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旧作1-2  作者: 智枝 理子
Ⅳ.夜を終わらせる炎
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 バンクスにたどり着いたのは、日暮れ。

 そういえば、雨だったな。

 エルと歩いた道を思い出しながら、歩く。

『ここでしたね』

「うん」

 エルと泊まった場所。

 初めて一緒にお酒を飲んだのもここだったっけ。

「いらっしゃいませ。…あら、まぁ」

 前に会ったことがある人だ。

「あの、もしかして、エル…」

「えぇ。昨日いらっしゃって、今朝ご出発されましたよ」

「やった!」

 思わず、ポリーと抱き合う。

「追いついた、追いついたよ、ポリー。あと一日!」

「そんなにはしゃがないでよ、リリー。ここから一日詰めるのは不可能って、わかってるでしょ?」

 あぁ。そうだった。

 ここからキルナにどんなに早く着いたとしても。

 キルナからアユノトへは丸一日つぶす距離なのだ。キルナを出発するのは朝一以外考えられない。

「…うん」

「ごめん。そんなに落ち込まないでよ…」

 あぁ。これ以上、縮めることはできないんだ。

 アユノトから馬車で移動だって無理。

 エル、グラシアルで待っててくれないかな。

「彼は、あなたが追いかけているなんて知らないみたいですよ」

「うん…」

「大丈夫よ。アユノトにはカミーユが居るんだし。足止めしてくれてるかもしれないわ」

「そうなの?」

「シャルロから聞いてるんじゃなかったの?」

「えっと…。アリシアとカミーユさんが先に行ったって言うのは聞いたけど…」

「やだ。あの二人もあなたたちの知り合いなの?」

「え?アリシア、ここに来たの?」

「えぇ。銀髪の女性と、金髪の男性よね?お酒をたくさん飲んでくれたから覚えているわ。アリシアさんが酔いつぶれちゃって、彼が介抱してたの」

「アリシアが酔いつぶれたの?…それって意外ね」

 エルに飲み比べで勝ったのだから、相当強いんだろうな。

 あれ?でも、王都でみんなで飲んだ時は、一番酔っぱらっていた気がする…?

「彼、途中からグレープエードを飲んでいたから」

「え?」

「アリシア、気づかなかったの?」

「えぇ。私が入れ替えてお渡ししていましたから」

 それって…。

 まさか、エルと飲み比べした時も?

 でも、シャルロさんが立ち会ってるはずだから…。

 違う。シャルロさんとカミーユさんで、エルを負かせたんだ。

 エル、きっと気づいてないんだろうな…。

「ねぇ、リリー。私たちもお酒でも飲む?」

「だめ。私、飲酒禁止って言われてるの」

「エルから?」

「うん」

「何かしたの?」

「…覚えてないの」

「そういえば、リリー、アリシアのお酒、全部飲んだんだっけ?」

「えっ?」

 何?その話し。

「だって、アリシアがこっそり集めてたロマーノ。六本全部開けたんでしょ?」

「えっ」

「…覚えてないの?」

「えっと…」

 そんなにたくさん飲んだ覚えがないんだけど…。

「エルとどれぐらい飲んだの?」

「そんなに飲んでないと思う」

「何飲んだの?」

「えっと…。カルヴァドスとシュバリエと、チョコレートのと…」

 そうだ。その後、エルが作ってくれたんだ。

「内緒と、桜と、甘いの…?」

 最後の、なんだったんだろう?

「リリー、全然覚えてないでしょ」

「そんなことないよ」

「わかったわ。お酒はやめておきましょうか」

 全然覚えてないってことはないはず。

 だって、エルに眼鏡かけさせたのも覚えてる。

 どうやって帰ったのかは覚えてないけれど…。



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