07:私には弟がいるようです
一話投稿して裏では一話書くって感じでやってるんですけど、読み直す時間がないから、忘れたころに手直し入れる可能性が大きいです
「春香、秋奈、あなたたちには実は弟がいるの」
「…?」
自分の母親である冬華の突然の告白に春香の頭は真っ白となった、夕ご飯を食べていた手が止まる。
春香の妹の秋奈にいたってはフォークを落としかけるており、どれだけ彼女たちの母親が爆弾発言をしたかがうかがえる。
春香は気を取り直し母を見つめ今の言葉を脳内で復唱する。
私には弟がいる?
確かに苦労はいっぱいかけているが、まさか現実まで直視できなくなるなんて…。
これほどまで疲労するほど母を放ってしまったのかと春香は涙が出そうになる。
「母さん、何かあったの?苦労があるなら…「いやいや、本当のことよ」」
どうやら本当の話しだったようだ、この母、とにかく嘘をつくのが苦手であるため今の反応だけで春香は十分理解できた。
春香は冬華がたびたびどこかに行っていたのは知っていたが、まさか弟に会いに行っていたとは思いもしていなかった。
いつも春香が冬華に尋ねても「うーん、内緒」と答えてくれないため最近は気にも留めていなかった。
うらやましい、春香はすぐに自分の母へ恨みがこもった目線を送る。
私はこんなにも男の子との出会いがなくて困っているというのに、弟を異性と見ることは無いと思うがそれでも羨ましいという気持ちは春香から消えることはない。
「夏樹っていう名前なんだけどね、山本さんって人が代表をしている施設で育ててもらってるの」
そういう冬華は春香から見て寂しそうに見える、春香はまだ子供を持つなんて想像もつかないが母の寂しさは少し理解できる気がした。
だが現実問題、男の子を春香の母、彼女が育てられたかというと不可能だろう。
誘拐などの犯罪行為から守りながら一般家庭で育てる、それがどれだけ茨の道なのかはすでに常識といってもいいほど知れ渡っている。
「母さん、夏樹に会いたい」
そういう春香の言葉に彼女は眉を下げ困った顔をする。
「春香も知ってると思うけど男の子は中学生になるまで隔離して育てられるの、そのあとも外に出るかは本人次第…でもそうね」
そういうと冬華はテーブルに置いてある携帯を手に取り、どこかに電話を始める。
「はい、夏樹の母の…はい」
すると冬華は春香に電話を渡す。
通話がつながっているようで、見たことのない番号がディスプレイに表示されている。
おっかなビックリ春香は携帯を受け取ると耳に当てる。
「はい…春香と申します」
春香の耳に電話先から聞こえてきたのは渋く低い声だった。
彼は山本と名乗った、もし冬華が娘である春香に夏樹の存在を教えたときは電話するように頼んでいたようだ。
春香は弟に会いたいと伝えると山本は申し訳なさそうに話し始めた。
「そうですね、夏樹くんに会いたいのならば正直彼が成人するまで待つのが確実でしょう」
そういわれたとき春香は肩を落とした。
せっかく弟がいるのに会うこともできないのかと、軽く怒りも覚える。
「ですが、そうですね、春香さんが高校に進学する際、政府の研究機関と交友がある場所に入学するのならば、こちらもどうにか便宜は図れると思います」
いうなれば公務員になれということだろう、だが現在の公務員の倍率を見ると春香のこのままの成績では夢のまた夢だと思ってしまった。
成績だけではない、公務員の子は公務員、いつからだろうそんな風習になったのは。
決して一般の人が公務員になれないわけでは無いのだが、もし公務員家庭で生まれた子と同じ成績で公務員試験を突破した子がいるとする、どっちが採用されるかというと当然のように公務員の子が採用される。
公式の回答ではそのような事実はなく、身元調査や厳正な審査な結果が全てであるとしている。
だが、彼は春香の不安を感じ取ったのだろう、優しい声色で言葉をつづけた。
「まずは国立高校に行きやすいように国立中学に入学するのが良いかと思います、大変な道のりかもしれませんが、そうですね、もしよろしければ中学校の資料などをお送りさせていただきますが」
その言葉に春香は勢いのままに返事をした、それからの彼女は友人と遊ぶのも我慢し勉強に打ち込んだ。
すでに勉強を頑張っていた人たちより春香は一歩も二歩も遅れており、それこそ血のにじむような努力をしなければならなかったが苦にはならなかった。
家族に会うため、その一心で体調管理のため規則正しい生活を心掛け、友人が引くほどの勉強量を積み込んだ。
国立トーキョウ中学校 合格
このあとめちゃくちゃ母と妹と焼き肉した。
そして彼女は…弟と出会った。
長くいい匂いがする赤い髪の毛に、良いとは言えない目つき。
元気に話しかけようとしたが、緊張で喉が渇く、声が出ない。
春香は自分でも後悔しか生まれないファーストコンタクトとなった。