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キルナの街。
まだ、門番の人がいる。
マントのフードを深くかぶる。
「ようこそ、キルナ村へ」
「あら、ご親切にどうも」
ポリーと一緒に、そのまま中へ入る。
あれ?身分証のチェックはしないんだ。
良かった。
「どうしたの?ここでも何かやらかしたわけ?」
「えっ。そんなことないよ」
「…本当に?」
「うん。だって、ここに来たのって、会って二日目だよ」
「二日目?」
「出発した日にグラシアルの王都で会って、次の日にアユノトに来て、それからキルナに来たんだ」
「リリー。まさか、何も知らない相手と旅してたの?」
「えっと…」
「良く、騙されなかったわね」
「え?」
「悪い奴だったらどうしてたのよ!ただでさえ、リリーは騙されやすいんだから」
「大丈夫だよ」
「…どうして」
「だって。イリスが一緒だったから」
「あぁ…、そうね。イリスがリリーに危ない橋を渡らせるようなこと、しないわね」
「それに、エルにはエイダがついていたから」
『え?私ですか?』
「うん。エイダは、初めて会った時からずっと、私に優しかったよ。だって、私がエルを見つけたのも、エイダの光を見たからだし、エルが私に興味を持ったのも、私がエイダの声を聞けたからでしょう?」
『…えぇ、そうだったわね』
「なんだ。ちゃんと出会いを助けた精霊が居たのね。差し詰め、虹の御使いってところかしら?」
『私は炎の精霊よ』
「例えの話しよ。虹の精霊なんて聞いたことがないもの」
虹の精霊か。
月の精霊がいるぐらいだから、どこかに居るのかもしれないな。
だって。精霊とは自然で、その自然が存在するなら、その精霊も存在するはずだから。




