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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK
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恩も恨みもどこにやら

 今の問題は平和な関係が保たれている人間関係よりも猫達の事。部屋の隅で不機嫌を丸出しにしたモノは必死な様子で毛繕いしている。さっきの泥だらけの最悪な状態から脱して、いつもより毛がなんかフワフワしていて可愛くてなったと思うのに何か気に食わないのか俺達を恨みがましい顔で睨み付けてペロペロと毛を舐めている。まるで気に喰わないヘアーセットされて怒っていように、彼女なりに満足いく毛の雰囲気にしたいようで自分で必死に弄っている。


 ジローさんはタオルでくるんでいたサバを解放すると、サバは全力で走り俺の服の仕舞われた床の間(クローゼット)に入り顔だけ出してこちらを睨んでいる。猫たちと違って人間が出来ているジローさんはそんな生意気な態度の猫たちを気もせず持ってきた猫用ミルクを振舞っている。怒りながらも二匹はジローさんに近づき貰えるモノは受け取る、チャッカリした奴らである。二匹はそれを飲みながらも、時々顔を上げ俺達を睨む事は忘れない。飲む、喜ぶ、怒るといった行動を同時に実行する、猫って実に器用な動物だと思った。

「ついでにトラも、ドライヤーしてもらうとよい」

 俺がタオルで頭を拭いていると、シングが余計なこと言ってくる。スアさんもノッてニコニコと手招きしてくるからタチが悪い。

「トラオは大人しいから押さえてなくてもいいから、俺も楽だね」

 ジローさんも面白がっている。

 シングは人の悪い笑顔で手を引き、スアさんの前に俺を座らせる。

 冗談かと思ったら、スアさんはそのまま本当にドライヤーをかけてきた。スアさんの手は優しいものだったが、なんというか人にされるのって恥ずかしい。

「トラオの毛って柔らかいのね~猫っ毛で可愛い」

 そんな事言われると余計に照れくさい。他の二人も頭を撫でてくる。

「ほんとだ猫みたいだ」

 シングはそう言って完全に楽しんでいる。

「触り心地で言うとジローさんの方が猫ですよね」

 絶対金髪の方が柔らかくで触り心地良いと思う。

「でもジローは可愛くない。説教臭いし」

 真面目な顔でシングは答える。それはシングが気まますぎる所があり注意される事が多いだけ。ゴミ出しにしてもおおらかというか適当すぎるのだ。

「それは言えているわね~。このアパートの男子では断トツにトラオがイイコ~」

 スアさんもそう受けて答える。ジローさんはフフと笑っているだけ。この四人でいると、大抵シングとスアさんが何かしゃべって場を盛り上げている。それがここの日常。他の三人の住民は留守が多いからこの三人との時間が圧倒的に多い。

「トラは口煩くなくて、実に愛いやつ。良いニャンコだな」

 シングは真顔でそんな事いって俺を撫でつづける。唇の端が少し不自然に上がっている。段々シングの性格も理解出来てきた。これは今、完全に俺をからかって遊んでいる。

「アウッ」

 いきなりシングの叫び声に、どうしたのかと思うと、サバがシングを引っ掻き攻撃していた。

「ほら! こいつツンデレで可愛くない!」

 何が気に入らないのか、ジローさんに引き離されてもサバはシングを攻撃しようと手足をバタバタしている。今夜の件でも猫を持ち、誰かに渡すというだけで、一番関わってないから恨みも少ないはずなのに。

「シング、それは間違えているよ、サバはツンデレではない。デレの時を見たことない」

 シングは納得したように頷き、まだフーと怒っているサバを困ったように見詰めている。そんな横でモノはというと参戦する事はなく、シングを攻撃しにいったことで主の居なくなったサバのミルク皿の所におりチャッカリそれも飲んでいて気儘にしている。猫ってこういう時は意外とドライである。


 シングはサバの気迫に負けて部屋に戻ってしまった。二十超えた男をも追い出すサバってやはり普通の猫ではない。

 ジローさん曰く、猫は関わる人間をランキングづけする所があり、このアパートにおいてはシングの事は明らかに最下層とみなしているらしい。それで今回の件のムカつきに対する八つ当たりをされた。新参者の俺の地位はシングより上だった理由も謎。猫って本当に複雑で謎の多い動物である。


 土砂降りの外にまた猫を追い出す事も出来ず、ジローさんとスアさんと相談した結果、そのまま俺の部屋にサバとモノは泊まる事になった。母親が仕送りを送ってきた箱にバスタオル敷いて、そこで寝てもらうことに。二匹は溶けた物体のように箱の隅々までハマって居て箱から出すと四角くでてくるのではいかと心配になったが、二匹は大丈夫なのか互いの身体を舐めて寛いでいるからそこで過ごして貰うことにした。


 しかし何故だろう朝起きたらモノは床の間(クローゼット)の中で丸くなって、サバは俺の布団の上いた。やはり狭かったらしい。


 雨も止み天気も良かったので俺は、おやつあげて窓を開けて二匹を早々にお帰り頂くことにする。

 二匹も部屋に居座ることもなく、また感謝の行為を見せることもなく元気に外に飛びだしていった。猫に感謝とかそう言った感情を求める事自体、無理なのかもしれない。


 次の日は何事もなかったように普通な様子で手摺にやってきてオヤツを請求する。シャンプーされた事が余りにも不快で、もう寄り付いてこなくなるのではないかとも少し思っていだけに、変わらず来てくれた事にホッとした半面、ヤレヤレと呆れもした。恩も恨みもなかったことにされたようだ。


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