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旧作1-2  作者: 智枝 理子
終章
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終章

 ラングリオン王都、サウスストリート沿い住む占い師。

 ラングリオンの王族をはじめ、国外からも熱心に通う人間が居るほど人気のその店は、平日の午前しか開店しない。

 しかし、その占い師が占いたいと願う者には、裏口の扉が開かれているという。

「いらっしゃい、リリーシア」

 裏口の扉を開いたのは、黒髪と黒い瞳の少女。

「待っていたよ」

 浮かない顔で、少女は占い師の前に座る。

「ねぇ、ポラリス。私がエイダに教えた愛って、正しかったのかな」

「本当に。悩める少女だね、お前は」

「精霊同士が愛し合うことはできないの?」

「どう思うんだい。お前は、精霊と人間の愛を知り、精霊同士の愛を知り、果ては悪魔と人間の愛も知ったじゃないか」

「どれも、幸せな結末に思えない。レイリスは家族で暮らすことができなかったし、エイダとパスカルは一緒になれば魂が消滅してしまうんだ。それに、リリスは…」

「それが不幸だと言うのかい」

「私は、エルとずっと一緒に居たいし、エルに触れたいし、抱きしめたい。エルの子供を産んで、家族として暮らしたい。それを全て、叶えたいと思う」

「それは人間同士にしかできないだろうね」

「精霊には、不可能なのかな」

「人間の一生は短い。精霊が子供を産んでも、子供が成長するのなんてあっという間さ。一緒に居る期間なんてわずかだ。精霊同士が一緒に居たって、悠久の時間を一緒に過ごすなんて飽きてしまう。相手を知り尽くしたら興味なんてわかないものさ」

「そうかな」

「そうだ、と言ったらどうする」

「えっと…。違うと思う。私、エルとどれだけ長く一緒に居ても飽きないよ」

「ふふふ。面白いね。ねぇ、リリーシア。人間は、どうして愛し合うのだろうね?」

「え?」

 リリーシアは、難しい顔で黙る。

 そして、しばらくの沈黙の後、口を開く。

「わからない」

「精霊にも、神にも存在しなかったもの。それを人間が作り出し、それが、世界を変えたんだ」

「人間が、神を超えると言うの」

「超えたじゃないか。お前は死ぬはずだったエルロックの宿命を救った」

「だって、エルも私も、一度死んだんだ」

「そう。一度死んだ人間は運命から解放される。エルロックを縛るものも、お前を縛るものも何一つなくなった」

「それは、良い事なの?」

「未来が無限になったと言うことさ」

「きっと、良い事だよね」

「どうかな」

「…からかってるの?」

「お前の運命はね。彷徨だ。永遠に迷い続ける運命。そしてその迷宮に誰も彼も誘う」

「え?」

「エルロックはお前の運命に巻き込まれ、道を踏み外したんだよ。お前に関わった者はみんなそうだ」

「…あの」

「でも、誰も彼もが、幸福そうに笑っている。さて。運命に縛られるのと、運命から解放されること。どちらが人間にとって幸が多かったのかな?」

「エイダも、道を踏み外したの…?」

「運命は人間が生まれる瞬間に与えられるんだよ。精霊には無関係だ。精霊が人間の運命に巻き込まれることもないよ」

「私…」

「お前の迷子は、しばらく治らなそうだね」

「エイダは幸せだったかな」

「さぁ。最後、どんな顔をしていたんだい?」

 リリーシアは目を閉じる。

 そして、目を開いて、微笑む。

「ありがとう。ポラリス」

「礼を言うのは私だよ。ありがとう、セッタルシュ」

「造語?七つの…。弧?」

 占い師は笑う。

「エイダも言っていただろう。お前は虹の御使いだって」

「虹…」

「おめでとう、リリーシア。エルロックと幸せにおなり」

「うん。ありがとう」

 これで、すべて終わり。



読んで頂きありがとうございました。

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