目覚め
ーー困りましたねーー
って言われても、こっちが困るんだけど⁉︎
さっきまで圧倒的強さを誇っていた彼女は少し焦った顔でリーダーを、リーダーは勝ち誇った顔で少女を見ている。
「嬢ちゃん、降参しないか?俺も無闇に人殺しはしたくないもんでよぉ。安心してくれ。誰も殺さねぇからよぉ」
彼女は迷った顔で俺達を見る。
ーーいや、そこはおとなしく降参してほしいーー
「分かりました」
そう言って彼女は、こちらに歩いてきた。
リーダーは、それをニヤニヤしながら眺めて彼女に拳銃を向けた。
「っ…危ない‼︎」
気づいたら俺は走り出していた。
ちょっと考えたら分かることじゃないか。
殺さない、なんて言われてもあの手の輩が約束を守るはずがないことぐらい。
いきなり走り寄ってきた俺を彼女は驚いた眼差しで見ていた。
勢いを殺さぬまま彼女に飛びついた直後背中への強い衝撃と痛みで俺は意識を手放した。
「ーーっ 君っ」
目を開けると警備員のおっちゃんが至近距離で汗だくになりつつ俺を覗き込んでいた
「うおっ」
女の子をかばったつもりが目を開けたらおっちゃんがいたなんて驚くに決まってる。
「大丈夫かい?」
俺は微妙に床を移動しておっちゃんから遠ざかりつつ
「大丈夫です。けっきょく、どうなったんですか?」
と聞いた。
「あぁ、強盗は全員捕まったよ。匿名の電話で強盗を倒したと通報があって、疑いつつも突入してみると、本当に倒れていて驚いたよ」
「じゃなくて!ここに女の子がいませんでしたか⁉︎っていうか俺、撃たれたんじゃ⁉︎」
「いやいや、撃たれてないよ。何か強い衝撃を受けたようだが、撃たれたんじゃなく殴られたような衝撃だったみたいだから。女の子については…わからないな…いなかったと思うが、先に警察の方が突入したから、そっちで保護したのかもしれない」
「そう…ですか。あ、人質に取られた子は…」
「無事だったよ、今は病院で念のため検査を受けている。君も行った方がいいかもしれないね。気絶しただけだとは思うけど」
「ありがとうございます」
「じゃあ私は他の人のところに行くよ」
「はい。ありがとうございました」
そのあとは病院に行き、なにもないことを確認してから帰宅した。
母には
「そんぐらいで気絶しなさんなよ。男の子でしょう?」
と男女差別としか言いようの無い反応をもらい、俺は眠りについた。