少女の片腕
ユトピア国より約32キロ離れた東の草一本生えていない荒れ地。
昔はもっと人がたくさんいて、この荒れ地にもとても栄えた大きな街がかった。
だが、鉄の雲の事故が起きてからこの街にも残骸が降ってきた。
そのせいで街は沈黙してしまった。街の人々は仕方なくその当時、事故のあとすぐに建国したユトピア国へ移住した。
多くの鉄の残骸が落ちていた。 もう殆ど原形をとどめていない鉄の雲第一層だ。
雲の上から降ってきたのだ人も物もひとたまりもない。
多くの人が捜査にあたっていた。 連中は自警団の人達だった。
自警団の一人があるものを発見した。
身体から切り離されている人の片腕だった。
その片腕は色白で細く女の子の腕のようだった。
自警団の男はその手になにか握られているのに気づき方位磁石のようなものを回収した。
その男は現場指揮官に報告するため走った。
そして、現場指揮官の居るテントに入っていった。
「指揮官 このような物が見つかりました」
男は現場指揮官に方位磁石のようなものを手渡した。
現場指揮官は方位磁石のようなものをしばらく眺めた。
裏に“上を眺めよ”と書かれていた。
「おい。 お前はこれをなんだと思うか?」
「おそらく、方位磁石かと」
「方位磁石…」
現場指揮官は自分の方位磁石を取り出し発見された方位磁石のようなものをと比べた。
確かに形はとてもそっくりだった。
だが、発見された物は一向に北を指すことはなかった。
「もし、これが方位磁石なら狂っている。 だが、方位磁石でなくなにか別の物を指しているとしたら?」
現場指揮官は発見された物の針を勢いよく回し始め、針が止まるのを待った。
それを、数回繰り返すと、その物は必ず同じ方角を指した。
「これは、方位磁石なんかではない。 おそらく、鉄の雲の在処を指している。 言わば、道しるべだ。 これのあった場所は?」
「少女のものと思わしき片腕に強く握られておりました」
「他にその少女の体がないか徹底的に探せ!」
「ハッ!」
男は敬礼をしてテントを後にした。
その後、捜査は日没まで続いたがなにも見つかることはなかった。
自警団はやむを得ず撤収することになった。
ー次の日ー
ユトピアではこんな報道がされた。
「昨日未明、ユトピアより東に三十キロほど離れた荒れ地に鉄の雲と思わしき残骸が発見されたとの報告があったそうです」
と…。
牢獄のような家を飛び出し自転車にまだがって猛スピードで東に向かうのは好奇心旺盛で学校大嫌い、ゼイレも嫌いでクイシャなんて糞くらえ、そして空はむちゃくちゃ好き! と、そう思っているポルタだ。
雲だ! 鉄の雲!! やっぱりまだ飛んでるんだ!!!
しばらく自転車を漕いでいたら落下地点に到着した。
見渡す限り鉄の残骸ばかりで以前までここに残っていた遺跡みたくなっていた街跡や面影も残骸で壊されていた。
すこし眺めていると大きな鉄の板が少し動いたのに気がついた。
ポルタは警戒しながら少しずつ近づいてゆく。
だんだんと動きが小さくなっていき、最終的には動かなくなってしまった。
「助…けて…」
と、小さく細い声がしたので、ポルタは思いっきり力を入れてその鉄の板をどかした。
すると、そこには血塗れの見慣れない防護服を着た片腕の少女が横たわっていた。
「おい!! しっかりしろ!!!」
声をかけても帰ってくる気配がない。
その少女とは…