墜ちた
第五層。長とエンジニアの人達がなにやら作業をしている。どうやら貯水槽の修理をしているようだ。
水槽の一部が錆び付き穴があき、そこから水漏れを起こしていて、下の層へ被害を及ぼしているのだ。
水槽の中から一人の作業員が上がってきた。
「どうじゃ?修復できそうか?」
「ダメだ。思った以上に穴が大きくて、塞ぐにはもっと大きな鉄材がねぇと無理そうだ。とにかく、応急処置はしといたが、そう永くはもたねぇぜ」
「そうか、どうしたもんかのう」
「どうしたもんかのうって言ったって、探すしかねぇだろ。さっさとしねぇと、いつ決壊するか分からねぇからな」
第一層。立ち入り禁止エリアに一人の女の子が地上の写真を撮っている。
第三層機関部。水槽の水がここまで浸水していた。
第二層。昇降機で降りてきた長とエンジニア達が鉄材を探しに来ていた。
すると、少し雲が揺れた。
「うおっ!またじゃ、今日はよく揺れるの」
「そうだな。墜ちちまったりしなきゃいいが」
「そう簡単には墜ちんじゃろう。それはそうと、鉄材は見つかったか?」
「見つかりません」
「そうか、そっちはどうじゃ!」
「ダメだ。見つからねぇや」
「仕方ない。第一層に移動しよう」
そうして、第一層に長やエンジニア達が移動しようとしたその時だった。
雲が大きく揺れた。移動していたエンジニア達や長は耐えきれず倒れてしまった。そして、一人のエンジニアが目の前の光景を見てこう言う。
「そんな、第一層が墜ちた…」
数日後、第一層落下事故の原因は調査団によると、貯水槽から漏れ出した水が機関部に浸水して一部の機械を停止してしまい、第一層が反重力エリアから外れた事で起こった事故だった。その被害は、重軽傷者235人 死亡者12人 行方不明者1人。
ただ一人、エリナの行方だけが分かっていない。