08:学友
一応、高校生編までは何となく書いていきたいと思っています。
教壇には女性教師が立ち、歴史の授業を行っている。
この先生も流石担当しているだけあって歴史が好きなのだろう、豆知識のような授業の本筋とは関係のない話しを度々話しており生徒を飽きさせない。
授業は静かに進み、気が付くと授業も終わりに近づいていた。
休み時間になると翔と友は女生徒に囲まれる、2日経てば意外と人はなれるものなんだなと夏樹は2人を見る。
2人は今では落ち着いて女生徒と話すことができるようになっていた。
といっても女生徒も異性として、興味の対象として2人に話しかけているだけで友人といえる人はいないようだ。
そんなもんだよな…
夏樹は春香からもらったチョコを一口つまむと教室を見渡す。
ほとんどの生徒は男子に興味深々なのだろう、2人のとこへと集まっていない女生徒も聞き耳だけは立てているようだ。
「夏くん、美味しい?」
「あぁ、美味しいよ」
春香の席は夏樹の正面の席のため休み時間も常に彼等は一緒にいるわけだが。
春香はグイグイ来る人では無い様で、夏樹の様子を見て言葉を決めている様子が見て取れる。
そのため積極的には話しかけてはこないが、夏樹はそれがとてもありがたかった。
夏樹は別に会話をするのが嫌いというわけでは無いが、ほとんど初対面の女子と何を話せばいいのかなんて思いつかない。
まあ春香の場合は姉だから気を使わなくてもいいんじゃないかと夏樹は思ってはいるが、いかんせん夏樹はいまだに彼女が姉だという実感はわかずにいる。
いきなりは無理だよなぁ、と心の中でそう呟きながら夏樹は春香を見る。
身長は自身よりも小さく、サラサラとした赤いショートカットの髪の毛が一番目を引く。
まだ、ハル姉というのはあだ名感覚で夏樹は呼んでいるだけで本当の意味で彼女を姉と呼べる日は来るのだろうか、まあ、それは時間が解決するだろう。
夏樹が2日間でわかったことは、この教室のパワーバランスだ。
クラスの中心的人物は池中 小百合と道明 明楽の2人であり。
池中が笑わせ、道明がみんなを引っ張る。
逆にクラスから浮いている生徒も勿論いる、
窓際2列目に座る木幡 零いつも静かに教室の隅で本を読んでおり、今どきの女性では珍しいタイプといえるだろう。
とりあえず木幡のことは置いておいて、池中と道明の2人のことだ、池中が友か翔に際どい質問をして道明が頭を叩く。
コントのようだが友も翔も嫌悪感は無い様で笑って過ごしている、夏樹の予想では一番最初にあの2人と友人になるのはこの2人じゃないかと考えていた。
「…優しいんだね」
夏樹のことを見ていた春香がそんなことを口にする。
俺が優しいか、どうなんだろうな、優しいね、大人だね、散々言われてきた言葉だ。
夏樹にとって言われ慣れた言葉だが結局他人を思いやってるのかと言われると夏樹は首をかしげる、優しいという言葉のゲシュタルト崩壊かもしれないが、自分が優しいというのは少し違うんじゃないかというのが夏樹の結論だった。
「まあ、どうなんだろうな、ハル姉は2人のところにいかないのか」
「とりあえず、夏くんのことを色々知ってからにする」
そういうと春香はメモ帳を取り出した。
「それでは、夏くんに質問です」
好きな食べ物は、好きな漫画は、などなどの質問を夏樹は嫌な顔一つせずに答えていく。
ちなみに夏樹の好きな食べ物は餃子で、漫画はあまり読まないけどしいて言うなら推理物である。
どうやら春香は妹と母親に夏樹のことを言いたいからここまで張り切っているようで、夏樹もそれを知ると温かい気持ちとなった。
質問もひと段落すんだころ翔と友の2人が夏樹と春香の元へと向かってきているのが夏樹は気が付いた。
「ナっちゃん、疲れたー」
翔はそういうと夏樹の隣の席に座る。
「2人ともお疲れ」
本当に疲れたよと友が言い、友は夏樹の机に両手をつくと垂れかかる。
何かに気が付いたように、友は夏樹と春香の顔を見て首をかしげる。
「夏樹はなんでお姉さん以外の女子に囲まれないんだ?」
確かにそうだな、夏樹もあまり気にしていなかったが自分の周りにはあまり人が来ないことは少し気になっていた。
だが、その疑問には春香がすぐに答えた。
「夏くんは入学初日に2人を気遣う発言をしたから、マナーに厳しい人と思われてるんだよ、それに私が近くにいるしね」
小柄の春香が胸を張る。
どうやら春香も他の女子から怖がられているらしく、夏樹に気にしないほうが良いとアドバイスを送った。
それを聞いた翔と友はそっくりな姉弟ってことかと言うと笑う。
「ところでハル姉は2人と普通に会話できるんだな」
「うん、夏くんがいるからね」
そんなほのぼのとした会話を睨みつける女子たち。
「チィッ…ハルちゃんのところに男子が集まってる」
「あぁ、春香は我ら四天王の中でも最強、物理的な邪魔はできないと思ったほうがいいだろう」
「ふ、ならば私が行くとしよう」
「はっ、閣下お願いいたします」
なにやら女生徒たちがワイワイと話し込んでいるのが夏樹は気が付いた、その中で一人こちらに足を進めてくる女生徒がひとり。
「ふ、麗しき男子諸君ハルちゃんと話すのもいいが私とも話そうじゃないか」
目の前にいるのは件の女性、池中小百合だった。
彼女はクセっ気がある長めの髪の毛をサッと払いながら恰好をつけており、見た目は綺麗なためよく似合ったポーズだ。
「小百合、どうかした?」
「どうかした…ではない、ハルちゃんよ、お主ばかり麗しき男子諸君に囲まれおって、いくら夏樹君の姉だとしても我々女子は看過できん」
そう、見た目だけならば…先ほども言ったが彼女はいささか心の内を隠さずに言うらしく友と翔は反応に困っている。
彼女は春香をビシッと効果音が聞こえそうなほど綺麗なフォームで指をさしながら熱弁をふるう、
ちなみに小百合が春香のことを指さしたとき春香がイラッとしたのは誰が見ても明らかだった。
春香は椅子から立ち上がると小百合を細くした目で見つめる。
鋭い刃のような目つきに小百合は冷や汗をかき始め、指を差したポーズのまま固まっている。
「で、今生の言葉はそれだけか小百合」
指をバキバキと鳴らす春香、ニコニコと笑いながら小百合に問いかける。
勿論ニコニコと言っても見るものを恐怖させる笑顔だ、その笑顔は何故か無表情にも見える不思議な表情で、笑顔の元は威嚇だという人が多いことも頷ける迫力である。
「ふ、、暴力は、、、私ダメだと思うんだ」
相変わらず恰好をつけながら小百合は命乞いをしていると、どこからかため息が聞こた。
ため息の方向から1人の女生徒が夏樹たちの元へと近づいていた。
ため息はどうやらこの女生徒が付いたようで表情も明らかに呆れている。
「小百合、何してるのよ」
女生徒の正体は道明明楽だった。
明楽は軽く小百合の頭を叩くと夏樹たちに謝罪する。
「ごめんね、このバカが迷惑しかかけてなくて」
「いや、俺たちは別に迷惑だなんて思ってないよ」
夏樹がそう答えると彼女は気分が少しは楽になったのか表情が柔らかくなる。
「そ、そう、いやぁ私たちも自重はしてるんだけどどうしても…」
「いや、自重なんて別にしなくても…あっ」
今度は明楽の顔が真っ赤へと変貌していった。
うん、言葉の選択肢を間違えた、夏樹は注意していたのだがふとした時にこういう風に言葉の選択を間違えてしまう、良く言って普通に友人に言う言葉のように発してしまうことが多々ある。
思春期真っただ中の女子に言う言葉じゃないとすぐにわかったため内心後悔する。
「い、一応私も女子なわけで…じ、自重しなくても」
「いやいや、私は何を考えてるんだ」と明楽は自問自答しながら真っ赤な顔をブンブンと振っている。
漫画的な表現を実際にやる人がいるとは思わなかった、夏樹は興味深そうに明楽を見つめていた。
「明楽…、なんか面白いからもう少し見てよう」
小百合は友人の醜態をニヤニヤしながら見つめている。
小百合は明楽にとって中々愉快な友人のようだと2人を見ていた夏樹は微笑んだ。
プロットは無いんですが世界観はそれなりに考えてまして、どこかのタイミングで紹介したいです。
道明さんはむっつりです。