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03:中学校入学




「ナっちゃん、明日から中学生だねぇ」


どこかで聞いた覚えがする言葉だが気のせいだろう。


夏樹はぽわぽわ系男子の目の前に冷蔵庫から持ってきたオレンジジュースを置くと椅子に腰を掛ける。


その隣では友が友達の作り方なる本を読んでいた。


「そうだな、明日からだよな、なぁ友くんや俺の目の錯覚なのだろうか」


夏樹はテーブルに肩ひじをつきながら目の前の少年をジッと見つめる。


「いや、夏樹よ錯覚じゃないぞ僕にもそう見える」


そうか、なぜこのぽわぽわ君は既に制服を着ているのだろうか、何度見ても普通に制服を着ている。


これは気にしたら負けという奴なのだろうか、


ヤツはオレンジジュースをごくごくと飲んでいるが。


夏樹はいくら考えても答えが出なかった。


「翔…なんで制服なんだ?」


すると翔はぽかんとした顔をした。


「ナっちゃんってばいやだなぁ明日から中学校だよ」


おう、だからなんでだよ、翔は空になったグラスを見つめているが、もう一度言おうなんでだよ。


心の中でツッコミが途切れない夏樹だが、当たり前だろうという顔をした翔は話を続けない。


「翔、夏樹は明日からなのに何で今から制服を着ているのか聞いてるんだ」


すると翔はきょとんと表情を変える、本当に意味が分からないという顔をしており夏樹と友はさらに困惑する。


「だって少し着て生活しないと大きさ確かめられないじゃん」


「じゃんじゃん」と謎の語尾を続ける翔だが理由は至極まともな理由だった。


どうやらぽわぽわは考えられるぽわぽわだったようだ。


「あー明日から中学校だぁ、ねぇねぇ女子ってさぁ本当に存在するのかな」


「いやいや、実際は世の中のほとんどは女性だぜ、この家に来る最中も車から女性を見ただろ」


「うーん保健の授業とかでは知っているけど話したことも山本さんの奥さんとだけだったしね」


そういわれるとそうだ夏樹は思い出にある限り女性と会話したのは母親と山本の妻だけなことに気が付く、なんだかんだあの施設はテレビも検閲され過激なお笑いとかは見れなくなっていたのだ。


さすがに漫画本は普通に読めたがそれも一応過激な表現がないかをチェックされていたらしく流石に俗にいう青年誌に該当する本は置かれていなかった。


「夏樹、僕は正直言って少し怖い、女性は獣ってよく言うだろ、暴力的ともいわれるしニュースでも男性を襲われたというのはよくやっていたし」


以外にも友が一番不安がっていたようで夏樹に不安をぽつりと漏らす、彼は真面目だから考えすぎてしまうのだろう。


夏樹はこれも仕方がないことかと思い2人に笑いかける。


「友も翔も深く考えるなって、いざとなれば山本さんに連絡できるんだし両隣と向かいに住んでいる人たちだって政府関係者だぜ、用心に越したことはないけど相手も同じ人だ悪い人もいればいい人もいる」


そういうことも知りたくて外に出ることにしたんだろ友は、夏樹がそう言うと少し気分も楽になったのだろう、友も調子が戻ってきたようで「あぁ」と顔を上げて返事をした。


「明日は朝の8時に先輩になる人が迎えに来てくれるらしいからゆっくり待とうぜ」


「そうだな、気になることは先輩に色々聞いてみることにしよう」


「そうそう、僕は女子と会うのが楽しみだよ」


山本さんが言った通り俺たちの中で一番しっかりしてるのはショウかもしれないな。


翔は新しい友人たちとの出会いにわくわくし、友は少し不安ながらも色々な新生活に夢見て、俺は…まぁなるようになるだろと適当に考えながら夜は更けていった。


陽ざしが窓から入り、朝食を食べ終わった夏樹の顔に直撃する。


夏樹が食器を片付けていると


「翔、朝ご飯をさっさと食べろ、いつまで寝てる」


友の怒鳴り声が朝から鳴り響く。


「あ、あとちょっと~」


翔は布団に丸まりなかなか出てこないため友が布団に掴みかかる、布団を引きはがし翔を布団から追い出している。


いつものことと言えど元気だな2人とも、夏樹は歯を磨きながらその様子を見ていた。


ちなみに今日の朝飯は目玉焼きとベーコン、みそ汁、サラダ、白米、まさに朝ご飯らしい朝ご飯だ、今日の朝飯当番は夏樹だったため彼の朝ご飯といえばという定番をそのまま出した。


夏樹が料理を出来るのかという疑問を抱いた方は少なからずいると思う、説明すると男子の嗜みということで料理は施設の授業に含まれていた、そのため翔は少し怪しいが夏樹と友は中々上手に作ることができる。


騒がしい朝の光景のなかピンポーンとインターホンの音が響く。


「おーい、翔の準備はできたか」


「夏樹、ちょっと待ってくれ今歯を磨かせてる、こいつの髪の毛を整えてるから対応してくれ」


夏樹の耳には友の悲痛な叫びが聞こえてくる。


あいつも楽しそうだからまあいいか。


夏樹はインターホンで相手の顔を確認すると、連絡があった迎えの男子が立っている。


雰囲気は少し友に似ているが、友よりも落ち着きがありそうな雰囲気があり頼りがいがありそうな人だと、夏樹は第一印象だが彼に好感を覚えた。


「もしもし、緑山です…はい、おはようございます、今開けます少々お待ちを」


そう答えると俺は玄関のドアを開く。


「はじめまして、鶴岡 (つるおかかい)です」


「これは、申し遅れました、私は緑山夏樹と申します、朝からご迷惑をお掛けいたします」


そういって、夏樹が丁寧に頭を下げると鶴岡は驚いたようだ。


「夏樹君、そんなに他人行儀にならなくても、僕も山本さんにはお世話になっていてこっちから学校までの案内を申し出たんだよ、ぜひ可愛い後輩たちも見たかったしね」


少し夏樹と鶴岡は会話をしていると、バタバタと急いでいる音とともにようやく友が翔の手を引っ張り現れる。


「すみません、犬童 友です遅れました、ほらお前も謝れ」


「ごめんなさい」


翔も続いて頭を下げる、鶴岡は困ったように笑う「気にしないでよ」そう言って彼は夏樹たちの身だしなみを確認し始めた。


「よし、男子生徒らしく身だしなみはバッチリだね、寝ぐせもないしハンカチ、チリ紙も胸ポケットに入ってる、オッケーじゃあ行こうか」


そういうと夏樹たち4人はこれから学校に向かって歩き出した。


「えーっと、あっちのお店の野菜は少し高くて、こっちのは安い、でも魚を買うのなら…」


次々と鶴岡は道すがらに生活に必要な道具をそろえる場所などの説明をしている。


夏樹たちはこれから政府から生活費としてかなりの金額をもらっていく訳なのだが、それに胡坐をかいて節約を怠ってはダメだと山本もみんなに何度も伝えていた。


実際、夏樹たち補助金をもらい始めたのは今月からだが、決して少なくない金額が口座に入っており夏樹は開いた口がふさがらなかった、ちなみに銀行やATMに行くのが怖い場合電話一本で政府の人がお金を届けてくれるシステムも存在する。


「ちなみに先輩は女性って怖くないんですか」


色々考えていると友が少し踏み込んだ質問をした。


鶴岡はうーんと唸りながら悩んでいるようだ。


「怖くないか、怖いかで言われたら僕自身女性は少し怖いかな」


そういう彼の目は遠くを見ていた。


聞いてはいけないことだっただろうか、友が話を変えようとしたがそのまま鶴岡は言葉をつづけた。


「君たちもこれから女性とは絶対関わらないといけないけど、そうだな中途半端な言葉は言わないほうがいいよ、あと教室に忘れ物はしないこと」


あぁ、鶴岡先輩に起こった悲劇が何となく予想できる、夏樹は苦笑いをするが友と翔は理解ができていないようだ。


「そうだね、少し抽象的だったかな、好きですと言われたら友達からと答えたり考えさせてなんて言ったら…毎日学校で近くをうろうろされたよ」


そういう鶴岡は胃が痛そうにお腹をさすっている。


「忘れ物なんてすぐなくなっちゃうし、そうだね靴はなくならなかったけどポケットから落ちたハンカチを拾おうと後ろを振り向いた時にはすでにハンカチはなくなっていたよ」


なにそれ手品?


「他にはね…「あぁ、昼ご飯を忘れちゃった」…おや」


鶴岡の言葉に声を重ねたのはなんと翔だった、空気を読んだのか、翔はわざとらしくオロオロしている。


鶴岡はそんな省を見て微笑むと話しは打ち切ったようだ。


流石できるぽわぽわはちがうぜ、夏樹は拍手を送りたい気持ちでいっぱいだった。


「大丈夫だよ、昼ご飯は食堂で食べれるし、最初のうちは僕も一緒に食堂に行くよ、初めてであそこは怖いだろうしね」




鶴岡君は犠牲になったのだ、女生徒の怖さを知らせるための犠牲にな…

ごめんな鶴岡君、これからも犠牲になってくれ

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