという。よく分からないので、スニッカーブラシという金属のブラシとコームを両方買った。

 買って次の日に早速手摺に嵌っているモノに使ってみた。怒ると思ったが意外なことに大人しくされるまま。というか、体勢を変え違う所のブラッシングを要求してくる始末。流石にお腹とかは嫌がったが、やっていると毛が面白いように取れた。尻尾の上とか首の所とかをブラッシングしていると、目を細め幸せそうにしている様子が、俺の心をキュンとさせる。ツンの時が多いだけに、こうデレてこられると堪らないものなのだと知る。

 いつのまにかサバもやってきて、自分もとブラッシングを要求してくる。尻尾の上の辺りをブラッシングすると、もう気持ちよくて堪りませんという顔でプルプルしている姿をサバがしてくることにも衝撃だった。モノだけでなくサバまでが俺に心を開いてブラッシングをさせてくれることが、嬉しい。俺はこの二匹と心が通じあったこの瞬間に感動した。

 その後も時間があれば、二匹をブラッシングしてあげる事が日課となっていた。だんだん訪問した時の様子で、『オヤツよこせ!』 『水を飲ませろ!』 『ブラッシングしても良いぞ!』と言っているのか分かるようになってきたような気がする。


 その事を部屋にいたシングに自慢してしまう。俺の部屋にいつのまにか入り込んで寛いでいるのは、猫だけでなくシングもそうだったと気がつく。いつの間にか部屋にいて母から送ってもらった煎餅を棚から出して食べながら漫画を読んでいる。


 俺がシングに態々その話をしたのは、このアパートではシングが一番猫と距離というか、溝があるように思えたから。シングは猫の欲求とは異なった行動をよく返すからだ。その為に二匹に舌打ちされているような表情を良くされている。シングはマイペースな所があり、猫相手だけでなく、アパートの他の住人にも時々、ズレた言動を返して唖然とさせる事が多い。それは言葉が少し足りないからではなく天然な性格によるものだと分かってきた。


 猫とかなり良い関係になったことを自慢してみたが反応はイマイチだった。俺の話にシングが羨ましそうな顔をするどころか、冷静で冷めた視線を返される。

「それって、単に立派な下僕とされただけでは?

 トラはアイツらに良いように使われているだけに見える」

『それは違う! 信頼関係を築いて仲良くなっただけ』と反論したかったが、コチラの都合なんてまったく気にされず、向こうの要望だけを受けている今の状況。シングの言葉に少し納得している自分もいて、何も言い返せなかった。

「人間は野生の動物とは適切な距離をもつものだ!」

 シングの言葉は続く。近所の猫は野生の動物と言えるのだろうか? 野良と野生の違いってそもそも何なのか?


「もっと人間の威厳をもて!

 奴らは甘い顔をすると付け上がるぞ」

 その後何故かシングにお叱り言葉を貰った。猫相手に関しては、シングだけが猫に一切媚びない、忖度しない行動をあえてしているのはよく分かった。しかし人間社会においてはもう少し配慮を覚えた方が良いのにと俺は思う。



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