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「リリー!お願い、助けて!」
「えぇ?」
「マリアンヌ様!」
お店に入って来たマリーが私の後ろに隠れる。
それを追いかけて、メイドさんが三人?
「いけません!私どももお供いたします!」
「嫌よ、侍女なんて必要ないわ。自分のことぐらい自分でできるもの」
「御自分の御身分を御理解下さい!」
「うるさいわね、私の命令が聞けないって言うの?」
「身の安全が第一でございます!」
「ルイス、なんとかして頂戴」
「しょうがないな。説得するから、奥でコーヒーでも飲んでてよ。キャロル、よろしくね」
「わかったわ。マリー、リリー、こっちに来て」
「お嬢様!」
キャロルについて奥の部屋に入ると、一人が追いかけて来ようとする。
「不法侵入する気?ここがどこだかわかってるよね。僕らの許可なく家に入るなんて、エルが許さないよ」
「くっ」
「穏便に、話し合いで解決しよう」
ルイスが扉を閉める。
「…大丈夫なのかな」
「こっそり出て来たのに、途中で見つかっちゃったのよ」
マリーってすごいお嬢様だから…。
台所に行くと、キャロルはルイスが用意していたマントを出す。
「マリー、そのマント脱いでくれる?代わりに、これを着てね」
「なぁに?これ」
「砂漠用のマント。リリーも着て」
「え?…うん」
マントを装着する間に、キャロルは椅子を持ってくると、台所の窓を開いて、外を見る。
「マリー、リリー、ここから出て」
「…わかった」
そっか。ルイスは時間稼ぎしてくれるんだ。
リュヌリアンを先に窓の外に投げ、窓から外に出る。
それから、続けて出て来たマリーを抱き上げる。
「ありがとう、リリー」
「しーっ。静かにね」
「サンドリヨンは?」
「ここよ」
悲鳴を上げそうになったマリーの口を手で塞ぐ。
「もう、本当に神出鬼没なんだから」
「丁度良かったわ。マント、渡しておくね」
「ありがとう」
エイダがマントを羽織る。
地面に落ちていたリュヌリアンを拾って持つ。
…これ、背負ってたら目立っちゃうよね。全身を覆うようにマントを着て、その中に隠し持つ。
「みんな、気を付けてね。いってらっしゃい」
「うん。ありがとう、キャロル。ルイスによろしくね」
「うん」
「いってきます」
なんだかばたばたしちゃったな。
「少し、遠回りして行きましょう。東からだと見つかる可能性があるから、南大門から出るわよ」




