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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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トラの目

 大学生になり環境も変わった事で全てが新鮮に見えたからかもしれないが、変わった事は写真を良く撮るようになった。


 最初はスマフォで撮影していたのだが、気が付くとリュックにデジイチを入れ持ち歩き、色々と撮影するようになっていた。まるでお上りさんのようで恥ずかしいのだが、それだけ俺には様々な事が刺激的で面白かったから。

 田舎の方が緑も多くて、季節毎に様々な花も咲いて写真映するものも多かったと思うのだが、狭い路地裏にある家が壁面を利用して立体的に花を栽培する様子、駐車場の精算機の上で眠る猫、毎週変わるお寺の住職さんの惚けた標語、【満身創痍】とか【空腹】とか【月曜面倒】とか【猫の腹】とか【慢性金欠】とか【肉球】とか気侭すぎる言葉が書かれた半紙が並べて貼られた書道教室、仏壇屋の前でいつも寝ている看板猫、様々なモノが面白く見えたから。そこにある、人の生活している息遣いそれが心地よく暖かい気持ちにしてくれる。

 一番多い被写体はやはり猫。不思議なものでなんでもない道や塀も猫がいるだけで景色にリズムが生まれ素敵になる。


 実は気に入った写真はInstagramにもアップしたりして、今時な若者がするような事もやっている。とはいえ流行りのオシャレなスポットとか、カワイイ料理とかの写真はないのでフォロワーはそんなにいない。最初のフォロワーも知り合いばかりだった。そして一番俺の写真に反応してコメントつけてくれるのは知り合いと元住民。元住民の皆には俺の写真にある風景が懐かしいからのようで、多国籍の言葉で様々な反応を示してくる。

 普通の風景はそんな感じで一部のコアな人にウケているだけだが、そこに猫がいるだけで一気に反応が大きくなるのが面白い。しかもアラビア文字とか、見た事のない文字で態々コメントして猫の可愛さを讃えてくる所を見ると、猫という存在の強力さに気が付かされた。

 そしてその猫に対する反応から分かるのが、猫好きには様々な異なる萌え所があるようだ。明らかに美形なシロのような猫を喜ぶ人ばかりではなく、ボッテリとしたいかにも日本的な猫を好む人と好みのタイプというのがあるようだ。そしてサバやモノのような野性味というかガラの悪い顔の猫を推し猫とする人も結構いる事に驚いた。気が付くとここでも猫アイコンのフォロワーが増えていた。

 俺の撮った写真に対して知り合いの喜ぶ声は嬉しいのだが、ネットで全く知らない人からの反応も面白かった。そして住宅街の写真は、日本の人からより海外の人からの方がイイネをつけてくれる事にも気が付いた。俺の目でみた風景に共感して肯定してくれる事も嬉しい。余計に日常風景が好きになった。

 見てくれる相手がいると色々やりたくもなるもの。猫や風景や空等の写真や動画を合わせて曲を付けてみたり、加工したりと遊ぶことも始めた。俺は徒歩圏内で楽しめるお手軽な趣味をここで見つけたようだ。


 一人で、夜パソコンに向かっていると背後から、もうすっかり慣れた視線を感じる。

「よお、サバ! どうだ? 近所の風景写真。スライド動画にしてみたんだ」

 そう声をかけるが、俺の言葉に応える筈もなく、三白眼の眼を細めジーと俺をまじろかず見てくるだけだった。そもそも猫に感想を求める事が間違えているのだろう。PCではなく俺の顔をジッと見ている。コレはアレの請求だろう。

「……おやつか?」

 そう聞いても何も動かず反応も見せない。とりあえず煮干を取りに行き一本あげるとムシャムシャと食べて。ブミっと謎の声をあげ手摺に嵌ったまま。更に寄越せという仕草もなくそこに居続けるだけ。

 サバは俺に用があってここに居る訳でもないのだろう。ただここだと風通しもよく涼しく居心地良い。そして今夜はたまたま俺の部屋の窓に嵌っているだけ。

 視線をパソコンの画面に戻すと猛暑のニュースが目に入る。七月に入り一気に暑くなり熱中症の危険性を様々な所が訴えてくるようになっている。毛皮で覆われた猫にとってはさらに過酷な季節になっているのかもしれない。俺は肉の入っていたトレイに水を入れてサバの横に置く。やはり喉は渇いていたようでピチャピチャと、煮干よりも嬉しそうに飲んでいる。満足したのか顔を上げ機嫌良さげに毛繕いをし始めた。喉と舌が潤ったから毛繕いもしやすいのかもしれない。熱心にサバが毛繕いをすればするだけ抜けた毛が飛んでくる。オレは網戸を即座に閉めて防御することにした。そんな事お構いなくサバは狭い手摺の中で身体を動かし毛繕いに勤しんでいるので俺はそのまま放って置くことにした。


 この日から窓に来た猫達のお世話項目が1つ増えた。部屋に百均で水飲み用の皿が常備されることになった。



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