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稲武録  作者: サブ麻酔
3/3

三日目

稲武、最終日の様子です。

 十一月四日


 いよいよ最終日。その分少し早起きした。昨日より寝るのが遅かったにもかかわらず、なんだか昨夜よりぐっすり眠れたような気分だった。バタバタと外に出て朝の集い、戻って朝食。


 その後は本日のメインイベント、民芸教室があった。民芸教室とは、ざっくり言えば手作りの工作講座だ。事前に何を作るかは決められている。私は動物の形をした平たい杉を焼いて飾りを作る、焼き杉クラフトに申し込んでいた。

 友達はみんな、紙すきとかまゆ細工とか、別の講座に行ってしまった。仲の良い人がいないかと探していると、黒を見つけた。

 黒の斜め後ろに座った。クラスごとに席が分かれていたので、隣には行かない。

 動物の種類は5つあった。私は好きな小説の題名にちなんで魚の形を取ってきた。

 作業は簡単そうで難しい。まずヤスリでささくれ立った木肌を削り、その後焼く。そしてワックスを塗って磨いたり、金具を取り付けて完成だ。

 作業中はずっと黒と話していた。内容は主に好きな作家や最近読んだ本、それからクラスメートのことなど。好きな小説家に対して熱弁をふるっていたら、一部が削れ過ぎてなんだか変な感じになってしまった。


 クラフトが出来上がった。しかしこれは何なのだろう? ストラップやキーホルダーというには大きすぎるが、丸カンという金具がついている以上これはぶら下げる系統のアクセサリーに違いない。使い道は未だ不明だが、魚はとても愛嬌のある顔をしていたので愛着がわいた。

 途中、黒が持っていた杉を落とした。彼は「俺が落としたんじゃない、こいつが万有引力に引き寄せられたんだ」と杉を指差して言った。とどのつまり黒が落としたのである。

 黒の言い分が面白かったので、私は彼にあやかり、自分の作品に「万有引りょ君」と名前をつけた。裏側にでかでかと命名して書いてやった。


 それが終わると掃除だった。私の班はキャンプ場のトイレを清掃する予定だったのだが、あまりに綺麗なのですることもなく引き上げてきた。


 昼食、そして終わりの集い。三日間ももうすぐ幕が降りる。少しだけセンチメンタルになりながらバスに乗った。

 バスの中で短編集ノートに小説を書いていると、上からお茶が流れて滝のように落ちてきた。どうやら上に荷物を置いた誰かの水筒が、きちんとしまっていなかったらしい。ノートはお茶漬けになってしまったが、すぐ拭いたのであらかた無事だった。


 予定より早く、中学校着。解散。

 門前には色んな人のお母さんが来ていた。それに向かって手を振りながら生徒が歩いていく。

 みんなくたびれた顔をしていたが、それでもどこか愉快そうに笑っていた。それを見て私も、ハプニングや失敗もたくさんあったが、なんだかんだまあまあ良い三日間だったのではないか、と思った。


 帰り道、手にぶら下げていた万有引りょ君をうっかり落として踏んだ。都会のアスファルトで傷ついた魚の裏側には、稲武で刻んだ間抜けな魚の名前と今日の日付、そしてバスの中で書き足した言葉がシャーペン書きでうっすら、「稲武サイコーだったぜい!」と記してあった。

ありがとうございました。稲武録、これにて終了でございます。こんな自己満足の日記みたいなやつを読み続けてくれた皆様、本当に感謝です!


初めての完結小説が日記ってどうなの……という感じですが、やはりやり切るって良いことだなぁと思えました。

それでは。また、次作や他作品もよろしくお願いします!

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