長の孫娘
女の子は、立ち上がり錆びた鉄の梯子を登り通気口の中を通り抜け錆びた鉄製の崩れかけた橋を渡った。その後、真っ暗な通路ライトを片手に通路を進み大きな鉄扉を開け“キープアウト”とかかれたテープをくぐり抜けさらに細い通路を進む。そして階段をしばらく上に登り、鉄の雲の第四層へ出た。
鉄の雲は全部で6つのエリアに分かれている。一番下の第一層と第二層は貯蔵庫だ。第一層は崩れているため気温がとても低く、倉庫にしまわれていたものが腐り変化し人体に有害な胞子が充満している。防護服無しでは人は立ち入れない。第三層は機関部だ。反重力石や平行維持装置などがある。第四層は居住エリア。第五層が貯水槽。第六層は屋根が無く直接雨と日が当たる構造で特殊な空調があるため上空ではあるが地上のように暖かい。そこでは家畜の飼育や植物の栽培が行われている。
女の子は自室に戻った。防護服を脱ぎ壁のフックに掛けた後、そのままベッドに横たわった。女の子の部屋は第一層の立ち入り禁止エリアから撮影された地上の写真が沢山飾られている。
ドアをノックする音がした。そして女の子の部屋に入ってきたのはかなり年老いた男だった。この鉄の雲の長だ。
「エリナ。また、第一層に行ったな。監視カメラに映っとったぞ。あれほど立ち入り禁止エリアにはもう行くなと言ったのに」
「いいじゃない別に」
「駄目じゃ」
「なんで!どうして行っちゃいけないの!」
「あそこは劣化が進んどる。落ちたらどうするんじゃ」
「大丈夫よ!御守りもあるし」
御守りとは、鉄の雲から落ちたとき一度だけ助けてくれるものだ。これは、二世紀前の鉄の雲の研究チームが作った装置だ。
「ともかく、もう立ち入り禁止エリアには行くなんじゃないぞ」
と、言って長は部屋を出て行った。部屋を出た長に若い男が近寄った。
「長老。やっぱり、さっさと第一層は封鎖したほうがいいって。このままだと、いつかエリナが落ちちまうよ」
「だが、色々な物資が不足している。今、わしらの勝手な理由で第一層を封鎖する訳にはゆかん」
「そんなこと言ったって…」
「ならぬ。ルーファ、勝手な行動をするなんじゃないぞ」
「あぁ、分かったよ」
ルーファはその場を立ち去った。長は防護服を着て昇降機に乗り第五層へと向かった。




